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第9話

「希望んちって専属の家庭教師つけてるってマジ?」 「んぐぅっ」 「どうした?!」 「希望ちゃん?!」  高校での休憩時間中、おやつ代わりにタピオカミルクティーを味わおうとしていた希望は、突然の質問に驚いて、吸い込んだタピオカが喉に激突して噎せた。  質問をした友人だけでなく、近くにいた友人たちも集まってしまう。心優しい友人たちが心配してくれて嬉しい。そして、恥ずかしい。    少しして希望が落ち着くと、数名を残してそっと解散してくれた。 「なんかごめんな」 「う、ううん、大丈夫。ごめんね……で、なんだっけ……?」 「家庭教師の話」 「あ、ああ……うん……」  希望はそっと目をそらしながらちゅーっとミルクティーを啜った。友人は気にせずそのまま続ける。 「仕事忙しくて予備校じゃないのは知ってたけど、家庭教師つけてたんだ?」 「う、うん…」 「最近急激に模試の順位上がったのもその家庭教師のおかげ?」 「うん、まあ……はい」  その為に、身体差し出してます。えっちな肉体労働を強要されています。とは言えないので、またちゅーっとミルクティーを吸った。口の中に飛び込んできたタピオカを二粒、くにくに、と噛む。 「俺ももう少し上げたいんだよなー。どこの人なの? 俺にも紹介してくんない?」 「えっ」  びくっとして希望は顔を上げた。  驚いた顔をしている希望を見て、友人はきょとんとしている。 「……なんかあれ? 専属って、家の御抱えとかそういう……?」 「あ、いや、違うんだけど……」 「?」  友人たちが首を傾げているので、希望は困ったように笑った。   「……あのね、家庭教師って言ったけどほんとはライさん」    友人たちには言っても良いだろう、と希望は正直に話した。もちろん、見返りは報酬ではなく身体でのご奉仕ということは綺麗に伏せる。    ライは希望の学校帰りや友人たちと遊んだ後にも平然と迎えに来て顔を見せていたので友人たちの理解は早かった。  そもそも付き合う前から希望はライのことを、ライには内緒でこっそりと「俺の好きな人♡……片想いだけど」と紹介していたので友人たちにとってはお馴染みの『希望の好きな人』である。  驚くほど顔がいいこととやたらとセクシーでかっこよく、とても怖い雰囲気ということしかわからないが、『希望が好きになるくらいなんだから本当はきっといい人なんだろう、たぶん。いい人であれ』と認識されていた。   「あの人顔だけじゃなくて頭もいいんだね」とざわつく友人たちに、希望は少し照れ笑いを浮かべた。恋人を誉められて悪い気はしない。だが、複雑だった。 「俺へのご褒美は?」と脅迫じみたおねだりでご奉仕させられたり、お仕置きとしてえっちすぎる写真を撮られたあげく消すなって言われたり、散々な目に合っていることを決して知られたくない。 「す、スパルタだけどね……」  照れ笑いを浮かべた後は、曖昧に微笑んでやり過ごす。 「でも、やっぱ年上の恋人いいなー♡」 「勉強も教えてもらえるってイイよねー。羨ましい♡」  はしゃぐ友人たちに、希望はにっこりと笑い返した。    おれも、そう思ってた。

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