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第18話
怖い話はまだある。
ある日希望は、勉強の合間に、休憩時間を取っていた。
ライの家のバルコニーは広く、タワーマンションの上の方だ。周囲に並ぶ建物も少ないし、喧騒も届かない。テーブルと椅子を並べ、ぽかぽか日差しを浴びて、心地よいティータイムを過ごすにはちょうどよかった。今日の気候も申し分ない。勉強の秋、読書の秋、とはよく言ったものだ。
ああ、秋の日差しってやわらかくて好き。ここで勉強してもいいかなぁ。
春に近づいたらもうちょっとお花とか置いちゃったりして。ミニ庭園にしちゃおうかなー。
そんなことを考えるくらい、束の間の穏やかな時間だった。
「お前日向好きだな。猫かよ」
「ひっ!」
ライの声に驚いて、持っていたカップが激しく揺れた。かろうじて落とさずに済んで、希望は少しほっとする。
けれど、ライが希望の向かい側に座ったので、ギクリと身体を強張らせた。
「もっと広い方がいい? 庭にする?」
「に、庭?」
やんわり考えていたことを読まれている気がして、希望はビクビクしながらライを見つめる。ミニ庭園みたいにしたい、と少し考えていたが、ライの言っていることが飲み込めなかった。
「に、庭って……? ここにお花置いていいの?」
「それでもいいけど、そしたらもっと広い方がいいだろ? いろんな種類植えられるし、そっちの方がお前好きそう」
「? ……庭園作るのは楽しそうだなって思うけど」
「じゃあ庭付きの家な」
……ん?
希望は首を傾げた。脳がライの言葉を受け入れることを拒否してて、うまく処理できない。
希望を置いて、ライは続ける。
「家作るなら郊外の方が静かでいいよな。二人きりになりたい」
「……!!」
ようやく脳がライの言葉を処理し始めた。希望はじわじわ涙目になって、ただただ震えている。
ライは愛おしそうに目を細め、希望を見つめていた。
「敷地内だったらどこでも行けるようにしてやってもいいよ。部屋にいるだけじゃ退屈だろ?」
「……うぅ……ふぇっ……」
「内装も家具も庭も、お前の好きにしていいし、庭園作りたいなら花も木も好きなの選んでいいよ。どういうのがいい?」
「ひっ、ひぐ……」
希望は怖くてちょっと泣いた。
この人、郊外に庭付き一戸建てを建てる気だよぉ……!
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