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episode8. お前だけのモデル(6)
遼二の目は虚ろだ。シャツを裂かれ、ジッパーを下ろされても既に抵抗するという気力もないようである。それどころか、抗えない欲情の波に全身を支配されてか、ひどく苦しそうだった。
「どこまでも強情なヤツだな。だが、もういい加減限界だろうが? 何もかも忘れて、目の前の欲しいもんだけを貪ってみろ!」
麗は遼二の髪を掴み上げると、もう片方の手で彼の雄を握り締めた。
「……ッ、ああ……ッ」
そのまま容赦なく怒張した熱を揉みしだく。
「ほら、紫月! よく見ろよ。こんなにガチガチにおっ勃てて、気の毒ったらねえだろ? こいつだって男だ。欲の前じゃ強情や理性なんぞかけらもなく吹っ飛んじまうだろうぜ?」
「……は……あッ、……よ……せ……ッ!」
「よしていいのか? もっと擦ってくれ――の間違いじゃねえか?」
麗は底意地の悪く笑いながら、再び遼二の膝の上へと跨がった。そしてまたぞろ自らの雄で彼の怒張を刺激するようにグリグリと擦り合わせる。そうする度に遼二からは押し殺したような苦痛の嬌声があふれ出た。
「ボス……! やめろ! 俺が代わりになる! どんな仕打ちも受ける! だからそいつを貶めるのはやめてくれ……!」
堪らずに紫月がそう叫んだ。一瞬で声が嗄れてしまうほどの絶叫でそう叫んだ。
「そいつからマトリの職も奪って……この上、尊厳を踏みにじることだけはしたくない……! あんただって一大組織の頭を張ってる男だ。それくらい分かってくれるだろッ!? 頼むからこれ以上そいつを苦しめないでくれ……! その代わり、俺はどうなってもいい! この通りだ……!」
必死に頭を下げる紫月に、麗は険しく眉根を寄せて視線をくれた。
「そんなにこの男が大事か? てめえの命 に代えても守りてえってか?」
「ああ……。俺の命 で許されるなら気の済むようにしてくれ……。だからそいつだけは……」
「ほぅ?」
麗にも少しは紫月の覚悟が伝わったのだろう、跨っていた遼二の膝から降りると、苦々しく口元をひん曲げてみせた。
「そうか。だったら望み通り趣向を変えてやろうじゃねえか」
麗は言うと、今度は足早に紫月の側へと歩み寄り、その胸ぐらを掴み上げた。
「そこまで言うならこの男のことは諦めてやる。その代わり、お前がこの男の相手をしてやるんだな」
「――!?」
あっさりと引き下がった麗に、紫月はもとより周りの部下たちも訝しげに眉根を寄せる。
「ボス、よろしいんですか?」
部下の一人が小声でそう訊き、チラリと目配せする。
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