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没個性人と非日常 1
まばゆい朝陽が大きな窓から差し込み、象牙色の壁を淡く染め上げる。
チュンチュン、と小鳥の囀りが今にも聞こえてきそうな快晴の下。洗い立ての柔軟剤の香りに包まれ、ふわふわとした微睡みから覚醒した俺、は。
「この俺を組み敷くとは。いい度胸だな、支倉」
現在進行形で、自分が馬乗りになっている人間を見下ろし、寝ぼけ眼を大きく見開いた。
「………………な、」
眼下に広がるふかふかの広いベット。すべらかな手触りの白いシーツ。積み上げられた大きなピロー。墨色の浴衣。白い鎖骨。散らばる金糸。
こちらを見上げる銀灰の、眼。
「なんっ、で、、し、き………っ!」
俺が勢いつけて跳ね起きようとした瞬間、俺の浴衣の衿の隙間へと先輩の人差し指が引っ掛けるように差し込まれた。
ぴたりと硬直する。もしもこの状態で距離を取れば、胸元から肩にかけて浴衣が大きくはだけてしまう。
たったそれだけのモーションで俺を停止させた張本人は、楽しそうに、困ったように、俺を見上げて笑っている。
「まさかお前に組み敷かれる日が来るとは思いもしなかった」
「いやいや、なに、なんですこの、状況は……っ」
え、え…なん、は……?
なんで俺この人の上に乗ってんの? HA??
というかどうしよう。目のやり場がない。
ベッドを背に俺を見上げる先輩が、あまりにも、退廃的な色気を纏っていて。
大きく乱れた着衣から覗く白い胸板とか、いつもより掠れた声とか、まだ眠気が残る瞼、とか……この人ちょっと、寝起きの状態があまりにも性的過ぎるんですけど……男子高校生の発育ェ……。
「間違いのないように言っておくと。俺をベットに引きずり込んだのはお前の方だ」
「な、そんなわけが」
「俺が嘘を吐いていると? 往生際が悪いな」
「ぁ、--っ、く、……っ」
下から伸びてきた悪戯な指先が、俺の鎖骨の中心から耳の裏にかけてを、猫を撫でるように擽る。
ぞくぞくとした感覚に肌が粟立ち、指の動きに釣られて背骨が甘く痺れた。跨いでいた脚にきゅっと力が入る。無意識に先輩の腰をきつく挟んでいた。
腕に力が入らなくなるから切実にやめれ!
「俺個人としては、押し倒されるより押し倒す方が性に合っているんだが」
「デスヨネー」
「寝起きのお前が凄くて……」
何だその含みを持たせた言い方と笑い方。
何があったか気になるけど知りたくない、まじで解放して……!
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