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身代わり愛

好きだと言われて有頂天になった 愛してる……と言われて…… 死にたい程…… 幸せになった…… 江藤保は…… 弟の恋人に…… 片思いしていた 中村真紀…… 真紀と書いて『まさき』と呼ぶ 保は真紀に一目惚れだった だが……真紀は既に…… 弟の隆也の恋人だった 諦めなきゃ…… そう思うのに…… 忘れられなかった…… あの瞳は……弟の隆也しか見ていない…… 諦め切れない想いが 胸の中で薄巻いていた 男にしては美人だった 瞳がキツくて…… 印象的だった あの瞳に見つめられたい…… あの瞳に自分だけを…… 映し出したい 初めて……真紀と出逢って…… もう五年はたとうとしていた 「江藤!おい!江藤!!」 松田部長に声掛けられ振り向くと…… 瞳のキツい……少年が立っていた まるで……真紀のような瞳に…… 保は見とれてしまった 「おい!江藤!」 「……ぁ、済みません、何ですか?」 「お前バイトの面倒見ろ!」 「……え?俺が?」 「主任だろ?」 …つい最近……主任に任命さればかっだった そう言われれば「……はい!解りました!」 と、了承するしかなかった 「松田晶だ!面倒頼むな」 松田‥‥部長と同じ姓に勘ぐるなって謂うのが無理だろう‥‥と想った 「………この子は訳ありですか?」 「俺の昌子さんの子供だ」 「コネっすか?」 「…言うな、変な所にバイトさせたくないんだ」 「はい。解りました!」 松田部長はとてもご機嫌で晶に 「今日からお前の面倒を見る江藤保だ!」と保を紹介した 「松田晶です 保サン、宜しく」 キラキラ光る瞳は…… 真紀のそれに酷似していた 「お前年は?」 「20…」 「大学生?」 晶は首をふった 「バイトでも仕事する以上は容赦ないから」 「はい!特別扱いなんて期待してねぇよ」 「お前、一人っ子か?」 「違う。弟や妹がいる」 「そうか。」 「後…兄さんがいる……」 晶はそう言い俯いた 「どうした?」 「母さん離婚したから… 兄さんには逢ってないけど……」 「そっか!」 保は晶の頭を撫でてやった 「保サン……兄さんみたい」 保は笑い 「お前の兄さんは幾つよ?」 と問い掛けた 「23歳……」 「俺は25だ……兄さんよりは上だな 俺の弟と同い年しか」 「でも…暮らした事ないから……」 「そうか。」 「仕事覚えるから! 教えてください!」 真紀の瞳に…… どこか似てる晶の瞳から… 目が離せなかった 手に入るなら…… 真紀…… お前の……宝石のような瞳に 口吻したかった…… 「保サン」 考え事してた保は晶を見た 「保サンは独り暮らし?」 「おう!二十歳を過ぎて実家は肩身が狭い…… 俺んちは5人兄弟だからな… もう兄は結婚して子供もいる」 「保サンは独身?」 「あぁ、結婚相手に式の当日逃げられて以来、独身を貫いてる」 「‥‥‥保サンでもフラれるの?」 「まぁ結婚には向いてないのかも知れねぇな」 「そんな事ないよ‥‥保サンは優しいよ」 晶が寂しそうに言った この日から…… 晶とは仲良くなった 晶がバイトに来て 3ヶ月が過ぎた 晶は保に懐いていた 晶はコピーしたり、書類の作成や雑用をやっていた 部長が再婚した連れ子が……晶だった 半ば引き籠もりのような生活に…… 部長は危惧してバイトに来させたのだ 晶の歓迎会をやらないか?と飲み会に誘われた 久しぶりのバイトに社員達は飲む口実が出来たと、飲み会を開いたのだった 一応、主役はバイト君の晶だから誘われた でも飲めない晶は、直ぐに潰れた この子は‥‥‥限度と謂う事を遥か向こうに忘れて来てしまったのか? こんな事がバレると松田部長にお叱りは確実だった 「晶、晶、起きろ!」 置いて逝く訳にもいかなくて、酔い潰れた晶を保は面倒見た 起きる気配のない晶を店に置いて逝く訳にもいかず‥‥ 保は仕方なく……晶を自宅へ連れて帰った 部屋に入ると晶が目を開けた 「ココどこ?」 酔っぱらいが楽しげに聞く 「俺んちだ」 「保サンの部屋?」 瞳をキラキラさせて部屋を見渡した 保の胸はキリキリ痛んだ 未練なら………あるのだ 想いも‥‥真紀に残しているのだ そんな真紀を彷彿させる晶に、保は胸がときめいた 欲望がふつふつとわいて‥‥暴走一歩手前だった 晶が保に甘えて抱き着くと‥‥保の理性は焼き切れた 保は晶を押し倒した 「……え?保サン?」 保は晶の瞳を見て…… 「好きだ……」 と告げた 「……保サン……本当に?」 晶にとって保は、兄貴みたく近い存在で オールマイティ何でも出来る存在だった 保は晶の瞳にキスをした 「…保サン……」 「………拒むな……」 半ば……強姦まがいに晶を犯した 晶は抵抗する事なく…… 保の背中に……腕を回した 晶は求められて嬉しかった 晶は保を抱き締めた 半ば強引に……恋人同士になった ‥‥‥が、保は混乱していた まさか……瞳が似ているだけで…… 抱いてしまえる衝動に駆り立てられるとは……   思っていなかった 部長の手前…… 突っぱねて……別れる訳にもいなかった 「保サン…」 「……晶……」 2人の時間は……甘く……激しい 罪悪感がそうさせてるのか…… 解らなかった…… 晶は気付いていた 保の瞳が…… 自分を通り越して…… 誰かを見てるのを…… でも……離れたくなかった  身代わりでもいい 愛されていたい …………何時か…… 自分を見てくれ日が 来るんじゃないかと……願って止まなかった 恋人である保は優しかった 申し分のない恋人だった 仕事が早く終わった日、保がご飯を食べに行こうと誘った 晶は恋人の誘いに嬉しくて堪らなかった 「何が食べたい、晶?」 「保サン、俺、何でもいい 保サンといられれば…それで良い」 「晶は可愛いな」 見上げる晶の瞳を見る 真紀と同じ瞳を見る 晶は「まただ……」と想う 保の瞳が……晶の上を通り過ぎて行く 晶の胸はキシキシと痛んだ 保の行きつけのレストランへと向かう道すがら 晶は懐かしい人間に声をかけられた 「晶だろ!」 懐かしい声に振り向くと兄が立っていた 真紀は弟に声をかけて気付いた 晶の横に見知った人間がいる事に‥‥ 「あれ?保さん?」 真紀が晶の隣の人の名前を呼んだ 晶は保を見た とても優しい瞳で真紀を見ていた 「隆也は?」 「これから待ち合わせ! 所でなんで保さんが晶と?」 「部長のお子さんだ バイトの面倒を見ろと頼まれた」 面倒を見ろ……… 頼まれたから……? 頼まれたから保サンは…… 晶は耐えた 頼まれなきゃ‥‥面倒なんてみてくれないのは解っていた なのに何故こんなに悲しい‥‥ 真紀は慌ただしく時計を確認すると 「晶、今度逢おうぜ! 保さん遅刻しちゃう!また!」 と言い走って行った 保はその後ろ姿を…… 何時までも見ていた… 解りたくなくても‥‥‥晶は解ってしまった 保が誰を素通りして想いを馳せていたか‥‥‥を。 「………保サンは兄さんが好きなんだ……」 自分の事なんて…… 愛していない 愛されてなんかいなかった 甘える時…… 面倒臭そうな顔をした 迷惑だったのだ……本当は…… 「そうか‥‥‥兄さんだったんだ」 保は何も言えずに晶の名を呼んだ 「……晶……」 「…大丈夫だよ…… 義父さんにも……兄さんにも言わないから……」 「晶……? 何を言ってるんだ?」 「保サンの好きなのは兄さんなんだね……叶わないよ」 晶は泣いていた 愛されてなんかいなかった‥‥ 確かに‥‥兄と自分は同じDNAを持つ兄弟だ 保は自分の中に兄の面影を見たのだ 自分は愛されてなんかいなかったのだ! 解りたくなかった 「保サン‥‥僕は兄さんにそんなに似ていた?」 涙する晶を抱き締めてやりたかった だが不実な……自分は……抱くことさえ出来なかった 「………保サン今までありがとう……」 晶はそう言い…… 人混みを駆けていった 翌日……晶はバイトを辞めた 自分が晶を身代わりにして傷付けたのだ‥‥と保は悔やんで身動きが取れずにいた 晶との日々は甘く‥‥ なくした今、保を苦しめていた 『保サン』 クスクス……愛してる 『保サンだけだよ』 「……晶……」 胸の中にいた確かな存在を抱きしめようとした だけど……晶はいなかった 晶がバイトを辞めて…… 一ヶ月 保は……日々募る晶の存在に…… 認めるしかなかった あのキラキラした瞳に…… 見られたい 舌っ足らずな声で保サンと言われたい あの日………手を離すんじゃなかった 「………晶……」 強姦まがいに抱いた 思いやりもなく抱いた なのに晶は許してくれた そして次は優しくしてね と許したのだ あんなに優しい子を保は傷付け‥‥ 真紀の身代わりにしようと抱いたのだ 何時しか晶に囚われて夢中になるのを認めたくなかった‥‥ 晶と逢えなくなって、保は何とか晶に逢うチャンスはないか‥‥と想っていた そんな年の瀬の忘年会の後……願ってもないチャンスが転がり込んできた その日の忘年会は何時になく松田部長は深酒をしていた もう一件付き合えと謂われて二次会を蹴って、部長と静かなバーに呑みに行った 何時より饒舌な部長は悩んでいた 「………江藤……晶が部屋から出て来ないんだ……」 「……俺のせいですか?」 「晶に聞いたら違うと泣くんだ…… だから……お前のせいじゃない」 晶の優しさに触れた 保は腹を括った 「部長、晶を俺にくれませんか?」 部長は……呆気に取られ……保を見た 「………それはどう言う意味よ?」 「晶を嫁に下さい」 絶句した 「………お前本気か?」 「頗る本気です!」 「…………お前に晶を嫁に出すのか? 晶は男なのに?」 「……俺のを挿れてる時点で… 責任は取ります」 「………お前……晶に手を出したの?」 「………ええ。晶を抱きました」 「…………嫁にしてくれるんだろうな!」 「ええ。します!」 保は清清しく言った 「部長、晶はどこにいます?」 「家にいるだろ?」 「なら貰って行きます!」 「………晶には弟も妹いる…」 男に略奪されて逝くのは‥‥‥教育上宜しくない‥‥ 「晶に弟がいるなら跡継ぎは弟にさせて下さいね!」 「お前‥‥本当に晶を嫁に貰うつもりなんだな ‥‥‥だが待て、今連れて行くにしても…晶が暴れれば……兄弟の影響が怖い……」 「なら連れに逝くのは諦めます! なら部長、江藤保が倒れた……とか言って一度見に行けと…言って下さい」 「………言ってやる その代わり返品はするんじゃねぇぞ! 泣かせるなよ!俺の息子だからな!」 そう言い泣いてるのは…… 部長だった 部長は胸ポケットから携帯を取り出すと   「晶か?父さんだ! 頼み事があるんだけど聞いてくれないか?」 『…………父さん…要件は?』 「工藤保って知ってるか?」 『…………ええ。貴方が……任せた人ですよね?』 「アイツが倒れたんだ お前様子を見て来てくれないか?」 『嫌だ……行きたくない……』 「お前しか家は知らない 一時はお世話になったんだ、様子を見るだけ位しなさい」 ビシッと言うと晶は諦めた 『………解りました……何時見に行くんですか?』 「今これからだ!」 『………今?』 「様子を見れば帰って良い 中で死んでられても困るからな……」 敢えて死んでられても……と言う 『解りました これから見に行きます』 晶はそう言い電話を切った 「部長、此処の支払いはしておきます! 晶が来るので帰りますね」 保は精算をすると駆け足で店を出た まさか………工藤が晶を? 信じられないけど…… 工藤に預けていた時は晶は生き生きしてた その頃に戻れるなら…… 相手が野郎でも……目を瞑るしかなかった 部長は妻に電話した 「晶子さん?」 『なぁに、透さん』 「……晶の恋人が……男になっても許してくれる?」 『……まぁ……晶の恋人は男なの?』 「そうみたいです 俺の部下です」 『誰?』 「工藤保」 『……彼なら晶の片思いの彼だわ』 「……え?晶子さん……詳しく聞かせて」 『引き籠もりの晶が楽しそうだから聞いたのよ そしたら工藤保サンと言う人に恋しちゃった……って言われたわ』 「………なら両想いか…」 クソッ!部長は、叫んだ 『早く帰ってらっしゃい透さん』 「………只今!」 部長は妻の元に走って帰った 晶は…… 何時も通ってた道を辿り…… 保の部屋へと向かった ………あの頃は…… 保に逢いたくてウキウキ駆け上った 今は足が重い 兄に恋してるなんて…… 叶うはずないじゃん…… 綺麗な兄 母そっくりの……兄が相手では…… 叶わない 保の瞳が…… 自分を素通りするのは知っていた でも望みがあるなら…… と頑張った でも……… 「望みなんてないじゃん……」 晶は悲しく呟いた 保のマンションに向かう ドアベルを鳴らす 顔を見たら…… 帰れば良い 元気だと父に言えば良い だけど……何度押しても…… 保は出なかった ドアノブを回すと…… ドアは開いた 「工藤さん……工藤さんいたら返事して下さい」 保は晶に工藤さんと呼ばれて胸が痛んだ 晶は、保を探した リビング、お風呂、キッチン…… やはり寝室? 晶は恐る恐るドアノブを回した ドアが開く…… 保はベッドの上で寝ていた 具合が悪いの? 晶は心配になる そっと近寄る 保の匂いがする そっと保に触れる そして手を引っ込めようとして…… 保に掴まれた 「………え?工藤さん……」 「保サンじゃないの?」 「…………別れたのに言えない……」 「別れた覚えないよ?」 晶は暴れた 保は晶を抱き締めた 「兄さんが、好きな癖に!」 涙で一杯の瞳が保を睨む 「………好きだったよ」 ほらみろ!と晶は保の腕から遁れようと抗った 「真紀は弟の恋人だ 出逢った時から‥‥‥ずっとな‥‥」 「工藤さん‥‥」 「あの性格を直してやりたかった 殴っても張り倒しても‥‥直してやりたかった だが今は何とも思っちゃいない 例え破滅へ向かっていたとしても‥‥興味がない 俺は晶を愛してるからな‥‥」 保は晶にやっと告げた 「………嘘……工藤さんの瞳は何時も……俺を素通りする……」 「晶だけを愛してる」 晶を見つめ言う 晶は首をふった 「……もう嘘は良い…… 愛してるフリしなくて良いよ 義父さんには言わないから……」 「部長には嫁にくれと申し出た くれてやると部長は、晶に電話を入れてくれた」 「………嘘……」 「本当だ!」 保は晶の腕を引いた すると晶の体躯が保の胸に飛び込んで来た 「愛してる晶」 「………」 晶は何も言わなかった 「信じられない?」 「………もう良い……」 「何が?」 「工藤さんに振り回されるの疲れた」 「俺の側にいてくれ……」 「………身代わり?」 「晶が欲しい……」 「嘘……」 晶は信じられずにいた その時晶の携帯電話がけたたましく鳴った 画面を見ると義父からの着信だった 「……義父さん?」 晶が電話に出ると唐突に 『晶!工藤に飽きたら何時でも帰って来なさい』と謂う 晶は何がなんだか‥‥混乱していた 「何の話してるの?」 『お前……工藤と寝たんだろ? 工藤は挿れたと言ってた…何度も……』 「……義父さん……」 『工藤が嫁にくれと……と言ったけど…… お前がその気じゃないなら… 断ってもいいぞ!』 部長の声の後ろから……あなた…と言う母の声がする 保は晶の携帯を取り上げると 「部長、往生際が悪いですよ! 晶は幸せにする! 俺の妻にする! 世間で認められまいが構わない! と言う事で黙ってなさい!」 そう言い電話を切った 晶は……脱力して床に崩れ落ちた 保は晶を強く抱き締めた 「……俺で良いの?」 「晶がいい! 嫁に来てくれ!」 「……はい。」 保は晶を押し倒した 「……え?……」 「夫婦がする事をする」 「………犯るの?」 「嫌か?」 「…俺の体躯なんて抱いてもつまんなくない?」 「全然!凄く気持ちいい」 「……ぁん……耳元で喋らないでぇ……」 「ヌいてないからな…… 何時もより長いかもな……」 保は、そう言い…… 熱く滾る性器を晶に握らせた 「……ゃ……熱い…」 保は晶の体躯を抱き上げるとベッドに押し倒した 「床だと背中が痛いだろ?」 そう言い服を脱がしてゆく 「………工藤さん……」 保は晶の耳を舐めながら 「保サン、言って?」 「……ぁん…ぁぁ…た……保サン…」 「よく出来ました! ご褒美に念入りに舐めてあげる」 「……え?」 裏向きにひっくり返され 足を割られた お腹に枕を入れると…… お尻を突き出した格好になり 晶は慌てた こんな事……されてない 保は晶の蕾を舐めて解した ローションじゃなく舐められるのは…… 初めてだった 「………ぃ…嫌だ……保サン……」 「何で?気持ち良くない?」 指を挿し込み、クニャッ曲げて掻き回す   舌は執拗に舐めて 指は執拗に掻き回していた 「……ぁっ……ぁぁ…保サン…」 「晶、舐めて…」 保は晶を起こした 「どこを?」 保は熱く滾った肉棒を晶に握らせた 「……ゃ……熱い……」 保は耳元で 「晶が欲しいからだよ」 と囁き舐めた ゾクッと晶の体躯が震える 晶は保の亀頭に唇を近付けた 「初めてだから……上手くないよ」 「晶、誰かと犯ったら殺すよ」 保の手が晶を唆す 「晶は俺だけ知っていれば良い」 身勝手な男の言い分に……クラクラになる ペロペロと晶は保の性器を舐めた 不慣れな舐め方に、保は愛を感じた 嫌いな男のモノなど舐めたくはないから…… それを舐めてくれる   精一杯舐めてくれる…… そこに愛を感じずにはいられなかった 「晶、お尻をこっちに向けて…」 保の上に跨がり、お尻をこっちに向けろ……と言われて 晶は保の方にお尻を向けた 再び愛撫の手が伸びてきて 晶はイキそうになった お尻の穴を舐められて…… 穴の奥に指を突っ込まれて……   耐えきれなくなるなんて…… 保とのセックスで明らかに自分の体躯は作り替えられていた 保は…… 優しく抱いてくれた 最初傷付けたから…… ローションを使い優しく解してくれた こんな……お尻の穴を舐められるなんて…… 「……保サン……イッちゃう……」 だから止めて……と訴えるのに…… 「痛いの嫌でしょ?」 と甘く囁かれれば…… 頷くしかない タチが悪い こんな人だった? 何時もスマートに抱いて…… 終わらせてた 淡泊なのかと思った 自分も満足してるから…… それで良かった 抱いてもらえるなら…… それで良かった ぷくっと勃ち上がった乳首を執拗に弄られる 堪えきれず……晶は泣いた 「……保サン……意地悪しないで…」 保は晶を抱き上げ膝の上に乗せた 「良くなかった? 男は晶しか知らない…痛かったら言うんだよ?」 晶は……嘘……と呟いた 初めての行為では血が出た でも……後の行為は……手慣れてた 「……男は俺が…初めて?」 「そう。女は何人も抱いた」 晶は悔しそうに唇を噛みしめた 「晶だけにするから…許して…」 保は、そう言い優しく口吻た 「晶は?」 「………俺は……保サンが初めて……」 「……女とも犯ってない?」 晶は頷いた 保は晶を強く抱き締めた 「晶の最初で最後の男だ!」 熱い滾る熱が晶の蕾に当てられた 何度も……入り口を出し入れして、穴を解す 「……ぁん……保サンだけいてくれれば……それで良い……」 晶は保の首に腕を回した 「晶、愛してる」 一度も言われた事のない台詞に… 晶は保を見た 「照れるだろ……」 保は照れていた 「……誰にも使った事がない台詞なんだからな……」 「………嘘……」 「嘘じゃない 晶だけを愛してる 晶は?俺を愛してる?」 「愛してる…… 保サンだけ……ぁん……ぁぁ…」 保は晶の中に押し入った 激しく腰を使い、晶の体躯がガクガクと上下する 「……ぁぁん……イッちゃう……」 仰け反ると……乳首を吸われた 晶は扱かれる事なく射精した 「………え?………嘘……」 「気持ち良かった?」 晶は頷いた 晶の中の保は……まだイッてなくてドクドク脈打っていた 保も我慢の限界で…… 晶を押し倒し足を抱えた 激しく貫かれ…… ガシガシ腰を使われた その激しさに…… 晶は何が何だか解らなくなる… 「……晶、次は一緒に……」 愛する男に囁かれ…… 晶はイッた 保も晶の中でイッた はぁ…はぁ…と汗で濡れた保に抱き着いた 晶の中に保はまだいた お尻が痺れたようになっていた 「……保サン……俺壊れる……」 こんなに、何度も…… なんてなかった 奥に生で射精された事もなかった 保は何時もゴムをつけていた 晶の中に放った保の精液が流れて来るのが解った 「壊れない…… 壊れたら、作り直せば良い」 案外短絡的な事を言われて晶は笑った その時……まだ保が中にいるのが解った 「……保サン……」 晶はぶるっと体躯を震わせた 「……何で?」 「解らない?」 晶の瞳を見つめて保が言う 素通りされず…… 保の瞳が晶を映し出していた 「最初はその瞳が……欲しかった……」 真紀に酷似した瞳が…… でも健気な晶が…… いつの間にか……保の中を占領した 無くして…… 晶を焦がれた 愛していたのだ晶を…… 無くして気付いても…… 晶はもう戻っては来ない 最後の賭だった 「……晶の瞳に囚われた 晶じゃなきゃ…ダメなんだ」 「……保サン…」 「お前の舌っ足らずな声が保サンと言うと…… 俺は嬉しくなる 工藤さんと呼んだ時……胸が痛くて死ぬかと想った」 保は苦しい胸の内を吐露した 無くしたくないから! もう二度と…… この腕から離したくないから…… 「……保サン……諦めなきゃダメだと……想ってた」 「俺を愛して…… それとも……もう許してくれない?」 許してるから…… 体内に入らせてるのに…… 「保サンが俺を見つめてくれるなら……」 「もうお前しか見ない……」 「……保サン……」 「晶を無くしたくないんだ……」 ピロートークにしては熱すぎる 求愛だった ドクドクと熱く震えるのに…… 動かない男に焦れて…… 晶は勝手に腰が動いていた 「俺の奥さんになって…」 「………保サン……」 「嫌なの?」 「なる……保サンの奥さんに……」 晶は堪えきれず……腰を動かした なのに保はそれを押し留める 「……ゃ……保サン…動いて…」 「エッチは2人で楽しむもんだろ?」 「……意地悪……」 「まだ返事を聞いてない」 「……何?……ぅん…ぁ…」 「奥さんになるなら、一緒に俺と暮らすんだよ?」 「…え?………嘘……」 「俺は愛するお前と離れていたくないんだ」 こんなに熱い男だなんて…… 知らなかった…… 「……住む……保サンと朝も晩も…一緒にいる」 「よし!」 保は激しく腰を使った 保も限界だった 晶の腸壁が保を締め付け蠢くから…… 晶は、激しく保に求められ 性欲が尽きるまで…… 揺すられた 晶の中で抜かずに3回やった頃 晶はヘロヘロだった あんなに激しく……やったのに保はまだ元気だった 晶を抱えて風呂へと向かう 浴室の床に晶を置くと、シャワーを出した そのシャワーは晶のお尻が受け止めた 「……え?保サン……何?」 「掻き出さないと下痢するだろ?」 お湯と同時に保の指も入り込み……晶の中を掻き回す 「……ゃだ……保サン熱い……」 晶の痴態に保の胯間は……勃ち上がっていた 「……晶、握って……」 晶に言うと、晶は保の性器を握った 保は晶の性器を扱き…… 同時に……イッた 互いの腹に薄くなった精液が飛び散らせた…… 晶の顔は汗で濡れて淫靡だった 晶は無意識で男を誘っている様で…… トロンとした顔をした晶に際限なく欲望がわいてきて保は苦笑した 保は晶の体躯をシャワーで流した そして手早く晶を洗った クラクラの晶を洗い終わると、自分も素早く洗い、保は浴室から出た バスタオルで晶を拭いてゆく 楽しい作業だった 「……保サン、自分で出来る…」 「俺に拭かれときなさい」 保は綺麗に晶を拭いてドライヤーで髪を乾かした 晶を乾かし、保も自分を拭いて乾かす そしてベッドの上に2人で寝た 「近いうちに広い部屋に引っ越す」 ワンルームのこの部屋で晶と生活を始めたくなかった 「……保サン、此処でも良いよ?」 「晶、お前は専門学校に通いなさい」 「うん。」 「そして資格を採ったら、俺の会社に入って来い 今度はバイトじゃなく、社員としてな」 「……保サン……」 「お前を食べさせるのは容易い 俺の給料は、そこまで悪くないからな でもお前を飼いたい訳じゃない 共に過ごしたいんだ」 保の気持ちが…… 嬉しかった 「うん。俺頑張る……」 「お前が家具を選べ」 「……え?俺…ここに住むの?」 保はため息をつき…晶を膝の上に乗せた 「別居が所望か?」 「……保サンと暮らせるの?」 「晶、よく聞け! 俺は引っ越すと言った 2人で暮らすには狭いからな 俺一人ならこの部屋で十分だろ?」 「……うん。何だか……信じられない……」 「………結婚しようと想ってた時期があったからな…貯蓄も十分ある」 「……何で結婚しなかったの?」 「………フラれたんだよ 俺は結婚向きの男じゃない」 「……嘘、保サンは素敵だよ?」 「……晶……目医者に行けって言われるぞ」 「違うもん!保サンは素敵だよ」 「晶、一緒に暮らそう! 俺と結婚してくれ」 「……はい。」 「そうと決まれば! 晶、お前、親父に電話して保サンと結婚します!と言え」 「……本気?」 「頗る本気! 離す気ないからな!」 この男は……本気になるとタチが悪いかも…… こんなに欲しがられて…… 嫌な筈ない ないけど……雁字搦めにする人だったんだね…… 晶は、苦笑した 苦しい位……保に雁字搦めにされたいと想ってた でも……まさか……本当にされるとは… 父親に電話を入れると直ぐに出た 『晶!帰って来るのか? 父さん迎えに行ってあげるよ』 義理の父は優しい人だった   自分の子供と分け隔てなく育ててくれた   引き籠もりの自分を心配して……悩んでくれた   「父さん、保サンのお嫁さんになる」 『…………それでお前は幸せなのか?』 「うん。でもね俺バイトするけど、まだ少しだけ厄介にならなきゃならないと想う」 『当たり前だ! お前は父さんの子だ 何時までも甘えて良いんだよ』 「父さん、資格を取って保サンの会社に正社員として採ってもらえる様に頑張る」 引き籠もりの息子だった 物静かな……子供だった なんの望みもなく…… 日々を淡々と生きていた それが将来の夢まで語るとは…… 諦めるしかないじゃないか! 部長は、鼻をすすった 『なら、俺を唸らせてみなさい! 縁故で甘く入れる世界じゃないからね!』 「知ってるよ父さん ねぇ父さん、バイトは縁故でダメ?」 『また、うちでバイトしたいのか?』 「うん。自分の夢のためにお金も要るしね!」 『何時からしたいんだ?』 「今日から……と言いたいけど、起きれない…… 明日から頑張るね」 起きれない程…… 『晶!何時でも別居して帰って来て良いからね!』 「保サンの側が良い… 俺、帰らない……父さんごめん」 『……晶……その男で良いのか?』 「うん。俺、保サンがいい」 『……悪魔の様に腹黒い……のに?』 仕事は出来る だから25で主任に抜擢された その手腕を買ってるから工藤保はまだまだ上へ上る 結構…あくどくて腹黒い 辛辣な言葉の効果を知っていて、敢えて使う…… 『悪魔だぞ!』 父の台詞に……晶は笑った 「父さん、俺、保サンの奥さんになる」 『……母さんに報告に来なさい』 「解った、明日にも顔を出すよ」 そう言い晶は電話を切った 電話を切った晶の頬に口吻して引き寄せた 「……悪魔?」 保はハハッと笑った 「仕事に関してはな、容赦ないんだ……部長の口癖だ」 情け容赦ない姿は…… 会社にバイトしてる時厭と言う程見たし……やられた 「そんな俺は嫌い?」 晶は笑った 「大好きだよ」 保に引き寄せられ、保の胸の中に収まり眠る 夢のような時間 きっと…… 目が覚めたら…… 夢なんだと…… 想える位に……… 25で主任に抜擢された男は 私生活でも手腕を揮った 翌日、手頃な物件を見付けて… 買った そして家具を全部晶に選ばせて…… 引っ越した そのスピードなんと1週間 保と身も心も結ばれた翌日の夜 保は晶の家にご挨拶に行った 応接間に通され、嫌な顔した部長が保を迎えた 「……工藤……冗談じゃなかったんだな……」 晶の首に……びっしり着いた紅い跡に…… 部長は観念した 晶子は始終笑顔で笑っていた 保は姿勢を正すと 「晶を俺に下さい」 と深々と頭を下げた 部長は黙って……保の前に分厚い封筒を差し出した 「此処まで本気なら許すしかないじゃないか!」 保はありがとう御座いますと頭を下げた 「………反対されると想わなかったのか?」 「反対されるのが当然 俺は男で晶も男だから……許されないのは解っています」 「……なら何故……」 黙って……知らん顔させなかった? 「晶を日陰に置くのは嫌なんです」 「………え?」 部長は驚愕の瞳で保を見た 「晶を……隠し通して…… 貴方の部下でいるなら…会社を辞めます」 「……おい……」 辞められたら痛手だ そこまで本気なら…… 文句も言えない 「晶は、これから勉強して俺の側に来る 俺は晶を隠す気もないし、晶を離す気はない だから晶を誰にも負けない存在にしたい 勉強をさせて、正規で会社に入る 遅いと言う事はない 人は頑張れば努力の先へ行けるのだから」 此処まで晶の事を考えて 晶と共に生きるというのなら…… 寧ろ…有り難いのかも知れない 「晶の帰れる場所は確保しておきたかった 晶は俺が無理矢理奪ったけど…… 貴方達の子供なのは変わらない 晶をこれからも迎え入れてやって下さい」 保は深々と頭を下げた 晶も両親に頭を下げた 「……ごめんね母さん……そして父さん 俺、保サンを愛してるんだ 保サンに誇れる人間になりたいんだ! だから専門学校へ行って勉強する そして正規で会社に入る! 保サンは遅いと言う事はないんだよ……と、俺に教えてくれた 俺…保サンのものになりたい」 結婚できない関係なのは…… 厭と言う程解っている 晶子は晶の傍へ行って晶を抱き締めた 「晶、好きな人は工藤保サンと言ってたわね? 好きな人と結ばれて良かったわね」 「………母さん…… 最初はね保サンは兄さんが好きだったんだ」 「…真紀?」 晶はうん……と頷いた 「真紀元気だった?」 「うん。元気だった 母さん……俺…兄さんより、綺麗じゃない……」 晶子は晶の頭を撫でた 「バカね!前はそうかも知れない…… でも今はお前を愛してるのよ じゃなきゃ上司の家に、お前を下さいなんて来れないわよ」 「うん。今は俺は愛されてる 昨夜……体躯に言い聞かされた もぉね……死にそうな位…凄かった」 晶子は笑った 「………その首……だものね 服脱げば……もっとでしょ?」 「……どうなんだろ? 服着せたの保サンだから解らない……」 「好きなんでしょ?」 「うん。」 「離れたら死んじゃうんでしょ?」 「うん。」 「なら頑張らなきゃ…ね」 「うん!俺、勉強して保サンの所へ行く!」 晶子は保を見た 真摯な瞳は何時だって晶を見ていた 「工藤さん、その封筒は晶が大学に行きたいと言い出したら行かせる為に貯めたお金です! 花嫁資金にしては足らないと思います お納め下さい」 晶子に言われて保は困る 「………部長……」 「………俺に言うな…… 晶の為に晶子が貯めたお金だ 貰ってやってくれ!」 「では晶の為に使います」 保は、そう言い晶に腕を伸ばした 晶は保に擦り寄った 「部長、この近くにマンションを買いました!」 「………ええ!」 「俺は扶養家族が出来たんで今まで以上に頑張ります! 晶が淋しい時、来れる環境も作りたかった」 部長は脱帽した 遠くへ行かれる訳じゃないなら…… 「工藤……お前本当に腹黒い……」 保は笑った 「部長、護るべき者を得た俺は無敵です! 覚悟してくださいね!」 無敵…… 部長は絶句した 「透さん……晶が幸せなら良いじゃないですか」 「………そうだね晶子さん」 部長は妻にべた惚れだった 保は分厚い封筒を胸ポケットにしまうと 「それでは部長、これで失礼します 荷造りとかあるんです 晶も明日からバイトに入ります 今まで以上に歓迎して働かせます!」 晶は泣きそうになった ………容赦のない男だから…… 晶は保に抱えられ……連れ出された あれよあれという間に…… ご挨拶になり 引っ越しになり 気付いたら…… 工藤保の妻になっていた 工藤晶……… 晶は工藤の養子になっていた 「………はぁ……疲れた……」 容赦のない上司にしごかれ…… やっと自宅に帰宅した 自宅は実家にも 会社にも近かった この近さは……疲れた体躯には有難い 晶は帰宅して、ソファーに倒れた 食事の支度しなきゃ…… でも動くのは億劫で……晶はソファーに倒れ込んでいた 晶は25になっていた 出逢った当時の保と同じ年になっていた 「保サンは俺の年には主任になってたよな?」 晶はまだ平社員だった 役職もつかない……社員だった あれから晶は猛勉強した 猛勉強して資格を採り、専門学校を卒業した そして中途雇用試験を受けて 晴れて保と同じ会社の正規社員になった 晶の上司は情け容赦ない……悪魔だった 皆が……悪魔と呼ぶ それを知っていて…… 本人は高笑いしている 本当に性格の悪い……奴だった 「………本当に……性格の悪いよね?」 思わず独り言 誰もいないから言える台詞だった なのに…… 「誰が?」 と問い掛ける言葉がした 「………え?保サン?」 「お前が間男入れてなきゃ俺しかいないだろ?」 「……間男なんて入れてないよ 保サンしか要らないのに……」 ギシッとソファーが音を立てる 保は晶に上にのし掛かった 「誰が……性格が悪いんだ?」 しれっと言う男は本当にタチが悪い 父親が悪魔……と言っていたのを…… 今身をもって知った 「………保サン……」 保は晶の服の中に手を差し込み 「俺?こんなにお前に優しくしてるのに? 浮気もしない良い夫だと想わないか?」 「………保サンはモテるから心配……」 「5年晶一筋だ この先も晶一筋だ!」 嘘じゃない 保は晶だけを見て 大切にしてくれてる 「あ!俺もなもう30だろ? 親がな結婚しろと煩いんだ でな、戸籍見せて結婚してると言ってやった ………驚いてたな」 喉の奥でクックッと嗤っていた 本当に性格の悪いよね? 「……反対されなかった?」 「俺は長男じゃねぇからな 5人兄弟の一人や二人結婚しなくても大丈夫だろ?」 「……保サン……」 「晶をなくさなくても良いなら 何だってする! それが俺なりのケジメだ」 「………保サン……」 「だから俺を慰めろ」 保サン……と浸っている間に 服脱がされて…… 裸に剥かれた 「た……保サン」 「どっちのお口で食べたい?」 穴の中を探られ……掻き回される 翻弄され…… 「下のお口……」 と言う すると熱く滾った肉棒を挿れられた 後はもう…… 流されて…… 保の好き放題にされた 保に好き放題にされ疲れてると 保の携帯がけたたましく鳴り響いた 弟の隆也からだった 「よぉ、何だよ隆也」 『兄貴!カミングアウトしたって本当かよ!』 自分より先を越されて… 隆也は怒っていた 「おう!嫁を貰ったから報告しといた!」 『その嫁!男だってな!』 「おう!男だけど俺の戸籍に入った立派な妻だぜ!」 『………逢わせろよ!』 「勿体ない!」 こんな性格の兄だったっけ? 寡黙で大人で…… 兄が真紀の事を好きなのは知っていた だが譲れなくて…… 兄と距離を取った その兄が男と結婚したと母親が爆笑していた 『あの性格の悪い奴が…… 相手がいただけでも良かったわ』 母は言っていた 性格の悪い? 隆也は…… 性格の悪い兄は知らなかった 真紀を盗られたくなくて…… 兄から避けていたから…… 知らないのか? 『兄貴、何処に住んでんだよ?』 「紅葉坂」 高級住宅街だった 「ブリリントヒルズだ」 『行って良い?』 「何時だ?」 『これから……』 「押し掛けてくる気なんだろ?」 『何号室?』 「708号室」 電話はブチッと切れた 保はソファーでくたばってる晶を起こした 「弟が来る」 「え?……保サンの弟?」 「そう。支度しょうな」 「……弟って……」 「お前の兄貴と付き合ってる奴だ」 「………え……」 保はさっさと晶の支度をして掃除をして消臭スプレーを吹き掛けた そして晶をソファーの上に座らせた 暫くするとインターフォンが鳴り響いた カメラを作動させると弟の隆也だった 「今開ける」 と言い迎え入れる 真紀も一緒にいた 「いらっしゃい」 隆也は部屋の中をキョロキョロ見渡して 「このマンション長いの?」と問い掛けた 「嫁を貰った時に買った だから5年か?」 5年…… 「何時戸籍入れたんだよ?」 「5年前」 隆也は絶句した 真紀も絶句した リビングに迎え入れられると 晶がソファーに座っていた 真紀は何が何だか……解らなかった 保はお茶を入れて隆也と真紀の前に置くと 晶を持ち上げ膝の上に乗せた そして携帯を取り出すと電話した 「昌子さんですか?」 『あら、保さんどうなさったの?』 「真紀に逢いたくないですか?」 『………真紀……?』 「ええ。貴方の子供の真紀です」 『保さんの、部屋に行けば逢える?』 「ええ。何時でも来て下さい」 保はそう言い電話を切った 隆也は唖然としていた 保は膝の上の晶の頬にキスをしていた 「……兄貴……」 隆也が……いたたまれなくて兄を呼ぶ 「隆也、紹介しよう! 俺の妻の晶だ! ほら、自己紹介しなさい晶」 保に言われ晶は 「工藤晶です 宜しくお願いします」 と挨拶した 「……工藤?」 「俺の戸籍に入ってるんだよ」 なっ!晶!と保が嬉しそうに言う 暫くすると晶子が夫を連れて保のマンショにやって来た 二人を迎え入れ、保は晶を膝の上に乗せた 「真紀、お前のお母さんだ」 保の言葉に…… 真紀は唖然となった 隆也は…… 「その子は真紀の弟なのか?」 と問い掛けた それには答えず無視をする 「晶子さん、貴方の息子に間違いないですか?」 保の言葉に晶子は 「ええ。真紀に間違いないです…」 と答えた 真紀はそっぽを向いた 保は、真紀を見て 「ガキ……」 と揶揄した カッと怒りの瞳を保に向けた そこには背筋まで…… 震える冷徹な瞳があった 昔……真紀を見ていた瞳はなかった 「お前の父親が浮気して勝手にお前を連れ去ったのに 父親に懐柔されて……憐れだな」 「何も知らない部外者は黙ってろ!」 保は、晶をソファーに置くと真紀を殴り飛ばした そして晶を膝の上に乗せた 「俺のマンションで喚くな!」 保が怒りを露わにした 隆也は兄が……怖かった こんな瞳を向ける人じゃなかった 保はフンッと鼻で嗤うと 「隆也、恋人の矯正位しろよ!」 と言い捨てた 「何も知らねぇガキがつけあがりやがって……」 晶を見る目は優しく…… 愛に満ちあふれてるのに… 真紀と隆也を見る目は…… 誰よりも冷酷で突き放していた 「今日、晶子さんを呼んだのは、こんなバカを見せる為じゃない!」 晶子は哀しげに…… 瞳を伏せた 「保さん……隆也が俺を連れて来ると思った?」 真紀は保に問い掛けた 「想ったぜ! 隆也は真紀を盗られない確率が出来たなら、真紀を連れて来るとな」 保が嗤う 悪魔の様な嗤いだった 晶は、そんな、悪魔の膝の上で幸せそうに座っていた 「ガキはさ、否定してするのが商売だ まさかな……25になった晶よりガキだとは想わなかったけどな 俺の見込み違いだった どうせ、ろくに仕事もしねぇだろ?」 痛い所をズバッと突っ突かれた 「世の中のせい 母親のせい お前の口癖だよな?」 「……うるさい」 「俺の晶は誰よりも努力して俺の会社に入ったぜ 兄のおめぇは……ニートかよ?」 揶揄して嗤われると…真紀はテーブルの上のお茶を晶に向けて投げ付けた さっと保が庇って…… 保がお茶の中身をかぶった 「俺の晶を傷付ける奴は許さねぇぜ! 例えおめぇでもな真紀!」 兄の瞳が怒りに染まるのを隆也は見ていた 隆也は、兄に謝った 「兄さん……すみませんでした」 「おめぇは真紀を甘やかした 真紀は楽だからな、お前に救いを求めた 俺は真紀が見るたびに違う男を連れて歩いているのを何度も見た 他に行かれるなら……殺れよ隆也 見ないフリして誤魔化すんじゃない!」 背筋まで凍る瞳で言われた 「兄さん……」 「晶子さん、貴方の息子は心底クソですが この辺で叩き直す必要がある ですから良い機会なのでお呼びしました 真紀は知るべきです 母は今も真紀の心配をしていると! 身勝手に世を恨んで生きていたら、そのうち誰にも見向きもされない奴になる 他に行くなら捨てろ こんなクソ、そのうち誰も相手しなくなる 最初はちゃほやしてもな…… 中身のないクソじゃ……捨てられる 最後の砦は隆也か? この男は自分に惚れてる? でもな、そろそろ会社から結婚しろと言われねぇか? 親からも結婚しろと言われねぇか? どうするよ?隆也」 「………兄さんは……」 「俺?俺は5年前晶の両親に貰い受けた 養子縁組までさせてくれたのは、俺の上司だ 俺は恵まれていた 俺が危篤になっても、晶は家族だ 病室にも入れる 晶が危篤になっても然り 俺らはなくしたくないからな 努力した 努力の先に俺らは立ってる!」 「………凄いよな……兄貴は……」 隆也は力なく呟いた 「隆也、そこにいる晶子さんは真紀のお母さんだ」 隆也は晶子をみた 「工藤保の弟の隆也です 宜しくお願いします」 隆也は、丁寧に挨拶した 「真紀と晶は兄弟だ」 「…………みたいですね……」 「俺の晶の方が可愛いけどな」 保は、そう言い晶に口吻た 専務補佐に昇進した…元部長が…… 「こらこら工藤……」 と窘めた 「そこにおみえになるのは 晶子さんの御亭主 俺の元上司だ 晶のお父さんだ」 真紀は……母親を見ていた 新しい亭主は…… 父親と真逆の…… 大人しい温厚な男だった それを見るだけで……解った 父親は……父としても夫として最低な男だった 真紀はがっくし肩を落とした 昌子が 「真紀、私を恨むなら恨めば良い…… 貴方を連れて出られなかった私の所為だから… でも恨みに囚われないで… 真紀は、真紀の好きに生きれば良いのよ」 と離れて暮らして来た息子にやっと言葉をかけた 「……母さん……」 真紀は泣いた こんなにもこの人は優しく…… 家を出た時と変わらなかった… 恨んで…… 恨んだフリをした でないと壊れてしまうから…… 「専務補佐、バイトに使ってみてはどうです? 義理とは言え息子です 今人手が足らないんです、丁度良かったじゃないですか!」 工藤保は……黒い羽をバサバサ羽ばたかせ 嗤っていた 「……兄貴……」 30で部長職に就いていると母親が言ってた エリート街道まっしぐらの兄は…… 兄弟の中で一番の期待の星だったのに…… 隆也の中の兄のイメージがグラグラと崩壊してゆく… 容赦のない悪魔……なればこそのスピード出世なのだろう 自分にない部分 それは冷徹になりきれない 保が男と結婚してたわよ と母親が笑って電話してきた 男と結婚したというのに…… 母親は笑っていた 貰ってくれる人がいて良かったわ と笑っていた 自分だとそう言う訳にはいかないだろう…… 兄が羨ましかった だから兄がどんな生活してるか見たかった 相手はどんな奴か見たかった 真紀を連れて行ったのは…… 本当に……未練はないのか知りたかったのと…… 心の何処かで…… 兄に対して優越感を持ちたかったからだ… それら総て……砕かれて…… 粉々になった 兄には叶わない…… 専務補佐は真紀に名刺を渡した 「バイトに来る気になったら連絡下さい 工藤が今権限があるので、彼が何処かへ配置するでしょう」 「………保さんが……?」 「彼は若くして部長職に就いてる 晶は正規社員として彼の部下として働いてる」 部長職に…… 遠い存在に感じた 「隆也!話はもう終わりだ! 帰ってくれないか? 実家の両親も諦めてくれた 俺らの生活に介入するなら……潰すからな!」 今後一切、介入するな! と宣言した 社会的な地位も名誉も手にした保からしたら 弟など潰しにかかれば容易いと宣言されも同然の言葉だった 「……兄貴……世話かけた」 「手綱も絞められないなら、乗り捨てるしかねぇぞ!」 「……解ってる…… 真紀が他の男と天秤に掛けてるのも知ってる…… 会社も……世間も煩くて…… 兄貴が羨ましかった……」 「俺は努力したからな! 努力した先にいる! 諦めなきゃお前も、努力した先に立ってられさ 今踏ん張らないと、何もかもなくすしかないぞ隆也」 「………兄貴……」 隆也の置かれた立場を理解して言葉にする まさに……その通りだった 隆也は足掻いていた 何もかもおもいどおりにならない……現状に…… 兄に背中を押して貰えば…… 歩き出すしかなかった 隆也は保に詫びて、真紀を連れて帰って行った 専務補佐も昌子さんを連れて帰った 静まり返った部屋に 保と晶は二人になった 晶は……兄を見る保の、瞳を見ていた あの日……兄を見送った瞳はしていなかった 冷徹な……会社で部下を見る瞳をしていた 心底……愛してるのは晶だけだ… 保の言葉を疑った訳じゃ無い でも未練は……残ってるんじゃないかって…… 心の何処かで想っていた 保の瞳は誰よりも雄弁だ 「保サンは兄さんが浮気してるの知ってたの?」 「あぁ。街で何度か見掛けた 見掛けるたびに相手が違う しかも最近、スパンも短くなってる 内側から輝かない人間は捨てられるのも早い 弟が何時までも傍にいるからな…… 何もかもなくしても隆也がいると好き放題 それが見て取れた」 「あの二人は長いの?」 「アイツらは高校の時から付き合ってる 腐れ縁だろうな 真紀は何を無くしても隆也は無くならない…と思ってるんだろ? ここ最近は……取っかえ引っかえ……時々見掛けた まぁ、俺に関係ないからな放っておいた 晶がするなら息の根止めるけどな」 「保サン、俺は浮気はしないよ」 「当たり前だろ? こんなに愛してるのに…… お前をちゃんと愛して抱いてる セックスも手を抜かず、俺は頑張ってるからな! 夫の鏡と言ってくれても良いぞ」 晶は笑った 「こら、そこは笑う所じゃないだろ?」 「実家に言えば隆也に話は行くと想ってた アイツ等は親にも他にも内緒だからな 行き詰まるしかない しかも恋人と呼べる奴はクソで 働きもしないで……自堕落に金持ちの男を引っかけて捨てられて…… 恋人ならな殴り倒しても……直せ……と思ってたんだ 俺を羨ましいと……妬む暇があれば その先へゆく努力をしろと思った 俺等は努力したからな、その先に行けた そろそろアイツ等も知るべきだから呼んでやった 後、昌子さんが……真紀を想って悔いてるのは……胸が痛いからな ここいらで、片付けとこうと想ったんだ」 「保サンは優しいね」 「だろ?悪魔とか言う奴がいるけどな」 保は笑った 「会社ではね……容赦のない悪魔…だけどね」 「お前には手を抜いてる」 晶は、絶対に嘘!!だと思った 「晶、愛してる」 「俺も愛してるよ保サン」 「永遠に一緒にいような!」 「うん。保サンと一緒のお墓に入る」 保は晶を抱き締めた 「晶しか見ない」 「うん。俺だけ見て…」 「晶、寝ようか 明日もお前はハードだそ!」 「……手、抜いてるんだよね?」 保は笑ってベッドへ向かった 晶は保を追って寝室へと向かった

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