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 この計画性の無さに関しては言い訳をさせてほしい。  何せ俺が候補生の指導係に抜擢(面倒ごとを押し付けられたとも言う)されたのは今日の昼間。  本来なら何人かに声をかけてもっと慎重に厳選するところを、まさかの即日OK。  そして俺は生徒会一年目。指導係として下を育てるには明らかに経験値不足。  いやだから、絶対ほかに適任者がいたっつの。 「まあ、完全にまっさらというわけではないのでご安心下さい。基本的には、生徒会補佐のさらなる下請け要員と認識していただいていいので」 「……ああ、ハイ」  結城が生徒会組織にさっそく不安を覚えはじめたようなので、庶務の業務内容についてはのちほど真面目にしっかり詰めておかねば。  幸い、是非ともやってほしい雑務のリストアップなら事前にしておいた。さす俺。  先ほど少し触れたが、定義として、補佐と庶務の位置付けとしては両者とも『サポート役』にあたる。業務内容が重なることも今後あるだろうから、互いの業務範囲を識別できる明確な基準をここで作っておくとしよう。 「生徒会補佐は、生徒会業務に関与した(・・・・)サポート役です。そして生徒会庶務であるあなたは、業務に関わらない(・・・・・)サポート役をしていただくことになります」 「『分担』ではなく、『区別』ってことですね」 「察しがよくて助かります」  このあたりは機密保持の誓約が関係している。同じ煩雑な作業でも学園の運営や生徒個人の情報に関わる重要な書類やデータを扱うなら双子に、それ以外の比較的簡単な雑用は結城に。  慣れてきたら範囲を広げてもいいし、もっと重点的な分野に絞って育成してもいい。  まずは手始めに、肩慣らしから。 「説明は以上です。では、ちょっとついて来て下さい」 「え、はい。………、……なんですかこの山」  誘導した資料室の奥、長テーブルの上には雑然と放置された付箋だらけの資料・雑誌・書籍・冊子・ファイル・スクラップの山、山、山。  説明しよう。  我が生徒会役員には、これまでの人生付き人にでも甘やかされてきたのか、「面倒なお片付けは人に任せるもの」だと無意識に考えている人間が約5名ほどいる。  そして俺は「自分が散らかしたものは自分で片付ける」というごく当たり前の教育を受けて育ってきたが、「他人が散らかしたものを代わりに片付けてやる」という教育は受けていない。  何より仕事疲れの後でこの惨状をどうにかしようという気は起きない。  だから山は積まれる一方なのだ。  そもそも何故うちの紗世ちゃん(※妹)でもできることを高校生にもなってやろうとしない????  そのくせ自分らのデスク回りはやけに整頓されてんのがまた癪に障る。 「ここに積まれたものの中に、一般生徒に見られて困る機密情報(もの)はありません」 「いつから溜めてたんですか……」 「さていつからでしょう……。掃除はこまめに(私が)してるので、汚れや変色の心配はないでしょうけど……恐らく」 「整理整頓好きですよねって俺に言ったの、これをやらせるためだったんですね」  これに限らず。  と言ったら、さすがに辞められるだろうか。  時刻を確認する。現在18時過ぎ。  結城は今日が初日だ。最初からあまり拘束するのも良くない。  生徒会業務は平均的にだいたい19時頃には切り上げるが、仕事が比較的落ち着いているここ最近ならもう少し早めてもいいだろう。  できる範囲でいいことと、30分後にまた来ることを伝え、結城を残して資料室を後にした。  「一人で考える時間」も、必要だと思ったので。  

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