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保健のセンセが登場した途端きわどくなった会話。ノーマルの俺には未知の世界過ぎて、拒絶しようにもまず話に入れない。
つーか副会長さんってこういう下世話なトークはキライそうなイメージあったのに、乗り気ではないにしろ普通に保健のセンセの話に受け答えしててびびる。
第三者の登場があっても懲りずに口喧嘩を再開させる二人と、それを楽しそうに眺める保健のセンセ。
俺がこの空間に居続けるのは、あまりにも場違いだと思った。
「お二人が可笑しな空気を作るせいで彼が引いているでしょう。あなたも、この人たちのことは気にせず、部活へ戻っていいですからね」
そんな想いが伝わったのだろうか。脱出するタイミングを用意してくれた副会長さんの提案を俺はすぐさま受け入れた。
俺は俺の立ち位置を理解している。
俺は一応『親衛隊持ち』と言われる側の人間だが、上には上の存在がいることをわかってる。
たとえば同じ親衛隊持ちの中にも、そこにはヒエラルキーがあって。気安く近付いてはならない領域がある。
この領域を冒した瞬間、親衛隊持ちだろうと学園の常識は容赦なく牙を剥く。
そういうのは御免だ。自分で言ってて虚しいけど、俺自身はいたって尋常な人間なので。
この学園の三年間を平穏無事に終えるために、目立たず騒がず、平和主義を貫くと俺は決めている。へらへらしてるだの、八方美人だのと、どれだけ思われたところで、このスタンスを変えるつもりはない。
今日のできごとは思いがけない非日常として後で駒井あたりに話して聞かせでもして、俺はいつもの日常に戻ろう。
きっと狂喜乱舞するぞ、あいつ。決して誇張ではなく。
だがしかし、入口へと歩を進める途中、生徒会会長様じきじきに呼び止められた。
足を庇いながらも振り返って姿勢を正す。
「一年……の、槻だったな」
「、は、ハイ!」
「今日の部活は見学しろ」
「え? ええと……」
「部活熱心、との評価は俺の耳にも届いている。時期を考えても焦る気持ちも解る。だが、熱心と無茶は別物だ」
「……はい」
「サッカー部には学園全体で期待を寄せている。一年は新人戦に控えてしっかり療養しろ」
「……。ッス」
これには流石に、殊勝に頷いた。
ここではじめて話したのに、まさかお見通しだなんて。
その傍で、副会長さんが満足気に会長さんへと目配せしたのを見て、ああ彼にもバレていたのかなと、苦く笑う。
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