13 / 26

第13話

蓮は驚いたように僕を見つめ 「ハル?」 そう呟いて戸惑った表情を浮かべる。 散々、もっと凄いことをしておいて、僕がキスをしたくらいで戸惑う蓮が愛しいと思う。 僕は人より鈍いから、自分の気持ちに気付くのさえも遅かったみたいだ。 「蓮、僕も蓮が大好きだよ」 そう呟くと、蓮は目を見開いて真っ赤な顔をして口をパクパクさせている。 どんなに大人ぶっても、こういう態度をしている蓮はやっぱりまだ10代の子供なんだよね。 「蓮…でも僕と蓮は男同士で、しかも養子とはいえ、親子なんだ。姉さんの子供だった蓮とは血だって繋がってる。たくさんの禁忌を侵してる関係なんだ」 僕の言葉に、蓮はムッとした顔で視線を外すと 「そんなの…関係ないよ」 って、ポツリと呟いた。 「蓮、今はそうかもしれない。でもね、社会に出たらそうはいかないんだ」 そう言いながら、僕はふと思った。 (蓮が大学に行って社会に出たら、もっと世界は広がる。その時でも、まだ僕を好きだと言ってくれるのだろうか?) 急に不安が、胸に込み上げて来る。 まだ、引き返せる。 そんな考えが脳裏をよぎった時 「今の俺はまだガキだし、何を言ってもハルが信じてはくれないと思うけど…」 ガシガシと頭をかくと、蓮は壁に両手を着いて僕を蓮の両腕の中に閉じ込めると、鼻先が着いてしまうんじゃないかと思う程に顔を近付けて 「俺は…物心着いた時からハルしか見てなかった。俺の世界の中心は、いつだってハルなんだよ」 蓮の…まだあどけなさは残っている、けれど間違いなくオスの獲物を狙う強い視線が僕を捕らえる。 端正な顔立ちをしている蓮に、どんな女の子も口説かれたらたちまち虜にしてしまうだろう。 僕は弱虫で狡いから…、今まで蓮を好きだという気持ちに「養父」という蓋をして、見て見ないフリをして来た。 蓮の鋭い眼光は、僕のそんな狡さや醜さを全て見抜いているかのようで直視出来なくなる。 視線を逸らした僕の顎を、蓮の指が掴んで蓮の方へと顔を向かせる。 「ハル…、もう逃がさないよ」 蓮の瞳の奥に光る鋭い光。 思わず獲物に睨まれた小動物のように、僕は身動きが取れなくなる。 ドクンドクンと、自分の心臓の音がうるさい。 見つめられた視線さえも、縫い止められたかのように蓮の瞳から外せない。 蓮は僕の顎を掴んだまま、唇を重ねて来た。 そのキスは恋人同士の甘いキスとは違い、まるで獲物を食らうかのような荒々しいキスだった。 呼吸も唾液も、吐息さえも奪い去るような激しい口付けに意識が遠くなる。 必死に蓮の首にしがみつき、遠のく意識を手繰り寄せる。 こんなに荒々しい蓮は初めてで、どうしたら良いのか分からなくなる。 その時「ブチブチっ」と、ボタンが弾け飛ぶ音で我に返る。 蓮の手が、僕のシャツを強引に開いて胸元に唇を這わされる。 「嫌だ!」 思わず仰け反って叫ぶと 「今日は、どんなに泣いて叫んでも最後までするから!」 蓮の瞳に欲情の炎が揺れている。 こんな時、蓮は僕の知らない蓮の顔になる。 「嫌だ…、こんな所で…」 涙が込み上げて来て、僕は必死に呟いた。 蓮は大きく溜息を吐くと 「分かった。此処じゃ無きゃ、良いんだな!」 そう言うと、僕の身体を軽々と抱き上げて、2階の住居スペースへと歩き出す。 アラサーの男が、何が悲しくて10代の…養子とは言え、息子にお姫様抱っこされてるんだろう。

ともだちにシェアしよう!