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episode3. 渦(4)

「……ちょい待ち……これって!?」  何とも皮肉というべきか、予想外というべきか、なんとお目当てのソレは、師匠の氷川が出した写真集の一環として、”氷川白夜”の一覧の中に埋もれるような形で紹介されていた。少々複雑な気分だが、ともかくあっただけでめっけモンという思いで、それらしきをクリックしてみた。  ざっと見た限りで個人的な写真集の紹介が二つ三つ、他にはゲイ雑誌全般の中に小さな特集が組まれているような感じのものが数冊。その中で一等上に出てきたものがお目当ての写真集なのだろう、太字で記されているタイトルには『一之宮紫月ファースト写真集/月下繚乱』とある。  商品紹介には、『朔夜編/残月編の二つのテーマに沿った全カラー撮り下ろし。新月に紛れて無理矢理奪われる苦悩を描いた朔夜編と、月光の下で乱される淫靡な魅力が満載の残月編、対極のイメージで撮った紫月のファースト写真集。カメラマンは新進アーティストの氷川白夜が手掛けているのも話題を呼んでいる。』とあった。  残念ながら――と言っていいべきか、イメージ画像はないようだ。だが、紹介欄を一読しただけでも何ともいえない奇妙な何かに全身を支配されるような心持ちになって、遼二は少々焦った。  ゾワゾワと背筋をのぼってくるようなこの感覚は、あの時の撮影現場で感じたものとは異なれど、一種独特のものだ。次第に下腹あたりが掬われるような、足腰から力が奪われていくようなヘンな気持ち――欲情の感覚に他ならなかった。  そんな気持ちを鎮めるように機械的な感じでタイトルをクリックし、だがそれこそ残念なことに写真集は売り切れているらしく、『在庫無し』と出てきた。入荷予定を見ても不明とされている。仕方がないので、元のページに戻って次を見た。  二番目のそれも最初の物と同様、紫月個人の写真集のようで、タイトルは『天使と悪魔の狭間/一之宮紫月ザ・セカンド』とあった。二冊目の今回はどっぷりと本気の純愛をテーマにしているらしく、紹介文にもそれらしいことが綴られていた。恋愛要素満載というだけあってか、この本には相方モデルの名前も記されている。”橘京”、聞いたことのない名前だ。 「当たり前か……俺、こっち方面はまるっきし縁無かったしな……」  二度目になると先程よりは慣れてくるのか、左程ドキドキせずに、どちらかといえば期待の気持ちの方が強い感じでクリックの指先もスムーズだ。そんな自分にまたしても苦笑いが漏れ出すのを抑えながら、次へとページを進めた。  こちらもタイトル画像はナシ、しかも一冊目と同様売り切れ状態なのに、かなりの勢いでガッカリとさせられた感が否めない。

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