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第19話
「そしたらまた封筒があって、こっそり中見たらお花とか植物のカタログだったんですぅ! どうしよぉ恭介さぁん! 俺、お花いっぱいの庭園付きの郊外の屋敷に閉じ込められるよぉ! 花畑は好きだけど閉じ込められるのやだよぉ! 首輪も鎖も檻もやだー!!」
ぴぇぇぇん!! と希望は泣いた。
ライは最近、ずっと、とても楽しそうだ。
本気だからだ。からかっているわけでも冗談でもないのだ。
それが怖くて怖くて、希望は泣いた。
「で、でも、おれが悪いんですっ……! 下心と好奇心に負けて、何も知らないライさんによこしまな気持ちで眼鏡かけさせたから……だからライさん怒っちゃったんです……」
「ああ、よこしまな気持ちだったのか……。素直に言えて偉いな」
恭介は希望を慰めるため、背中をぽんぽん、と優しく叩く。
最近やたらライの機嫌がよかった理由はこれか、と恭介は納得した。
密かに不思議に思っていたことだった。最近のライは不気味なくらい上機嫌だった。希望をいじめるのが楽しくて仕方なかったんだろう。
ただ、ライの機嫌が良くても、誰も得はしないのだ。
「……で、今の話とその格好、何の関係が?」
「おとなしく清楚に可愛くしてれば、ライさんも許してくれるかなって思ったんですぅ……」
「俺は可愛いと思うけど、そういうの自分で言わない方がいいぞ」
めそめそしている希望の頭を、恭介が慣れない仕草でわしゃり、と撫でる。
何故ライに家庭教師なんてお願いして無事で済むと思ったのかは些か疑問だが、致し方ない。思春期なのだから下心くらいあるだろう。健全な証拠だ。相手が普通の人間なら二人の関係のためにもやめた方がいいと思うが、ライだから多少迷惑かけても構わないだろう。ライは今まで散々希望を泣かせてきたのだから、報いを受ければいいと恭介は思った。
「ほら元気出せ。好きなもん奢ってやるから」
「きょうすけさん……!」
キラキラと希望の瞳が輝き、恭介は目がチカチカした。
「何でもいいんですか? デザートも? 一緒にシェアしてくれます?」
「しぇあ……? いや、俺は」
「ライさん甘いの嫌いだからシェアできないんですよね……恭介さんも甘いの嫌いですか……?」
希望曰く『おとなしく清楚で可愛い格好』で、うるうると潤んだ眼差しに見つめられる。眼鏡の奥で金色の瞳が煌めき、唇はぷっくりと色付いていた。
……あざとい。これはさすがに、あざとすぎる。
恭介はふぅ、とため息をついた後、キリッと希望を睨んだ。
「どんとこい」
「恭介さん! 好き!」
「おいやめろ、普通に照れる」
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