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物言いたげな視線を頬に感じながら、そわそわと落ち着かない篠崎くんの頭をぽんぽん撫で、「終わりましたよ」の合図。途端、篠崎くんの友だ……腐レンズの間に激震が走った。
おっと、今のは完全に無意識だった。リードを付け終えるまで大人しく待つ散歩前のワン公への対応だった。
「平凡受けの時代到来かな?」
「そして腐男子受けでもある」
「さらに親衛隊受けというメシウマセット」
「っ、僕でそういう妄想まじやめて!!」
予想を裏切らず、篠崎くんの友人たちは「副会長×三重属性の受け」という妄想を開始したようだ。ごめん篠崎くん、友情への亀裂を招いたかもしれない。
一年生たちが微笑ましいとは言い難い盛り上がりを見せる一方、俺におずおず声を掛けたのはもう一人の属性過多な学級委員長。
止める間もなかった。
「支倉……その……藤戸先生と回らなくて良かったのか……?」
「!」
「いっ、いや、外野の俺が口を出すべきじゃないな……色々、乗り越えるべき問題もあるだろうし……」
「A、あなた一昨日のことを誤解して、」
「そそそれって教師×生徒ですか!?」
「生徒×教師の可能性も捨てるなよ!」
「教師と生徒の禁断の恋でご飯三杯」
「男同士の背徳も背負う二重苦の関係おいしいです」
「えっ」
篠崎くんを槍玉にホ妄想が展開していた一年生は一転、結託してAへと食い付いた。
腐男子の無駄に逞しい妄想力に戸惑うAはひとまず無視して左隣の不穏なオーラをどうにかしなければこれはヤヴァイ。
絶対よろしくない方向に誤解を招いている。
「棋前 くんちょっと、そのあたり詳しく聞きたいんだけど」
「……ま、雪景色 ?」
「と、とにかく! A、とりあえずその誤認は後できっっちり説明しますから」
「……あ、ああ…」
「他の皆さんも、無闇に信じたらいけませんよ。いいですね?」
「「「「はーーい」」」」
頼が参戦してくる前にやや強引に会話を打ち切った。俺がAを呼び捨て(正確には『詠』だが)したことで、視界の端の頼がむむ、と唇を尖らせた気がしたけれどこれもひとまず無視して解散を促す。
腐男子4人とAとCたちは、残された俺と頼をチラチラ振り返りながらも祭りの喧騒へと紛れて行った。
……さてと。まわりに人はいないな。
「……頼」
「はい、リオ様」
「頼んでおいて何ですけども、何も誘い全部をお断りしてまでこちらに協力してくれなくてもよかったんですよ」
「優先順位の最上位の相手を優先しただけのことです」
二人きりになった途端コレである。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス……。
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