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例によって半年前の一月、俺も双子とのファーストコンタクトのときにこのクイズを出題されたのだが、これが見事にさっぱりわからなかった。
『『はじめまして、りっちゃん!』』
『……………………リッチャン???』
『支倉くんだと他人ぎょーぎでしょー?』
『だからふたりであだな考えてたのー!』
『はあ……そうなんですか…』
『ぼくはソラ!』
『え』
『ぼくはウミ!』
『え?』
『『さっそくですが問題です!』』
『あ、見分けならつかないです』
『わあ潔い!』
『逆に新鮮!』
某腐男子からの入れ知恵で「双子のクイズに正解すれば気に入ってもらえるよ!」と事前に聞かされていたので当初はよっしゃわざと外しまくったろうと意気込んでいたのだが、それ以前の問題だった。
何せ本気で似ているのだ。
そっくりさんとか、もはやそういう次元じゃない。
初対面で一発正解できた王道を二人が気に入ったのも、そう考えるとまあ、不思議ではない。
結城くんがクイズに正解しようとしまいと、正式に生徒会候補に決定してもいない段階でやるには時期が早い。
双子が気に入りすぎても厄介だし、ここは省略させてもらおう。
「積極的に親睦を深めることが悪いとはいいませんが、彼はまだ勧誘途中の段階ですので控えめに。それよりまずはタツキを叩き起こして、残ったお仕事を終わらせることを優先して下さい」
「ちぇー」
「ざんねーん」
「……すみません、橘センパイ方。また機会があれば」
「「ふえっ?」」
せ、先輩、ですって……?
ちょっと待って、聞き捨てならない。双子ずるい。僕まだ呼ばれてないです。
結城くんからの先輩呼びに心を鷲掴まれた双子は、驚くほど素直に仕事を再開しやがった。心なしかいつもよりテキパキ動いているように見えるのは気のせいか。「後輩」にいいところを見せたい、尊敬されたい、そんな下心が透けて見えるようだ。
なんだろう、なんだか無性に悔しい。
俺が「仕事して下さい」と注意するよりも何倍も効果的な「先輩呼び」の威力。
結城……恐ろしい子……!!
「では、結城くん。まずは生徒会棟の中を軽く案内致しますね。ついて来て下さい」
「……はい」
「……。」
(支倉先輩呼びマダー??)とこっそり耳を傾けてみたが返事以上に続くフレーズはついぞなく、仕方なしに気を取り直した。仕方なしに。
結城くんを引き連れ、生徒会室の案内を開始する。
生徒会棟の構造は四階。エレベーターと螺旋階段が全フロアを繋いでいる。
特に部屋が多いのはやはりワークスペースとして使う二階。
生徒会室と校舎を隔てる扉を抜ければまず最初に無人のエントランスがあり、ちょっとした応接室があり、さらに長い廊下を進んで執務室に続く。
執務室以外にもミーティングルームや給湯室、作業室、休憩スペース、バルコニーなどなど。
どこぞの宮殿のような贅尽くしの内装でありながら、設備自体は立派なオフィスだ。
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