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episode8. お前だけのモデル(2)

「でもホント、紫月君は綺麗だなぁ。それもただ美人っていうだけじゃなくて、男らしさも充分あるし、色香はもう最高だし! 雑誌でも人気ナンバーワンだったっていう理由が分かるね」 「いえ……そんな、恐縮です」  倫周に対する態度の面でも紫月はあくまで丁寧だ。麗の息子だと聞いているせいもあってか、幾分緊張しているような様子でもある。そんな彼の気持ちを解すかのように、倫周の方はフレンドリーな感覚で明るく話し掛けていた。 「ちょっと若い頃の麗ちゃんに似てるかな。顔立ちもだけど、髪質なんかもさ」  ヘアワックスで髪を掻き上げながら、そう言って鏡越しに微笑んだ倫周に、紫月は視線を合わせた。 「あの……倫周さんはレイ・ヒイラギさんの息子さん……なんですよね?」 「ん? うん、ああ、そうだよ」  少々不思議そうに首を傾げながら訊く紫月の様子に、 「もしかして麗ちゃんっていう呼び方が珍しいと思った?」  倫周はクスッと微笑みながら聞き返した。 「ええ、まあ……。仲がよろしいんだなって」 「まあね。麗ちゃんは見ての通りいつまでも若々しい気分でいる人だからさ。僕なんか物心ついた頃から麗ちゃんって呼んでるんだよ。っていうか、呼ばされてるって言った方が正しいかな。パパなんて呼んだ記憶がないくらいだもの」 「そうなんですか」  倫周のユーモアを交えた親しげな話し方が紫月の緊張を解したのか、思わずつられるように笑みが漏れ出す。だが、同時に何か言いたげ――というよりは”訊きたげ”な感じでじっと見つめられて、倫周は鏡の中の紫月の様子に首を傾げた。 「あの……」 「ん? なぁに?」  何でも遠慮せずに訊いて――といったようにやわらかに微笑む。すると、紫月は言いづらそうにしながらもポツリポツリと話し出した。 「レイ・ヒイラギさんと遼二……いえ、鐘崎君とは昔からのお知り合いなんですか?」  どうにも言いにくそうに訊く。倫周は内心『ああ、そういうことか』と納得してしまった。  麗も倫周も遼二と紫月が恋人として互いを想い合っていることは承知である。だが、紫月にしてみれば遼二との仲を知られているとは思っていないのだろう。彼が『遼二』と言い掛けて、すぐに『鐘崎君』と言い直したことからもその様子が窺える。倫周はにこやかに答えた。 「うん、そう。僕が赤ん坊の頃からの付き合いってことになるのかな」 「……そんなに前から……。っていうことは、倫周さんも遼……鐘崎君とは……」 「幼馴染みってことになるのかな」 「……! そうなんですか……」  紫月はほとほとビックリしたようだった。

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