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学園のデータバンクを担う生徒会のセキュリティ対策は最先端。
機密情報は厳重に管理されており、役員が外部の人間に情報を横流しする可能性も極めて低い。何故なら就任してすぐに秘密保持の誓約書を書かされましたので。
ここにある資料についても重要なものはすべて鍵付き棚の中。誰でも手に取れる資料は、誰に見られても困らないことと同義だ。
故に、結城くんの例え話はさして危惧すべき事柄ではない。
「……佐久間ルイに対しても、同じことが言えますか」
ふむ。
なかなか、痛いところを突いてくる。
今の発言は、わりとストレートな生徒会批判だ。
直訳すると、「転入したての佐久間ルイに籠絡された甘い組織のくせに、どの口が」と言っているようなもの。
まあ確かに、【王道事変】で学園を混乱に陥れた事実がある以上、一般生徒から見た生徒会のイメージはそんなものだろう。
もちろん王道に機密や弱味をバラすような役員は生徒会 にはいないと思うが、王道のことを「トクベツ扱い」している証拠がある以上、そういった疑惑を持たれていても致し方あるまい。
そりゃあ俺が結城くんの立場でも「値踏み」くらいしたくもなるかと、考えを改める。それに免じて、先程の失敬な呟きについては目を瞑っておいてやろう。
そして聞かれた以上、断言してやる。
「言えますよ」
「……。」
「まあ、現状、あなたが生徒会に対して不信感を抱く気持ちも理解できますが……、少なくとも私は、自身の立場や権限を利用してまでルイに取り入ろうと考えたことはありませんし、他の役員も同じだと……信じています」
決して、俺たちは「なかよしこよし」の信頼関係を築いているわけではないけれど。
────信用は、している。彼らのことを。
権威の象徴のごときこの学園のトップに立ちながら、それでも支配や圧制や恫喝などをせずとも生徒の頂点に立ち続けているのは、相応の資質と実績があるから。
権力を有すれど、権力だけで成り立ってはいない。
「……。それなら安心しました。すみません、差し出がましいことを言って」
しばらく間を置いて、結城くんは常の人の良さそうな顔つきに戻った。俺の「信じている」発言を受けて、果たして彼がどんな決断を下したかについては彼のみぞ知るところだ。
まあ、しばらくは互いに様子見になるだろう。上っ面の笑顔が外せただけでも及第点だ。
「───生徒会候補のお話、正式に、お受けいたします」
瞠目したあと、思わず口角が上がる。
これで、言質は取れた。
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