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 両頬を大きな手にすっぽり包まれ、鬱陶しそうに抵抗する副会長さんと、サドっ気全開でいじり倒す生徒会長さん。感触が気に入ったのか、ふにふにとその頬をつまんで遊んでる。  副会長さんの顔が苛立ちに歪んだが、ほっぺをみょんと引っ張られた状態で不機嫌な顔をされても迫力の欠片もないどころか、逆にちょっと……だめだ、これ以上はよそう。 「完治早々こんなくだらなひ嫌がらへはどうかと思ひます。屈辱の極みです」 「呂律回ってねえぞ」 「もう数週間長引けば良かっひゃのに」 「病院だなんだってぴィぴィ騒いでたのはどこの誰だった?」 「ぴ ィ(笑)」 「犯す」 「待っへ下さい人違いです。そんな架空の人知りません」 「それよりなんで繋の白衣なんざ大人しく着てんだお前は。オラ、脱げ」 「何を着ようが私の勝手でしょう」  しかもその体勢のまま口喧嘩が始まるなんて誰が予想できようか。  シュールな光景……になるはずが、視覚情報があまりにも絵になり過ぎて、そんなことは気にならなくなる。  片や頬を手で包んで、片や相手の手首に手を沿わせた状態となればそのまま口を寄せ合わせても不思議じゃない。  いやまあ副会長さんは抗ってるんけど、会長さんの方が物ともしてない。  それはそうと、両者とも見た目の落ち着いた雰囲気とはかけ離れた子供じみた争い。止まる気配のない口論。喧嘩してんのかじゃれてんのか判別つかない。  ただ、軽口を叩き合えるほど仲が良いことは、自然と伝わる。  証拠に、俺と二人きりのときはほとんど崩れなかった副会長さんの表情が、会長さんが来た途端、鼻で笑ったり眉を深く顰めたりと、ここまで変化を顕すのだ。  ふと、5月頃に聞かされた駒井の演説を思い出す。 『───僕は見てしまったんだ。会長様と副会長様が手を繋いで保健室に行く一部始終を。そして僕はある仮説を打ち立てた。あの二人は表面上佐久間くんへの好意を公言しているけれど、あれは単なるフェイクでしかない、と。二人は恐らく、ただお互いの気持ちを探り合っているだけに過ぎないんだ。……本当は愛し合っているのに、身体だけの関係で一時的な満足を得て、本心では身分の違いと世間の偏見に雁字搦めにされて…………うっうっ、なんてお可哀想なお二人……!』  あの時はガチ泣きする駒井の妄言をほぼ聞き流していたけれど、あれは的を射ていたのかもしれない。  この二人って………両片想い、なのかな……。  

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