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そういえば、数々の人気者を自分の取り巻きまたは虜にしてきた王道と同じクラスでありながら、結城くんと王道がどうこうって噂は、これまで聞いたことないな。
美形ホイホイな王道なら結城くんとも絶対絡んでそうだし、結城くんほどの知名度ならすぐに騒ぎ立てられそうなのに。
それにしてもこの要望の意図はなんだ。
王道事変の再来によって生徒会が機能しなくなることを阻むために「王道から生徒会を」遠ざけたいのか、それとも王道信者たちと同じく惚れた腫れたを理由に「生徒会から王道を」遠ざけたいのか、はたまたまったく別の理由なのか。
何にせよ、彼が何らかの理由で王道の存在を意識していることは確かだ。
つうか「適度」ってどのくらいだ。却って難しい要望な気がする。匙加減に個人差がありそう。
とはいえこの要望は役員全員が対象だし、俺個人では安易に頷けない、と結城くんには説明し、ひとまずは保留ということで話は纏まった。
結城くんの要望の意図も、これから交流を深めていけばきっと追々わかるだろう。
差し当たって、今、やるべきことは。
「結城」
「え? ……あ、はい」
候補が決定したとあってはもう他人行儀も要らないっすよね、と思い至って早速フレンドリーに笑いかけたら「急になんだこの人」みたいな目で見られた。
だが気にしない気にしない。
「OA機器の操作は大体わかりますか?」
「ああ、まあ、大体は」
「あなたの血液型は?」
「A型ですけど……知ってどうするんですか」
「それなら整理整頓好きですよね」
「それは単なる偏見じゃ……?」
「さっそく今日から指導を開始したいと思うんですけど、説明事項が膨大なので、極力メモに書き留めるようにして下さい」
「はあ…わかりました……」
結城は戸惑った様子ながらも、俺の指示どおりメモ機能がついた電子生徒手帳とタッチぺンを薄い鞄から取り出す。
例え消去法だろうと、一度指導係を任されたんだ。相手が途中で投げ出さない限り、最後まで責任は果たすし手は抜かない。
まだまだ不安は残るものの、当面、結城には生徒会組織に慣れて貰うことが最優先の課題だ。
空間然り、他の役員然り、立場然り……仕事量然り。
「では、研修を始めましょうか」
おいでませ、生徒会。
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