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 浮かべた笑みをすかさず引っ込め、業務用の笑顔に切り替える。 「色好いお返事、ありがとうございます。……早速ですが『候補生』について、もう少し詳しく説明いたしますね。あなたがこれから就く役職は生徒会庶務で、主に役員の仕事環境の効率化と簡単なサポート業務に従事していただきます」 「はい」 「候補生となった暁には、ご存知の通り、役員の特権である授業免除が利用できます。しかし現状あなたに適用されるのはこちらから呼び出した場合に限ります」 「はい」 「それから外出届や長期休学の申請方法など、優先的に対応して貰えるサービスが諸々ございますので、詳細は後ほど冊子をお渡ししますね」 「わかりました」  説明のために口を動かしながら、さり気なく相手の様子を探る。  優遇措置に対して何らかの魅力を感じていることは明白だが……正直、そんなにいい代物でもないんだよなあ……。なんだか騙してる気分に陥ってます。  授業免除と言っても引き替えに生徒会業務が待っているわけで、その分の授業の遅れは自分で補わなければならない。  特典というより余計な負荷だと思う。  サービスの優遇も便利ではあるが、一般生徒と生徒会の確固とした区分を強調するかのようで、一部の生徒からの心証は微妙なところだ。 「また、これはあなたの一存に任せますが……二学期から、一人部屋への移動が可能です」 「是非」 「……同室者と話し合った上で、合意を取ることが絶対条件ですからね」  今までで一番早いレスポンスだった。  俺と同じく彼が猫をかぶっているのなら、一人部屋はだいぶ魅力的な特典に違いない。  原則的に一年生が一人部屋になることはないので、この特典だけでも候補生になる価値はある。 「研修は週に二日を原則としますが、今後の働き次第で変更する可能性もありますので、悪しからず」 「はい」 「ここまでを留意した上で、どうですか? 何か質問や要望があれば今のうちに」  まあ、上下関係をきっちり教え込むのも大事だが、歩み寄りの姿勢も必要である。けっこうちくちくした物言いを選んだ自覚もあるので、その詫びも兼ねた譲歩だ。  こちらの都合で一方的にはなしを進めるのも、なんだか不公平な気がするし。  結城くんは少し迷う素振りを見せながらも、俺の質問に応えた。 「……では、要望をひとつ。勿論、叶えて戴かなければ辞退する、とは言いません」  ここで下手に遠慮しないでしっかり自分の意見を言えるあたり、ますますいい人材だよなあと一人関心しつつ。  続いて持ち出された意外な「要望」に、俺は目を丸くする。 「生徒会と佐久間ルイの接触を、適度に控えてほしいんです」 「……適度に?」 「はい。適度でいいんで」  ───ここに来てまた、王道の話題か。  

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