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第10話
俺だって、生まれてからずっと、賢い子ってことで生きてきた。
自分で言うのもなんだけど、勉強したらそれ相応の点数が取れたし、成績だって努力した分だけやや上がる程度には賢い子だった。
だけど、ライさんはなんか違う。次元が違うとでもいうのだろうか。もともと記憶力がいい、とかIQが高いとか、そういう意味で頭がいいんだろう。知的好奇心も旺盛だ。いい意味でも悪い意味でも。まるで目に映るすべてを理解しなきゃ気が済まないみたい。
そうやっていろんな物やヒトの構造、心理、物理、社会の在り方、気象に至るまで、様々な分野の知識を蓄えて、悪魔みたいな洞察力を身に付けてしまったんだろう。加虐心を満たすために、他人の心のやわらかい場所を見抜いて、躊躇なく抉ってくる。俺をいじめてる時のライさんは楽しくて仕方ないって顔で笑ってて、とても怖い。
ライさんの同期の恭介さんが言っていた。
『俺はあいつの存在を知ってから神を信じてない。あんな奴にいくつも才能与えるなんて、神様馬鹿じゃね?』って。
俺は神様に馬鹿なんて言いたくない。神様がお創りになるものにはきっとなにか意味があるんだと信じたい。ただ、神様も手元が狂うことがあるんだなって思った。
仕方ないよね。ドンマイ神様。
丁寧に容姿を作り込んだから、それに見合う才能(ギフト)詰め込みすぎちゃったんだよね。次は気を付けてほしいな。悪魔が生まれてますよ。
なんでそんな方向に才能使っちゃうんだろう?
神様からもらったもの、俺だったらこの声と歌とか、ライさん好みの魅力的な容姿とか、才能(ギフト)っていうものは、自分の幸せとみんなの幸せのために使うものだって思ってたけど、ライさんはどうなんだろう。
あ、でも、今こうして、勉強教えてもらって俺は助かってるし、感謝してる。
三日前もどうしてもわからない問題の解き方を教えてもらったばかりだった。少し時間はかかるし、難しい解き方だったけれど、丁寧に時間をかけて、非常にわかりやすく、やたら優しく教えてくれて、解けるようになった。
試験では、一問につき費やせる時間が限られているから、少しでも早く解けるようにと練習している。
だから、いっか。
ライさんは悪魔なだけじゃない。ちゃんと家庭教師してくれてるもんね。
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