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本来なら保健委員の仕事じゃね? と思いはしたけれど、まあ、ただの留守番だし、手当てもわりと慣れている。
学校自体もお休みだから暇だろうし……うむ、暇潰しに反省文でも書くかな……。
「分かりました。引き受けます」
「あ、一応白衣着てな。オレの貸すから」
「承知しました」
「休日なのに悪ィね、頼んじまって」
「いえ、それはいいんですけど……良かったら、ノアも一緒に連れて行っては貰えませんか」
目を離した隙にタツキと遊んでいたノアを掻っ攫い、会長の検診のついでに動物病院へ連れていって欲しいと願い出る。
今のとこ特に異常はないが、昨日外を走り回ったことで怪我してたり変なものを口にしてたら大変だし。
あとはシャンプーだな。ふわもこになって帰ってこい。
快く了承してくれた養護教諭の大きな掌が、ノアのちいさな頭を包むように撫でる。
テライケメンからの撫でりこにノアもご満悦のようで、目を瞑って気持ち良さそうに鳴いた。なんて正直なことでしょう。
ノアの両脇に手を差し込んで養護教諭へと引き渡す。
しばらくは養護教諭の腕の中に大人しく収まっていたノアだったが、俺の手から離れていることに気付くと、きょとん、と音がつきそうな顔で俺を見上げたのち───。
” なう ”
「「……」」
” なう? なあう ”
「「……」」
” にゃう、なぅうー ”
養護教諭の腕の中で、俺の方へ短い両の前脚を必死に伸ばして暴れるノアに、思わず昏倒しそうになった。
「どうして脚が届かないんだろう?」とばかりに不思議そうにじたばたしてる小動物の姿を想像してほしい。衝動的にノアに携帯を向けてパシャリ。まじで心臓掴まれた。
「……引き離すの、ちィと罪悪感沸くな…」
” にぃっ、なぁぉ、 ”
「………すみません」
ノアお前……美形率異常の学園関係者の中でも確実にトップ5本指に入る二人と一緒なんだぞ……金に換算するととんでもない待遇なんだぞ……。
ちなみに会長本人には予定を話しているそうで、現在外出許可の申請のため職員室に居るそうだ。どうやら入れ違いになったらしい。まあ休みは四日間もあるわけだし、反省文のことはラインで一報入れるかな……。
” にぃ、にーぃ ”
「すぐに逢えますから。ね?」
” まぉ ”
「……」
「………クッ、」
「ふふ」
ノアを宥めるために頭を撫でてつい話しかけてしまい、微笑ましげな三対の眼差しが俺に向く。なにその「猫と喋った」みたいな生暖かい目。
やだこれ痛恥ずかしい。野郎が子猫とお喋りなんてメルヘン通り越してもはやメンヘラだ。
兎にも角にも、ノアの癒やし効果で疲れが吹き飛びましたわ。
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