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まあ、そのあたりはひとまず頭の片隅にお引っ越しだ。
今現在俺が優先すべき課題は、つい今しがた舞い込んできた新しい仕事の方。
「………候補生、なあ……」
生徒会入りして半年が過ぎた今、まさか今度は自分が誰かを選ぶ側に回るとは。
俺の独断で良いとのことだが、選ぶからにはやはりいい人材が欲しい。
能力パラメーターは勿論、性格や現メンバーとのバランスも重要。選考基準はある程度ハッキリ設けたい。
(過去の生徒会候補生の記録資料が見たいところだけど……)
月城学園は開校から今年で16年目と、比較的若い高校だ。歴代生徒会を遡ろうと思えば可能な年数だが、残念ながら生徒会組織に関する資料を今のところ見たことがない。
参考にできるとしたら、俺が実際に知っている去年の一年間、二期。
俺の三個・二個上の代の生徒会は悪評高かったらしく、今の会長がリーダーに成り代わったことで先代メンバーは全員リコールされた。その後釜にムードメーカーの双子を生徒会に招いたのなら………単なる人手の確保以外にも、緩和材の役割とイメージ回復の効果も狙っていそうだ。
つまり、ただ闇雲に優秀な人間を選べばいいってもんじゃない、と思う。
欲しいのはその時勢に相応しい人間。
外部からどう見られているのか、どういう人材が欠けているのか、常に念頭に置く必要がある。
(まあ、現生徒会のバランス的には、まじめな優等生タイプが欲しいよな。6人中4人が問題衆だし……)
(来年度の編成を考えれば補充は一年からが妥当)
(判断材料のひとつは優劣が一目でわかる成績。一年の上位10名のうちの誰かに絞りたい)
(全校生徒からの羨望を約束された以上、ルックスや評判も平均より上が望ましい)
(親衛隊員は却下。荒れるもとだ)
手元のメモ用紙に条件を箇条書きする。
それからディスプレイの窓を切り替えて、全学年の期末考査の結果が載ったPDFファイルを開いた。
三年……は、一位・志紀本先輩、二位・会長。惜しくも一点差だ。そういや前回の中間考査は同率首位だったな。
園陵先輩いわく、基本的な科目は互角だが、いつも壊滅的画力と音感皆無のどちらがより足を引っ張るかで順位が決まるらしい。筆記はどちらも最高得点なのに実技は下から数えた方が早いとかどんなギャップだよ。萌えねえよ。
二年は………へへ。略。
一年………まあ予想通り。王道・佐久間ルイが一位。満点とはいかないがぶっちぎりの好成績だ。
うわ、総合得点王道に負けてる。ぐぬぬ……。
(おっと……悠長に眺めてる時間もねえな。ちゃんと選ばねえと)
生徒会入りの条件は仕事の処理能力に留まらない。周りからふさわしくないと思われたらソイツの肩身が狭くなるだけ。
狭き門であり、多くの人間が欲する席だと本人が重々理解しておく必要がある。
まあ俺も就任直後は、やっかみはそこそこあった。
主に家柄という点で、分不相応だと。
自分たちの頂点を任せられるのか、常に生徒会を審査している生徒は少なからず居る。
それがわかってて、俺の指名によって一人の生徒を同じ組織に引き入れようとしているのだ。いい加減なスカウトはできない。
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