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第20話
食事を終える頃には希望はにこにこしていた。
恭介は可愛らしくて甘いデザートなんて食べ慣れていなかったが、甘いもの自体は嫌いではなかったのでそれなりに楽しめた。
希望も元気になったようだし、まあいいだろう。強いて言うなら胃が重い。大量の生クリームがえぐかった。
そんなことはおくびにも出さず、恭介は希望と共にレストランを出た。
「恭介さん、話聞いてくれてありがとう! ごはんごちそうさまでした♡」
「いいよ別に。このあとは? 家まで送ろうか?」
「大丈夫、ライさん近くに来てくれてるみたい」
希望がスマートフォンの画面を見ている。メッセージでも来ていたのか、慣れた様子で返事をしている。
「迎えに来てんのか……。律儀に彼氏してるあいつって純粋にキモいな」
「キモくないよ! でも今日遊ぶこと言ってなかったのにどうしてここがわかったのか考えると怖い」
「全然律儀じゃなかったな。ほっとしたよ。いやしねぇわ。このまま警察行くか? 付き添うぞ?」
「だ、だいじょうぶ……!」
とても大丈夫ではなさそうだったので、恭介はライのところまで付いていくことにした。
少し歩いたところで、ライを見つけた。休日の昼下がり、人の数は多かったがすぐに見つけることができた。
これだけ人がいるのに、ライの周りだけ人がいない。ライはもともと身長が高くて体格がいい上に、彫りの深い精悍な顔立ちも長い足も目立ちすぎる。サングラスをしても、彼の顔の良さは隠せないようだ。
人々は少し離れたところから彼を見て、それぞれの空想を描いていた。俳優? モデル? なんかの撮影? とざわついている。昼過ぎののどかで平和な時間、さすがにライに声をかける勇者はいなかった。
ていうかなんだそのサングラス、一般市民を怯えさすな。控えろよ存在感を。社会に紛れる努力しとけ。
自分にはない長い足を睨みながら、恭介は舌打ちが止まらなかった。
「恭介さん! あ、あそこに!」
同じようにライを見つけた希望は震えていた。ぎゅうっと恭介の腕にしがみついている。
可哀想にこんなに震えて、と恭介は希望を気遣った。
「ハリウッドスターかと思ったら俺のハニーだった! びっくりしたぁ!」
「ああ、……うん?」
希望を安心させようと伸ばした手を、恭介はあっさり引っ込めた。
「あれ、俺があげたサングラスなんです! やっぱりかっこいい♡ イタリアンマフィアみたいだけど俺の目に狂いはなかったぁ♡」
「平和な午後を脅かすこの緊張感はお前のせいかよ」
「ああ! でも、みんなが見てるー! どうしよぉ! 俺のハニーが魅力的すぎてごめんなさぁい!」
「はいはい、そうだな」
あんなに怯えてたのに、全然反省してねぇな。
まあいいや、こいつ叱るの俺の仕事じゃないし。
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