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 本来お祝いすべきは俺の方なのに、与えられてばかりでなんだか申し訳ない。  男としては何かお返ししたい……けれどお返しは要らないと言われてしまったから、『園陵先輩が困ってたら例え火の中水の中何が何でも助ける券』×100枚を自分の中に課すことにした。 『支倉様、その……質問しても良いですか』 「はい! 洗いざらい話します!」 『ふふ、ではひとつだけ………昨晩、風紀のお部屋に向かわれたことは、横峰様から窺っております』 「あ、そうなんですか。ん、タツキから?」 『ええ、横峰様から。それで………お会いになられましたか?』 「志紀本先輩とですか?」 『はい。花火の時間帯は毎年、お部屋でお過ごしなさるので。携帯は電源を切って、お部屋も鍵をお掛けになって』 「そうだったんですか……」  知らなかったな……。  去年の七夕祭りはどちらにも会わなかった。去年は祭りの前日の午後にコンサヴァトリーでちょっとした茶会を開いたのだ。  だから別に誕生日当日に会わなくともいいと思ったし、今年みたいに隅々練り歩くこともしなかった。まあまだ警戒心バリ高の時期だったし、一緒に回ったのが紘野だ。あいつが一時間も人混みの中を付き合ってくれただけ奇跡に近い。 『それで……志紀本様と、七夕の夜に、お会いになられたんですね……?』 「え、ああ、まあ。ノアが向こうにいましたから、仕方なく入れてくれたんでしょうけど。それがどうかされたんです?」 『いえ、いえ、何も。………お返しなら、それでじゅうぶんです』  ……何がじゅうぶんなんだろう?  よくわからないが、『園陵先輩が困ってたら例え火の中水の中何が何でも助ける券』×100枚を拒否されたことだけはわかった。  別にいいもん、どうせ自主的に助けるし(開き直り)。  謎を残したまま通話は終わった。  ミステリアスな園陵先輩も嫌いじゃない。むしろすき。    原稿用紙と筆記用具、充電器と暇潰し用の本をクラッチバッグに入れ、ちょっと遅い朝食代わりに焼き饅頭(クマちゃんより)と紅茶(養護教諭より)をつまむ。  昨日は露店で色々食べたので、腹はあまり空いていない。  バッグとクリーニングに出す衣類を持って、部屋を出た。  校舎を目指す道中、運動部の掛け声がどこからともなく響いてくる。授業は休講だけど、運動部はフル稼働だ。テスト週間明け最初の午前練、運動部は特に怪我が多くなる傾向。  当番は暇だと決めつけるには早いかもしれない。 「部活、か……」  まだ少しだけ時間はある。  ちょっと、寄り道して行きやしょうかね。  

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