16 / 85

episode3. 渦(11)

 やはり新鋭ともてはやされるだけのことはあってか、これが官能写真集であることを忘れさせられるくらいに、見る者を瞬時にその世界観に引き込んでしまうのはさすがだ。当初、何でこんな売れっ子カメラマンのくせに官能写真などを手掛けるのだと思った自分が恥ずかしく思える気がしていた。  だがそんな感銘に浸っていられたのはほんのそこまで、次のページをめくった瞬間から、生真面目な感動が吹っ飛んでしまうくらいの衝撃的なショットが心拍数を爆発させていった。  男に背後から抱きすくめられ、明らかに逃げ惑うような動きのあるショット。その次には着物の袷を剥がれ背中が無防備この上ない丸出しにさせられたまま、それでもこちらを睨みつける強気な仕草のアップへと続く。髪を掴まれ、口元をふさがれて激しく抵抗するショットからは、まるでその場の叫び声までが聞こえてきそうな程に臨場感を伴っている。  やはり背後から抱き包まれたまま、胸飾りをまさぐられては仰け反るさまに、ゴクリと喉が鳴った。  まくし上げられた裾から大胆な太股があらわにされ、尻の半分を鷲掴みにされている。片方の腕を捕り上げられて、痣がつく程に爪を立てられ拘束されて、唇を噛み締めている。恥辱に堪える視線が、手前で彼を乱暴している男の着物の隙間を縫って睨み付けてきているのが分かる。その瞳が心なしか潤んでいるふうに感じられるのは撮り方のせいなのか、紙面の中の彼と視線が合うような感覚に、バクバクと鼓動がうるさく響くのがうっとうしくてたまらない。  胸の突起を親指と人差し指に挟まれ弄られて、ほのかに紅く色づいたような感じのドアップ、口中に突っ込まれているのはガサついた男の指先、そして重なり合う腰と腰の密着ショット。  もう見るに堪えない。  少し濡れたように見える髪は激しい抵抗でにじみ出た汗のせいか、乱れたその髪を藁の敷物に押し付けては激痛に耐えるような表情にショックが走る。いま、この瞬間に貫かれたのだろうということを想像させられる。その苦痛をやわらげる為か、無意識に敷物を掴み上げる手だけのアップショットが、彼の感情をリアルに訴えてくるようだった。  そのショットを境に、後のページには手だけ、足だけ、鎖骨だけといった、部分的なショットのアップがしばらく続いていた。まるでひとしきり奪われた後に放置されたような、あるいは放心しているような彼の姿が脳裏に浮かぶ。虚ろな視線と白肌に浮かぶ汗の玉が激しい情事を物語っては、心臓が苦しくなるような不快感を突き付けてくる。

ともだちにシェアしよう!