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油断大敵 1

「───新生徒会役員候補生の選出、ですか」 「「そおー」」  カタカタ、カタ。  ぺったん、ぺったん。  俺がキーボードを叩く音と、双子が二人体制で書類に判を押す音をBGMにこんな話題が投下されたのは、テスト週間明けの某日、昼前、生徒会室でのことだった。  元々、サボり魔の会長やマツリと違って双子は比較的仕事に真面目な方だ。ソラは捺印を、ウミは書類のセッティングを、と役割分担し、みるみる書類の山が消化されていく。  そんな双子の兄弟が何気なくくちにしたワードを繰り返し、一旦手を止めた。 「選出方法は?」 「生徒会か生徒会顧問からの指名だよー」 「人数は?」 「三年生の穴埋めも兼ねるから年度によってまちまちだよー」 「役職はどこへ」 「庶務だよっ」 「またの名を雑用係っ」  等々、質問を重ねていく。  対象は基本的に一年生とのこと。正式に役員に任命されるのは聖夜祭で行われるランキング発表の後らしい。  それまでは派手な公表はされず、候補生の期間中なら拒否権も与えられているそうな。  来年度に備えた一年生の育成と人員の追加による業務の効率アップを同時に推し進めることが狙いなのだろう。それにしても。 「お二人とも、お詳しいですね」 「へっへへー」 「だって僕らー」 「「去年の役員候補生だもん」」 「……初耳です」 「僕ら、中等部の最終学年のときにWかいちょーやっててね」 「かいちょーやタッキーとは中等部からの付き合いなんだよ」  去年の朧気な記憶をたどる。  そういえばいつからか、そっくりな双子の兄弟が集会やイベント行事で生徒会役員として活動し始めたなあ、と完全に他人事の目線で見ていたことがある。普通に役員の一員だと思っていたが、あのときはまだ候補の段階だったのか。  いやはや、去年は生徒会と極力関わらないようにしてたから情報抜けてたわ。  よくよく話を聞くと、中等部から会長、タツキ、双子は生徒会に所属していたらしい。  そういう経験もあり、去年候補生の話が来て真っ先にオッケーしたと。  となると。 「では、候補生の指導係はお二人が適任ですね」 「「うーん」」 「僕らだとちょっとね……」 「説得力に欠けるね……」 「厳しいこと言えないし、うん」 「年上に見られないし、うん」 「かといってマツは付きっきりで世話なんて勘弁ってタイプだろうし」 「タッキーは指導以前にコミュ力が不安だろうし」 「かいちょー直々だと相手が萎縮しそうだし」 「藤センセーはあれだし」 「ということで!」 「りっちゃん!」 「「お願い!!」」  消去法かよ、とつっこみたいのが半分、けっこう的確に自分らや周りのことを捉えているな、と関心したのが半分。  まあ、候補に選ばれた経験があるってのと、指導側として上手く立ち回れるかってのは別物だしなあ……。  

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