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「……はい、」と呟くような声量で返事をした結城くんは、まあポーカーフェイスを保ってはいるが、腹の中ではさてどうだか。
ふたつ返事で了承するには迷いがあるものの、優遇措置にはだいぶ惹かれている様子だったから、ここまで話を進めておいて今さら他人にその座を譲るのは惜しいだろう。
一番の理想は「ぜひ生徒会に入らせてほしい」と、向こうの口から願い出させること。
返事を長引かせれば長引かせるほど、居もしない第二・第三候補の存在に急いて自分から頭を垂れてくれれば上出来だ。
これは駆け引き。
上下関係づくりはスタートが肝心だ。
特に、生徒会で唯一庶民の俺だからこそ尚更、慢侮 の対象となることに無抵抗のままであってはならない。
「僕ら君のこと知ってるよー」
「一年生で目立つ子だよねー」
「「確か名前はユウキくんー」」
「ユイラギ、です」
「「そうとも言うー」」
「それ以外言わないですって」
バッチバチに戦闘体勢な俺の内心を知らない双子の人なつっこさは実に良い緩衝材で、基本的に社交的らしい結城くんも双子の交互だったりシンクロしたりとなかなか癖のある会話のペースに上手く対応している。
もともと、聞き上手なのだろう。
生徒会は個性豊かなメンツばかりだが、これならわんこともそれなりに上手くやれそうだ。
まあそこで寝こけるわんこがいつ起床するかによるが。
懸念するとすればここにいない会長やマツリ(サボりやがったな)との相性……。
人間関係で躓けば優遇措置など放り出して生徒会入りを固辞される場合もある。性格に裏がありそうでも優秀な人材であることに変わりはないから、できればふたりと顔を合わせる前に言質だけでも取っておきてえな……。
「あ、そーだ!」
「僕らとクイズしよーよ!」
「クイズ……ですか? ここで?」
「「そうそう! どっちが僕で、どっちがウミ(ソラ)か、当ててみて!」」
「え」
「「目は瞑っててね!」」
「……わかりました」
俺が考えごとの最中にそんな会話が成されていたようで、結城くんの周りをくるくると回り出す双子は大変機嫌よくはしゃいでいる。
しかし巻き込まれた当事者といえば二匹が気付いてないのをいいことに大変「メンドクセ」って顔のまま目を瞑った。俺は見逃さなかった。
10秒ほど結城くんの周囲をまわり、ぱっと分離した双子は、寸分狂いなく瓜二つの笑顔で結城くんを見上げる。
「目、開けて!」
「どーっちだ!!」
「………えっと、」
「こちらから見て右手がウミで、左手がソラです」
「「……ちょっとりっちゃぁーん……」」
そして空気を読まずに即答したのは結城くん本人ではなく俺である。
いや、ある意味ちゃんと読んでいる。
双子は初対面の相手にいつも遊び感覚でこのクイズをふっかけるが、ふっかけられた方からすれば普通に難しいし普通に困惑するものだ。
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