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間抜けな顔をこれ以上曝してたまるかと、首を左右に振り無慈悲な指から逃れる。
周りの反応も何だか居たたまれない。
この人はただ、俺の副会長としての面の皮を自らの手で引っ剥がすために、俺の余裕を突き崩そうとしてるだけだ。
遊び感覚だか八つ当たりだか知らないが公共の場でこういう接触はやめてくれ。
嫉妬心を抱かれるだけならまだ可愛いものだが、数学じゃない掛け算に走る生徒はほんと手が付けられないから。
「人の顔で遊ぶとはどういったご了見ですか」
「遊んでない。十分可愛がっていたろ」
「……ご自分の発言がどれだけ周囲へ影響を与えるのかもう少し……自覚した上でしょうから私を巻き込むことだけはやめて下さい」
さらに後退しながら助けを求めて周りを見渡す。
すると唯一目が合った生徒が一人。
相手の金髪碧眼………図書委員長のクラン先輩から何故か、ぱちこーんとウィンクが飛んできた。
え、何? 俺も返した方がいい流れ?
などと気を取られていたのも束の間。
「っ、わ」
「志紀本くーん。後輩イジメは関心せんよ」
不意に後ろから回された両腕が身体の前で交差した。側頭部にさらりとした髪の感触。背中はその身体に支えられる。
「じゃれ合いが目的なら我も混ぜてはくれんか。こやつをここに引きずり込んだのはこちらだというのに、お主ばかりが構いよって。ちとズルいぞ」
「勝手に消えたのはお前の方だろう」
「そもそも引きずり込まないで下さい……」
知らぬ間に背後から忍び寄ってきた二葉先輩に捕獲されてしまった。
放置しておいて何を今更。
しかし軽く身を捩ってもなかなか拘束が緩まない。
さてどうしよう。
志紀本先輩の俺に対するスタンスは今に始まったことじゃないが、二葉先輩のことはまだよく分からない。
単にスキンシップ過多なだけかもしれないし、ここで大仰に拒絶するのも不自然というか、自意識過剰な気がする。
同性の腕の中で居心地の悪さは感じるものの、とりあえず放置してその場に収まる。
「……やけに大人しいな、支倉?」
いや、その……別に好きで大人しくしてるわけではないけども……。
真横にいる二葉先輩が、クス、と耳元で笑った。それはそれは楽しそうに。
そのまま片手が髪に絡んで、よしよしと撫でられる。だめだ、そろそろ耐えられなくなってきた。
「おやおやこの反応の差。お主の腕のなかだと安心できぬ証明ではないか? 天下の風紀委員長であろうと、手懐けられないコネコチャンもおるのだな」
「……誰がコネコチャンですか。人を挟んで好き勝手言うのはやめてくれませんかね」
「───扉の前で茶番に興じるのもやめて貰えねえか」
その声を聞き、二葉先輩の笑みが深みを増した気がした。
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