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*  あれやこれやと過ごしているうちに時間は経ち、和室を出たのは17時半。祭りの開始は19時からだ。  見回り業務の打ち合わせのため、急ぎ足で生徒会寮に到着した頃にはとっくに18時を回っていた。  談話室にすでに集っていた役員たち。  主に会長から遅刻だなんだと小言を言われた後、ソファの傍に控えていた守衛さんが口を開く。  ちなみにノアは俺の膝の上でお行儀良く前脚を揃えてちょこんとお座り。くそかわ。 「全員揃ったし、いいかな。メールで伝えたとおり、今夜の見回りの件で俺から提案があるんだけど」  曰く、今回の見回り業務にて、守衛さんが指令塔の役割を担ってくれるらしい。  俺たちは祭りを楽しみつつエリアごとに分担して屋台を回り、何か問題があれば守衛さんへ連絡。さらに守衛さんから全員へ一斉に通達、という単純な連絡網。  学園の警備員も導入の許可が取れたそうなので、これはありがたい。  それでも人数不足は否めないので各自の判断で協力者を募ってもいい、という方向に話が進んでおり、すでに何人かの候補には連絡を入れている。  粗方打ち合わせが終わり、時間までノアのふにふに肉球で遊んでいたところ、視界が陰った。 「……なんですか会長」 「いーや? 別に」  ” にー ” 「ちょっと、乱れるからやめて下さいよ」  ソファに座る俺を見下ろし、上から下まで不躾に眺め回しやがるのは、淡い灰青の浴衣を身に纏った会長の姿。  前髪は片側に流されいつもよりふわりとしており、毛先も緩やかに外に跳ねる。すっきりさらされた片耳、揺れるピアスが目を惹いた。とんでもねえ色男に仕上がっている。  これは親衛隊が放っておかないぞ。見回りどころか風紀を乱す元凶になりかねない。  つーか「別に」とか言いながら勝手に人の髪をいじるな。  無遠慮に触ろうとするバ会長への対抗手段としてノアを召還し、相手の顔の前まで持ち上げて盾代わりとする。  なんだか前より重い……ノア体重増えた?  ” にぃ、にぃ ” 「りっちゃん、ノアも行きたそーだよ!」 「連れてっちゃだめー?」 「さすがに今夜は駄目です」 「「えー」」  ” にゃぅ ”  膠着状態の俺と会長とノアの傍へとハイテンションで歩み寄るのはお揃いの甚平姿の双子だ。布地は白に近い紫、絵柄は朝顔。レディースものだな。  今夜の二人の髪型は左右対称のアシメで、ところどころ毛先に白のメッシュが入っている。  楽しみで堪らないといった双子の様子は実に微笑ましいが、さすがにその提案は却下である。  屋台が所狭しと並ぶ会場に動物を連れ込むわけにもいかないし、人混みに紛れ込んだ場合は一大事だ。ノアが怪我でもしたらどうする。  それに、ノアを生徒会寮で飼うことは許されはしたものの、ここでもし逃がそうものなら生徒会の管理の甘さをここぞとばかりにつつかれかねない。危ない橋は渡るべからず。  

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