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何も険悪なのではない。
情がないわけでもない。
ひとによっては歴とした友人と呼べる関係性なのかもしれない。
ただ、マツリに限らず生徒会の連中は、どうしたって俺にとっての友人のカテゴリには組み込まれない。
関係は良好な方だとは思う。
ただ、「仲がいいか」と訊かれたら「そうか?」と疑問を持つくらいには、己のなかでハッキリとした隔たりがあって。
努めて『秘密』を作るのは、すなわち相手を信頼していないということ。そんな相手を、素直に友人と呼ぶことに抵抗がある。
そういう意味では、この学園に入学して以来俺が真っ当に「友人」と呼べる相手は、たった一人しかいないのだけれど。
(……今日も来てねえし)
左横の空席。
七夕の午前中以来、顔を見ていない。
どうしたものか……。
サボり常習犯といっても、さすがに三日連続で学校に来ないのは珍しい。俺はいつまで趣味でもない光る腕輪(ピンク)を常時携帯しなければならないのだろう。
先日送ったメールの返信もない。
返信くらいしてくれたって減るもんじゃなかろうに、あのメール無精め。
嫌がらせに迷惑メールのテンプレ文でも送りつけてやろうか……などとそう考えはじめたところで始業のチャイムが鳴る。
きっと、しばらく待っていればひょっこり登校してくるだろう。
気にするだけ無駄だ。やめやめ。
双子をちらりと見てから、某メッセージアプリを立ち上げる。
それぞれのトーク画面へと、「私が結城にとって"厳しい先輩"になるから、あなたたちはその代わりに"優しい先輩"になってくれたら助かります」という旨の文面を書き込み、二人に送る。
指導係は嫌われてなんぼのポジション。
親しみやすさなんて代物、俺には無縁だ。だからこれでいい。
(それと……結城の『要望』についても、伝えておかなきゃな)
「王道との接触を、適度に控えること」。
先月のチームの召集が一件落着したことで会長は王道と接触する必要もなくなったみたいだし、わんこはそもそも王道を毛嫌いしているので自ら関わることはない。
だからこの結城の要望を伝える必要があるのは、マツリと双子。
追加で文面を打ち込み送信すると、ソラとウミからは比較的早く返事がきて、「しばらく我慢するけど、会ったらふつうに話しかけてもいい?」といった控えめな回答。
恐らく"適度"の範囲内だと思われるので、そこは二人の自己判断に任せる。
せっかく王道と友好な関係を築いているのに、あんまり制限するのは可哀想だし。
一方のマツリに至っては「考えておく」の一言のみ。
こいつほんと何考えてんのかわっかんねえ。
でも最低限、伝えはした。
応じるも応じないも彼ら次第だ。
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