421 / 442

22

 ディナーに至ってはもっとだめだ。双子としては親睦を深めることを目的とした食事会のつもりなんだろうけども、「生徒会役員6人と新入り候補生」の晩餐なんて聞いただけでも候補生側のメンタルがやられそう。  双子が思い描いているだろう楽しい歓談なんて夢のまた夢。  そんな説明を噛み砕きながら双子に伝えれば、丁寧に丁寧に意見を却下された双子は「「ううぐ」」と謎の唸り声を上げた。そしてパッと顔の向きを変えた。 「あ、マツーーー!!」 「おっはよーーー!!」 「「ちょっとこっち来てーー!!!」」  SHR開始まであと5分足らず、通常運転のギリギリ登校で2-Sの扉をくぐったマツリ(こいつの場合、登校が遅いのは朝があまり強くないのと身嗜みチェックにかかる時間のせい)へ、双子が助けを求めて声を張る。  スラックスのポッケに両手を突っ込んだまま、「朝から元気だねー」と緩やかに笑いながら近づいてくるマツリを半眼で()めつける。結局昨日来なかったなてめえ。  俺からのプレッシャーを受けながらも、俺の右横、つまりAの椅子へ遠慮なく腰掛けたマツリ(タイミング悪くちょうどトイレから戻って来ようとしていたAの「げ……」って顔を遠目に確認)へ、双子がざっくり昨日起きた1から10を説明する。補足程度に俺も参加。  候補生の教育方針は来年度の生徒会運営にも大きく関わるし、どうせなら他の役員の率直な意見も聞いておきたい。 「で、マツは??」 「どう思うー??」 「……ま、舐められるよりは、厳しいくらいがいんじゃない? 特に最初は」 「そっかー」 「マツはりっちゃん派かー」 「候補生っつっても次期生徒会役員の、でしょ。接待じゃねんだから、向こうの反応窺ってこっちが下手に出る必要はないと思うよ」  うむ、同意見だ。  何事も最初が肝心。早々から『この程度』と低く見積もられては、後々本当に忙しくなった時に困るのは候補生自身。  少しばかり酷かもしれないが、これで根を上げられてはどの道続かない。  生徒会組織は部活動というより会社の感覚に近いと思う。「一年だから」「まだ不慣れだから」を盾に優しく易しく手解きしたところで人が育たなければ意味がない。  これで2対2に意見が割れ、双子がさらに頭を悩ませる。すっかり先輩の顔だ。  とはいえまだたったの一日。結論を出すには早い。  次の研修日は一日置いた明日の放課後。時間はあるんだし、またゆっくり考えていけばいい。  

ともだちにシェアしよう!