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───これまでの暴走族関連のコトの顛末をかいつまんで聞いたところによると。
はじまりはあの【食堂イベント】。
王道があのとき発した何らかの台詞によって王道が暴走族の関係者だと知った会長は、すぐさま情報屋を担うユウトさんに連絡。
そして、王道が何者かを探るのとほぼ同時期にはじまった《白蛇》による《黎》への奇襲。
そこからユウトさんが《白蛇》の総長にアポイントメントを取り、上手いこと取引して三人で交戦の日取りを決め、そしてあの日の召集に至ったと。
『んで、オウドウくん来たあたりからやっぱ学園荒れてんでしょ? そしてリオもやっぱり厄介ごとに巻き込まれてんだろ?』
「さすがに先月よりはまあ……比較的学園も落ち着いてきてるし、平気だって」
『いーや、油断ならないね。何せリオは副会長だからな』
「それがなに」
『学園の副会長とは、抱きたいランキング的な投票で一位を取った生徒が就くと相場は決まっているらしい』
「その話は俺の地雷なのですが」
『注目が集まれば集まるほど向けられる感情は様々だ。まあつまり、お兄ちゃんは心配なわけですよ』
数秒ほど、間を要して。
『───誰かに泣かされたり、してないよな』
ふと、苦笑いが漏れた。
俺、そんなにめそめそ泣くような男だと思われているのだろうか。このひとの中の俺は一体いくつで時を止めているのだろう。
心配性なのは相変わらずだと、肩を竦めて、けれどストレートな気遣いに口許が緩むのも仕方なくて。
「……してないよ」
『なにか辛いことや、しんどいことは?』
「大丈夫」
『誰かに迷惑を被られたりとか、誰かのせいで疲れが溜まってたりは?』
「、ない」
『…ふうん? その反応はありそうだね。誰ソイツ。大人しくお兄ちゃんにお喋りしてみよっか』
「黙秘」
『ミッフィーときたか……やっべ、お口ばってんしてるリオ超可愛い』
「いつまでガキ扱いしてんだよ」
『ガキ扱いじゃないよー弟扱いだよー』
だから血縁も何もない余所ん家の子供だろ、という訂正を聞き入れられたことはない。ティーカップを傾け、紅茶と一緒にその突っ込みも飲み込んだ。
ちなみに茶葉は本場から取り寄せたロイヤルブレンドです。疲労回復。
『あ、それと。オレから忠告だけど』
「?」
『《ナイトメア》と関わるのは極力やめておいて』
「っ、け、ほ……っ」
『紅茶で噎せてるリオかーわーいーいー』
「、なん、で、知ってるの」
『オレにはなんでもお見通しなのです』
ユウトさんの恐ろしいとこは、これだ。
まじで、なんでも知ってる。
頭がいいとか知識が豊富というより(それもありはするけど)、情報収集能力が凄まじいのだ。
人脈。そして人望。
伝手が多い。交友関係が計り知れない。コミュ力も高く、人に好かれやすい。
多くの人がユウトさんに情報を伝え、ユウトさんの言葉選びひとつで多くの人間がその情報を信じる。
話術に長けた、天性の人たらし。
人ひとりを英雄に仕立て上げることも社会的に殺すこともできる、会長いわく「厄介な人種」。
『最近のリオ周辺がなんだか危なっかしくてお兄ちゃんはハラハラしてます』
俺から言わせればただの擬似ブラコンだが。
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