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我 逝く先に

我逝く先に……お前がいれば良い 命をかけて護る 命をかけて生きる 俺は自分の聖域を護り お前も護ると決めたんだ! 【出逢い】 堂嶋正義の父親、正直は所謂議員秘書をしていた 二階堂隆光の第一秘書として仕えていた 実直な男は家庭を大切にするタイプではなかった 秘書として誇りと自信を持った父の背中は大きかった ある日、そんな父親が小学生位の男の子を連れて帰って来た 父は帰るなり家族に 「この子は私の子だ……」 と告げた 母は…… 父親の愛人の子を育てる気はない! と、父を責めた 父は何も言わず… 男の子を自分の戸籍に入れた 名を「幸哉」と言う 両親の間には……… 埋められない亀裂が走っていた 幸哉が来る前は……それなりに幸せな家庭だった 冷え切った……こんな家庭ではなかった 母は離婚を考えていた そんな頃、父が仕える議員が汚職で摘発された 『秘書が全部やった事だ!』 と議員は言った 父は連日連夜 執拗な取り調べをされ……… 冬の寒い朝 遺体で発見された 車に排気ガスを引き込み 絶命していた 享年………54歳だった 正義は父の遺体を虫螻みたいに扱われ…… 悔しくて泣いた 何故? 何故なんだ? 父は議員に尽くしていた なのに? こんなトカゲの尻尾を切るのが…… 議員なのか! 正義は議員と言う人種を憎んだ 母親は……正義と幸哉を…… 父方の祖父に預けると……行方を断った 正義が16才高校の時だった 幸哉は11才小学生だった 保証人がいないとアパートも借りられない現実に正義は現実の厳しさを知った そして何時も想う 何故?俺等はこんな虫螻みたいな扱いをされなきゃならないのか!……と。 正義は父方の祖父に保証人になって貰いアパートを借りた そしてバイトをして幸哉を養って生活を始めた 【日々】 幸哉は綺麗な顔をしていた ぱっと見、女にしか見えない風貌だった そんな幸哉を狙う輩は多かった 堂嶋正義は地元じゃ名の知れた悪だった 力で負かせ従わせる バイトも幾つも掛け持ち、幸哉を養っていたのは正義だった 幸哉は14才中学2年になっていた 正義は19才大学生になっていた この日もバイトで疲れて家に帰る 家の前のアパートで…… 幸哉は男に絡まれていた 「離して下さい!」 「幸哉君!僕のモノになって下さい!」 男が執拗に幸哉に絡む 正義は男を排除した ギロッと睨まれれば男は身を竦ませた 「二度と弟に付きまとうな! 今度見たらおめぇを追い込むぞ!」 迫力で言われると男は逃げて行った 正義は溜息を着き、幸哉を掴むと家の中に引き摺り入った 「相変わらず御前は男を銜え込むのが上手だな」 正義が嫌味を言う 正義は白のスーツを脱ぎ捨てた ドカッとソファーに座ると幸哉の手を掴んだ 「正義さん……」 幸哉は兄さんとは呼ばなかった…… と言うか正義が兄さんと呼ばせなかった どこの馬の骨か解らぬ輩に兄さんとは呼ばれたくなかった 戸籍の上では幸哉は父の実子だった 認知して自分の戸籍に父は入れた だから……実の弟なのだが…… 正義は認めたくはなかった 幸哉さえ現れなかったら…… 両親は…彼処まで溝は深めなかったからだ…… この日の正義は虫の居所が悪かった なのに帰ってきて……幸哉が男に襲われていた 正義は幸哉を引き寄せた 「お前……この綺麗な顔で……誑かしてるのか?」 幸哉は顔色をなくした そんな事はしていない……と必死で首をふった 「お前の母親が淫売だったんだろ?」 「………知らない……僕は施設で育ったから… 母親の顔は一度も見た事がない……」 施設で……の台詞に正義は切れた 「そんな身勝手な女の子供なんだよお前は…」 そう言い幸哉にのし掛かった 「………正義さん……」 「もう男を知ってるのか?」 幸哉は首をふった 「どの道お前は誰かの手籠めになるしかねぇんだろ? 俺のモノになっておけ! お前の体躯で……俺に詫びろ……」 正義はそう言い幸哉の服を脱がした 白い透き通る肌に……正義の理性は切れた 正義は幸哉の肌に愛撫の跡を付けた そして脚を開き……秘孔を舐めた 「……ゃ……正義さん……やめて……」 泣き叫ぶ幸哉の声は聞く気なんてなかった 強引に膝を割って幸哉の硬い蕾を散らすと…… そこは切れて赤い鮮血を流した 幸哉が初めてだと言う証拠だった 正義は優しく幸哉を抱いた 幸哉の性器は自分でも触れた事のない色をしていた それを正義は握り締めて……射精に導いた 幸哉は正義の手で……童貞を失った ピリッと破れる感覚に……幸哉は泣いて気を失った この日 兄弟という箍が……なくなった 正義は幸哉を離すつもりはなかった 【飛鳥井 康太】 幸哉は……あの日、男に迫られてる所を正義に見つかって激怒されて犯されて以来 続く関係に悩んでいた 正義はホストをしていた 帰って来る正義からは香水の匂いがした 幸哉はそれが嫌で仕方がなかった なのに帰宅した正義は当然の顔して幸哉を抱いた 幸哉など抱かなくても…… 困らないだろうに…… 正義は幸哉を抱く 幸哉には正義の真意は解らなかった 幸哉は正義がバイトしているだろう繁華街を歩いていた 夜で酒の入った大人が幸哉を物色する 「お姉ちゃん……遊ばない?」 と酔っ払った男が幸哉に抱き着いた 幸哉は抗ったが酔っ払いは執拗で… 幸哉は身の危険を感じた その手を掴んだ少年がいた 「おい!オッサン、そいつに触るな!」 少年は酔っ払いに言い放った 子供の癖に子供らしくない子だった 変な威厳があった 酔っ払いは少年を振り払おうと腕を振り上げた 少年は酔っ払いの腕を掴むと見事に弾き飛ばした そして幸哉の手を掴むと、走り出した! 人気のない場所まで来ると、少年は幸哉の手を離した 「オレの名は飛鳥井康太! おめぇの名前は?」 「……僕の名は堂嶋幸哉……」 「幸哉か良い名前だな」 康太と名乗った少年はニカッと笑った 「断るだけの腕もねぇのに、繁華街を歩くな!」 康太はキツい一撃を幸哉に放った 不思議な瞳をした少年だった 見ていたら……どんどん深みに嵌まりそうな瞳だった 「……兄さんがバイトしてたから……」 「おめぇの兄さんがバイトしてたとしても、おめぇは繁華街に脚を踏み込むな! 飢えたハイエナに餌をばらまいてやってるの一緒になる!」 「……解った…もう二度と行かない……」 「自分の身は、自分で護らねぇとな」 「うん。頑張る……」 「うし!それで良い!」 「君は今幾つなの?」 「オレか?オレは今13才」 「中学2年?」 「おう!そうだ!」 「僕は14才中学3年だよ……」 とてもじゃないけど…一つ下には見えなかった これが、飛鳥井康太と堂嶋幸哉の出逢いだった 幸哉は康太に護身術を習った アパートの前で毎晩、護身術を習う それを仕事から帰った正義が目撃する 幸哉は楽しそうに笑っていた それが気に食わなくて…… 「坊主、こんな遅くまで出歩いてと補導されっぞ!」 と嫌味の応酬をする 康太はそんな正義を見詰めていた 視られたなら………… 総て暴かれそうな瞳に……更に苛立つ 正義は何時も幸哉の腕を掴むと、部屋へと引き摺って帰り その晩は酷く幸哉を抱いた 幸哉は泣きながら……正義に抱かれた 好きなのだ……正義が…… 幾ら性欲の捌け口にされても…… 幸哉は正義を愛していた だから抵抗する事なく股を開いた 正義にはそれが解っていなかった…… 哀しい兄弟という枠に嵌まった魂が泣く 康太はアパートを見上げて溜息を着いた 「康太、探しました!」 瑛太が康太を探してやってくる 康太は瑛太のベンツに乗り込み…… 瞳を閉じた 堂嶋正義は最近、幸哉の周りをチョロチョロするウザイ存在に…… 排除してやろうと……手ぐすねを引いていた 幸哉が無条件で懐いているのも気に食わなかった 康太を付け回す 情報さえあれば排除出来ると踏んでいたからだ 康太はそれを知っていた 康太は瑛太を見付けると飛び付いて喜んだ 二人の関係がタダモノではないと踏んだ正義は 正義はそれが康太は彼の愛人なんだと認識した 康太に近寄り 「坊主、お前のソイツの愛人してるかよ?」 と愚弄した 瑛太は怒りによる震えた 「我が弟を愚弄するな! 我が弟は貴様などに愚弄されるべき存在ではない! 貴様など潰すのは容易い!」 瑛太は唸った 瑛太が飛鳥井建設副社長と言う身分なのを知らなかった 正義はそこに来てやっと自分の考えの甘さに気付いた 「我が弟を愛人如きにするなら潰す! お前こそろくな人生を送ってはいないのに 我が弟を愚弄する資格があるのか?」 散々……瑛太に熾烈な言葉を浴びせられた 瑛太は康太を抱き上げると飛鳥井建設大阪支社に入って行った 我が弟…… アイツ……何者なんだよ…… 正義は康太が恐くなった…… 帰宅した正義は幸哉に 「もう、あの坊主とは一切逢うな!」 と念を押した 幸哉に初めて出来た友達だった 幸哉は首をふった 「俺に逆らうのか?」 正義は幸哉を縛り上げ……拷問の様なセックスをした 力任せに犯すだけのセックス……を 幸哉は声も上げずに耐えていた それが正義の嫉妬に火を点けた 嫉妬していたのだ…… 認めたくはないが…… 正義は幸哉に惚れていた 両親を破滅に導いた……存在なのに… ジレンマだった 愛すれば愛する程に…… 囚われて……雁字搦めになって、墜ちる…… 正義だって…… この、想いを……持て余していた 幸哉は鉛が着いた様な体躯を起こして…… 荷物を纏めた 出て行こう…… そう決めた 苦しそうに自分を抱く…… 正義をこれ以上見ていたくなかった… 幸哉には最初から正義しかいなかった 不器用だが、優しい 父が死んだ日 正義はずっと幸哉を抱き締めてくれていた 母親に罵倒されても……ずっと…… 母親は幸哉に何時も辛く当たった それを何時も庇ってくれたのは……正義だった 幸哉の世界には正義しかいなかった 「何処に行くんだよ?」 アパートの外に出ると康太に声を掛けられた 「………康太君……」 「ウロウロ歩くな! 今は危険なんだよ!」 幸哉には何だか解らなかった 「………僕はもう……此処にはいられない……」 「それはおめぇの定めじゃねぇ」 「………え?……」 「孤高の戦士を支えるのが、おめぇの定めだ」 何を言ってるのか解らなかった 「おめぇは今、変革期に来てんだよ! だからオレと出逢った! 近い将来……飛鳥井康太と縁があるから、オレ等は出逢ったんだよ」 この出逢いは当然だと言われたも同然だった 幸哉は康太を見詰めた その姿を正義が目撃して逆上した 手にはボストンバッグを持っていた 幸哉は家を出る気なのは…… それを見れば解った 逆上した正義は幸哉を掴んだ 康太を突き飛ばし…… 幸哉の手を掴んだ 突き飛ばされた康太を支えたのは瑛太だった 瑛太は幸哉を強引に掴かんだ正義の腕を外した カッと頭に血が上り正義は瑛太を殴った 乱闘になる喧嘩になり 幸哉は慌てた そんな幸哉に伸びる手があった 幸哉は薬を嗅がされると…… 連れ去られた 「幸哉!!」 康太は叫んだ! その声で、正義は正気になった 幸哉は黒塗りのベンツに連れ去られた 瑛太は番号を暗記して、秘書に車の持ち主を特定しろ!と電話を入れた 康太は空を仰いだ 「弥勒……力を貸してくれ!」 空に向かって康太は叫んだ 『心配するでない康太…… あの命、散らしはせぬ! 後に康太に必要になる命なれば…… 散らしたりはせぬ!』 と声が聞こえた 正義は唖然としていた 瑛太はそんな正義に 「あの声は弥勒院の御当主の倅殿だ」 「弥勒院……」 正義には全く知らない世界だった 「呪術師だ……此処にいても弥勒院の倅は康太に必要なき者は排除出来る……」 「瑛兄!兵藤丈一郎に連絡を取ってくれ! 後、三木敦夫にも!」 「君が言いなさい!」 瑛太は携帯を康太に渡した 康太はそんな正義を見て 「幸哉の父親を知ってるか?」 と尋ねた 「親父?」 「違う!お前の父堂嶋正直は浮気など出来る男ではない オレを大阪の地に呼び寄せたのは堂嶋正直……だ! 死に逝く時、魂を飛ばして正義と幸哉を頼む…と頼まれた でなくば、オレは大阪の地に下りたりはせぬ!」 正義は言葉をなくした 「坊主、お前は……親父と知り合いか?」 「依頼主だ!堂嶋の資産の全部を使いオレに依頼してきた お前達が何故、母親から捨てられたか知ってるか?」 「………知らない……」 「資産がなかったからだよ! 生命保険も総て、オレに渡して堂嶋直也は黄泉に渡った オレが堂嶋正直の魂は黄泉に渡らせた 本来自殺なら……地縛霊にしかなれねぇけどな…… 主に仕えし忠実な人間が野垂れ死ぬのは許せなかった! ここからが本題だ!」 康太は堂嶋を射抜き 「堂嶋幸哉の父親は堂嶋正直じゃねぇ! アレの父親は二階堂隆光の子だ」 「………っ!!……」 父は……何も言わずに逝ったと言うのか? 責められ家庭が壊れても…… 主の為に尽くし…… 排気ガスを引き込み……死んだというのか? なんと無念な生涯だったのか? …………正義は初めて……涙を流した 自慢の父だった 寡黙だが…… 主に仕える実直な……父だった 「二階堂隆光にとったら愛人の子の存在は消したい位に邪魔なんだよ 堂嶋正直はそれを危惧していた 下手したら兄弟が寝静まった時には押し入られたら… 我が子の正義も殺されてしまう… 堂嶋正直はオレに床に頭を擦り付けて頼んだ! 主に仕えた人生に幕を閉じる…… 死した後に我が子を狙うなら……容赦しなくて良い 堂嶋正直はオレにそう言った! だから、オレは大阪の地に降り立った 約束は完遂する 無傷で幸哉を返して貰う 傷が着いてたら……それはもう焼き捨ててやるしかねぇな……」 『…………康太……それだけは辞めてくれ! お前を貶めるなら……我がやる』 「………弥勒……解った手は下さない……」 『ならば逝け!第一埠頭の5番倉庫だ』 弥勒に場所を教えて貰い、康太は正義を掴み瑛太のベンツの後部座席へと乗り込んだ 【再生】 拉致された幸哉は縛り上げられていた ナイフを持った男が幸哉を刻む 「この美しい肌を一度切り裂いてみたかったんだ」 幸哉にしつこく交際を申し込んでいた男だった 幸哉を全裸に剥いて男は幸哉の肌に勃起した性器を擦り付けていた 「仕事だから悪く想うなよ 殺す前に楽しませろ」 幸哉の体躯を触る…… 幸哉の勃起しない性器を男は舐めた 性器をナイフでなぞる 幸哉の白い肌を切り裂いた 血で染まる幸哉は…… 死ぬ覚悟をした…… 何故こんな理不尽な目に合わねばならいのか? 幸哉は泣いた…… 首をナイフが掠める 男は幸哉の秘孔に指を入れた 「綺麗な肛門してるじゃん 切り裂いて腸を出してやろうか? 腸も綺麗なんだろうな……アンタなら」 男は狂っていた 狂った男の狂気に幸哉は死ぬしか考えていなかった 神様…… 何も望みません…… ですがこんな………死に方は嫌です…… 殺されるなら……正義さんが良い 正義さんに殺して貰いたい…… 幸哉は瞳を閉じた 切られた所から血が溢れた 体躯から血が抜けて行く 死ぬんだ…… 幸哉はそう思った その時…… 扉を突き破って車が突っ込んできた 車から下りると康太は車から飛び出した 「坊主!危ないって!」 正義が止めるのも聞かずに康太は男に飛び掛かった 男は子供が何を息巻いているのか 笑った 康太は飛び上がると、的確に男の鳩尾を蹴り上げた 康太よりも大きな男が一瞬にして……床に崩れ落ちた 康太は男の顔を踏み付けた その顔は……血も凍る程に残忍で…… 破壊神の如く……恐怖を抱いた 「オレが蹴ればおめぇは確実に即死だな」 ニヤッと嗤う 動こうとするとグイッと力を入れた 蹴られれば確実に……首は……一回りするだろう それを止めたのが瑛太だった 「こらこら、殺したら価値がない」 「コイツはトカゲの尻尾だ! 堂嶋正直みたく切り捨てたら意味のねぇ、虫螻だ」 「なれば本陣に出向けば良いのです」 「出向くぜ! 正義を連れて、三木敦夫と兵藤丈一郎を連れてな トドメを刺しに行ってやる!」 「なれば、この虫螻は警察に託して 幸哉を医者に診せねばなりません!」 康太は幸哉に近寄った 震える幸哉を康太は抱き締めた 「幸哉、幸哉!」 康太が名を呼ぶ…… 幸哉は目を醒ました 「康太君……此処は危ないから来ちゃダメだよ……」 「オレは助けに来たんだよ!」 康太はロープを噛み切ろうとした 瑛太がライターで焼き切った 腕を摩り、康太は用意していたブランケットで幸哉を包んだ 「瑛兄、義恭、呼んどいてくれた?」 「ええ。ホテルの部屋に待機してます」 瑛太は正義に殴られ……口に痣が出来ていた 正義も瑛太に殴られ……痣が出来ていた 二人は顔を見合わせて笑った 瑛太は「何時か仕返しします!」と言い捨てた 正義は「甘んじて受け止めよう」と頭を下げた 瑛太は、幸哉を抱き上げると車へと導いた ベンツのナンバーは凹んでいた 「………康太、ベンツ買って下さいね」 「………大人になったらな!」 「なら楽しみに待ってます!」 三木敦夫の息の掛かった警察官が駆け付けて来ると、瑛太は犯人を警察官に引き渡し少し凹んだベンツに戻った 瑛太は後部座席に正義を乗せるとその横に幸哉を乗せた そして助手席に康太を座らせると車を走らせた 車を走らせる瑛太が 「今日は薬飲みましたか?」 と尋ねた 康太はバツの悪い顔をした 「……飲んでねぇ……」 その台詞に正義は康太が何処か悪いのか尋ねた 「坊主は何処か悪いのか?」 「………失恋して栄養失調で入院してのですよ 春休みは入院で潰れたので……大阪まで気分転換に連れて来たのですよ」 失恋して………栄養失調…… 嘘みたいな話だった 幸哉は康太に「……康太……何時か両想いになれる様に、僕祈ってるよ!毎日祈ってるから!」と励ました 「…………祈られてもな……無理だと想う……」 康太は淋しそうに笑った 正義は「名前は?」と聞いた 「誰のだよ?」 「お前の片想いの相手の名前だ」 「…………榊原……伊織……」 「何時か……お前の伴侶として出逢える日を夢見てる!」 正義は心からそう思った ホテルに着いてホテルの従業員にガードされて瑛太は康太達を部屋へと連れて行った 部屋に入ると飛鳥井家の主治医、飛鳥井義恭が待ち構えていた 「ベッドに寝かせろ!」 義泰はベッドに寝かせた幸哉を診察した 不安そうに幸哉を見る正義をソファーに座らせた 「正義、話がある」 「……何だ?」 「おめぇは幸哉を愛してるだろ?」 康太は単刀直入に聞いた もう認めるしかなかった 康太の……嘘など暴いてしまう瞳に視られたら… 隠し事など通用しないのは、その瞳を視れば解った 「あぁ……愛してる……」 「だろうな…お前はホストをしてた お前を欲しがる客は金を積み上げてお前を欲しかった なのに、お前は幸哉しか欲しがらなかった 欲望のまま幸哉を犯した…… それが嫉妬だと気付かぬまま幸哉を抱いた 両思いなのにな……焦れったいな オレなんて……アイツの視界にすら入れねぇ…… アイツはオレを見ねぇかんな…… オレは……アイツを見るのに…… アイツはオレを冷たい瞳で見るんだ…… オレは…飛鳥井康太にだけはなりたくなかった…… アイツに愛されるなら……オレは……道路に生える雑草でも良かった……」 康太は涙を流しながら…… 辛い胸の内を聞かせた 素直になれない正義に…… 無くしたくないなら認めろ…… と教えているのだ 正義は康太を抱き締めた…… 「すまん、俺が言わせた……」 康太は涙を拭くと正義に向き直った 「正義、力が欲しいか?」 「………力があれば……何時もそう思う」 「なら、お前に力をやろう!」 康太は意図も簡単にそう言った 「お前を三木敦夫と兵藤丈一郎に預ける 暫くすると勝也が安曇総太郎の婿になって政局に打って出る 安曇勝也は叩き上げの政治家だ お前は勝也の懐刀になれ!安曇総太郎には話しは通した 今政界で力があるのが兵藤丈一郎だ それに仕えるモノなれば安曇総太郎は受け入れる 歯を食いしばって……お前は孤高の戦士として生きてゆけ!」 早々たる名前に……正義は息を飲んだ 「幸哉は連れて行け お前の地元は、此処だ! 力を付けて此処に還って来い!」 康太はそう言うと分厚い封筒を正義に渡した 「バイトは辞めて東京に旅立て その前に幸哉をちゃんと愛してやれ」 「約束する!」 「この封筒には当座の金と東京までの旅券が入ってる 向こうに行ったら住む部屋も用意してやる」 「………お前は何故? 何故…俺に……してくれる?」 「お前の父、堂嶋正直の意志だからだ! 命を懸けて魂を飛ばした堂嶋正直と約束してやった 二階堂隆光を倒して潰すのはお前の息子だ……とな! だから力を付けろ! それがお前の父の無念を張らす供養になる!」 正義は康太に頭を下げた 「……力を持ったら…何時か坊主の役に立とう!」 正義がそう言うと康太はニカッと笑った 「オレが大人になるまでに、三木敦夫の倅が議員になる だからな、お前の世話にる日はねぇと想いたい」 ステージは用意しても…… 力にならなくて良いという 無償の愛だった 飛鳥井康太がくれる無償の愛だった…… 父が頼んだかも知れないが…… それを解らせてくれたのは飛鳥井康太 唯一人だった 幸哉に気持ちも伝えぬまま……抱き続けた 可哀想な事をしてると解っていても……手放せなかった 義泰は手当てが終わるとヒョイと幸哉を抱き上げた 「康太、この男に手渡して良いのか?」 「おう!渡してやってくれ!」 義泰は正義の上に幸哉を置いた 「正義、幸哉は何時も正義さんと話しかしねぇんだ 大切にしてやれ! 泣かすなら、奪いに行くかんな!」 「大切にする……」 「うし!幸哉、正義もお前を愛してるってよ! 良かったな! 素直になれ! 解ったな!」 辛い片想いをしている康太の言葉は重かった 幸哉は頷いた 「今夜、このホテルに泊まれ! 明日の朝まで借りて精算しとく! そしたら家に帰り荷物を纏めろ!良いな!」 「……ありがとう坊主……」 「今度逢ってもオレには声を掛けるな!」 康太は言い捨てた 「………何故?……」 「政局に入れば自ずと解る 飛鳥井家真贋……それを意味するモノが…な」 康太は言い捨てると背を向けた その背を瑛太が抱き締めた 「お前は私の愛する弟だ 誰にも何も言わせはしない!」 兄によって支えられ…… 康太は還って行った 部屋には幸哉と正義が遺された 正義は幸哉を抱き締めた 「………愛してる幸哉…」 と言葉にした 幸哉は信じられなかった 「………嘘……正義さんが?」 「……俺はお前が可愛かった だが、お袋の事を想えば……辛く当たったな 許してくれ……幸哉……」 「………正義さん……気にしなくて良いよ 僕は…施設で育ったから解らないけど、ふしだらな女だったんだよ……きっと……」 正義は胸が痛かった そう責めて来たのは正義だったから…… 正義は幸哉を抱き締めた その時、康太から貰った封筒がベッドの下に落ちた 正義は拾おうとして封筒の中から出た紙の存在に気が付いた 正義は封筒の中を全部出した 封筒の中には帯封に『取り敢えず』と書いた200万円が入っていた そして写真が数枚と手紙が添えてあった 正義は写真と手紙を幸哉と共に見る事にした 『写真の女性は幸哉の母親の加藤幸乃さんだ 彼女は大学時代に二階堂隆光と出逢って恋に落ちた だが、二階堂には既に妻も子もいた 二人は所謂不倫の関係だった 幸乃は本気で二階堂を愛していた 二階堂は……本気じゃなかった 幸哉を孕んだ時、二階堂は幸乃に堕ろせと迫った 隠し子など政治家として致命傷だったから…… 幸乃は二階堂から姿を消して幸哉を産んだ 命と引き替えに……幸哉を産んだ 幸哉の行き先だけを夢見て……死んだ 幸哉の存在は二階堂には脅威だ だから堂嶋正直は施設に幸哉を隠した だが二階堂は幸哉の存在を知っていて…… 消そうとしていた だから堂嶋正直は幸哉を実子として戸籍に入れた 二階堂の為じゃない 加藤幸乃さんの……為にそうした 正直はゴミくずみたいに捨てられた幸乃さんを不憫に想っていた 主に仕える身なれど……主の罪作りは許せなかった そしてひっそりと幸哉の命を守った 二階堂はそんな堂嶋正直が目の上のタンコブだった だから汚職の総ての罪を堂嶋正直になすり付ける …………殺された 死に追いやられ死ぬ様に仕向けられた 堂嶋正直は飛鳥井家真贋を頼って来た じぃちゃんは受けなかった だからオレが引き受けてやった それが総てだ 堂嶋正義 お前は力をつけろ! 幸哉を二階堂から守りたければ力を手に入れろ そのステージは用意してやる 3日後、横浜に来い まずはそこから初めて行け _______飛鳥井康太   』 と書かれていた 正義は幸哉に母親の写真を握らせた 幸哉はその写真を握り締めて……泣いた 正義は想う あの子供には最初から勝てる気がしなかった 何者なんだろう? 飛鳥井家真贋……って何だろう? 解らない事ばかりだった 唯 解るのは…… 逝くべき道を飛鳥井康太が指し示していると言う事だけだった 正義は幸哉の肩を抱き締めた 「俺に着いて来てくれ…」 正義の心からの言葉だった 「………正義さん……」 「…嫌か?お前を無理矢理抱いた奴なんて嫌か?」 「……嫌じゃないよ でも……正義さんには沢山いるじゃない」 「………沢山?何が?」 「正義さんを支えてくれる人……」 「………幸哉……お前誤解してる…」 その時正義の携帯が鳴り響いた 正義が電話に出ると 『ちょっくら幸哉に変われ』 と言われた 康太だった 正義は幸哉に携帯を渡した 『幸哉か?』 「はい……」 『何も言わずオレの言う事を聞け? 出来るか?』 「……はい。出来ます」 『正義はこれからも側には誰も寄せ付けねぇ 今までも正義は誰も必要としなかった 正義にはお前だけいれば良かったんだ 正義は孤高の戦士として生きてゆく その道の道連れはお前だけだ お前が孤高の戦士を支えろ! 出来るな?愛してるなら絶対に離れるな!』 「解った!康太君ありがとう」 康太は、ならな!と電話を切った 幸哉は携帯を正義に渡した 「坊主は何だって?」 「正義さんを受け入れろ……って そして何があっても離れるな……って」 「良く解ってるな!坊主は」 正義は笑った 笑って幸哉を組み敷いた 「正義さん?」 「もう黙れ……」 正義は幸哉に口吻た 幸哉はその口吻で意識が朦朧となった その間に服を脱がされ身躯を愛撫された 幸哉は喘いで正義に背中に縋り付いた そして股を広げて正義を受け入れていた 後は……甘く鳴かされて… 正義だけと何度も言った 正義は何度も幸哉を抱いた 想いの丈を総て幸哉に注いで愛してる…… と言い続けた 心も身躯も結ばれた二人だった 【力】 堂嶋正義は康太に言われた通り上京して来た 手紙に書き記された地図を辿り 正義と幸哉は大きなお屋敷の家のベルを鳴らした 執事が出迎えてくれて通された応接間は 正義が見た事のない程の豪華な応接間だった 「只今、康太様をお呼び致します」 執事はそう言い正義と幸哉の前に紅茶とマカロンを差し出した 暫くすると老年の男性が笑顔で康太を抱き上げて応接間に入って来た 「正義、待たせたな! オレは此処に住んでる訳じゃねぇかんな!」 正義には意味が解らなかった 康太を抱き上げて入って来た男性はソファーに座ると名刺を正義に渡した 正義は名刺を貰って言葉をなくした よく見れば国会中継で必ず映る顔だったから…… 「兵藤……丈一郎……」 丈一郎は笑った 「私の顔はご存知かな?」 正義は頷いた 「君を預かる事になった 何時か君が私の孫を預かってくれると康太は言った ならば、今布石を打つ為に私が君が育てる」 康太はガツガツとマカロンを食べていた 「丈一郎、敦夫は? 繁雄にも顔見せときたいのにな…」 康太が言うと丈一郎は康太の頭を撫でた 「こっちに向かっている少し待って下され」 「丈一郎、布石を打て この男は安曇総太郎の婿養子の片腕に収まる男だ」 「私の政治生命最後の仕事にさせて戴きます! 敦夫も然り!最後に貴方へ返す布石を打って逝きます」 「丈一郎……逝く先は不安か?」 「昭一郎では……逝く先は知れておるからな…」 「大丈夫だ!貴史がいるかんな! 貴史が御前の跡を継いで国政に打って出る」 「………貴史を頼むぞ…康太…」 「おう!その為にオレは今布石を打っている お前に変わってオレが兵藤貴史を稀代の政治家にしてやんよ」 丈一郎は康太に深々と頭を下げた 暫くして三木敦夫が倅の繁雄を連れて兵藤の家にやって来た 三木敦夫は康太の姿を見ると深々と頭を下げた 「敦夫、悪かったな」 子供の言葉に有名な政治家が平伏す 「いいえ。呼ばれれば三木、何処へでも参上仕ります」 「敦夫、この男は次代の国会を御前の倅と共に生き抜く男だ 御前の倅はオレが貰う!それは変わってねぇ この男は安曇勝也の懐刀に収まって生きる男だ 次代の国会を支えて生き抜く男になる 育ててくれねぇか?」 三木敦夫は康太を見ていた 「………安曇勝也……安曇総太郎の婿養子になるか?」 「おう!アイツは次代の総理になる男だ それを支えるのは、この男だ 繁雄と正義は国会の要になる それを掻き回すのが貴史だな  兵藤貴史と言う政治家は祖父譲りの政治家になる それがオレの描いた絵図だ! もう軌道に乗せたからな違える事はねぇ」 兵藤丈一郎も三木敦夫もその言葉に頷いた 兵藤丈一郎は康太に 「我の命が尽きる瞬間まで、その男を育てよう」 と約束した 三木敦夫も康太に 「私も総てを懸けて、その男を育てましょう」 と約束した 康太は繁雄を見た 「繁雄、堂嶋正義だ! 覚えておけ!」 「解った!」 繁雄は頷いた 康太は姿勢を正すと兵藤丈一郎と三木敦夫に深々と頭を下げた 「二人に頼みがある 幸哉を守ってくれねぇか? 正義が力を手にいれるまで……幸哉を守ってくれ」 康太が言うと丈一郎は 「誰かの落とし胤ですか?」 と尋ねた 「………二階堂隆光だ 幸哉を消して……亡き者にしようとした…」 丈一郎は瞳の奥を光らせた 「この場で……まさか、そんな愉快な人間の名前を聞くとは想いもしませんでした」 と言い嗤った 三木敦夫も唇を吊り上げ嗤った 「ええ……二階堂隆光ですか 私達が生きてる間は……手出しはさせません ですから私達が……死ぬ迄に力を手に入れなさい!」 堂嶋正義を射貫きそう言った 正義は「何としてでも力が欲しい」と言い切った 康太はアタッシュケースを堂嶋正義に手渡した 「これは?」 「この前渡した金でスーツや身の回りのモノを買え そしてこの金で当面生活しろ! 秘書になれるまでは金も少ない 幸哉を学校に入れてお前が身を立てるまでの金だ オレに出来る金額はそれ位しか無理だかんな 少なくて悪いが……遣り繰りしてくれ 真贋になれば、纏まった金を動かせるが…… 今は一千万以上の金は無理だかんな……」 「………何で……そこまでしてくれるんですか?」 「御前の将来を狂わせたくねぇかんな! 敦夫も少し位援助してくれる 敦夫も将来倅が生きて行く上で必要な男なら投資する 丈一郎もそうだ! 貴史が将来、必要とする男なら援助は惜しまねぇ お前は将来の政局を担う男だ 狂わせたくねぇんだよ!」 そんな先の将来の為に……… 正義は信じられなかった 「正義、お前も政治家になるなら、飛鳥井家真贋と言う存在が嫌と言う程に解ると想う オレは若くして飛鳥井家真贋を引き継ぐ お前が政治家になる頃には………オレは飛鳥井家真贋だ 多分……国会で逢う事になるかも知れねぇが…… 今後一切……オレに話し掛けるな! 解ったな!絶対にオレと関わるな オレは御前の政治生命を穢したくねぇんだ」 正義には意味が解らなかった だが約束するなら守るしかなかった 「御前達の家はオレが用意した 大阪に基盤を設けるまでそこに住め 後は頼めるか?丈一郎?」 「ええ。総てお任せ下さい 総ては君の想いのままに、完遂します」 康太は頷いて立ち上がった 「お別れだ正義! 幸哉を守って仲良く生きてゆけ!」 「………何故?何故……御前と離れねばならないんだ?」 「定めだ正義……」 「俺は力を手にしたら御前の為に動く お前に返す為に動くと決めている」 康太は何も言わずに笑った 幸哉は泣きながら康太に声をかけた 「もう……逢えないの?」 「幸哉、時々ならな逢いに行く」 康太はそう言い名刺を幸哉に渡した 「何かあったらメールして来い」 そう言い応接間を出て行った 堂嶋正義は叩き上げの精神と教育を兵藤丈一郎に 戦略と政策を三木敦夫に叩き込まれ 政治家としてデビーを果たした 正義を支えたのは幸哉だった 孤高の戦士はどんな苦境にも堪えて、政治家へと上り詰めた 兵藤丈一郎は独り立ちした堂嶋正義を見届けて…… この世を去った 最後の言葉は…… 『やっと肩の荷を下ろせる…』だった 三木敦夫は安曇勝也と堂嶋正義を引き合わせて 安曇勝也の懐刀に収まるとこの世を去った 『やっと役目を終えれた……』 と、眠るように息を引き取った 堂嶋正義は安曇勝也の懐刀に収まり力を付けると…… 飛鳥井家真贋と言う存在が…… 解る様になって来た 黄泉の眼を持つ特別な存在 あまり関わり持ちたくない存在だと……皆、口々に言った だが飛鳥井家真贋が齎す力に…… 皆群がり肖りたいと……天蚕糸ねを引いていた 特別な存在 康太が二十歳を大分前にして…… 飛鳥井家真贋の総てを完全に引き継いだ そのお披露目とも言えるトナミ海運の竣工式 飛鳥井康太は堂嶋正義の目の前に現れた 隣に……役者バリの男前を引き連れて…… 康太がパーティーにやって来た 正義はそれを見ていた 康太も正義を見ていた だが儚げに笑うと……背を向けた その背を影みたいな存在が守った 正義は………その男は…… 康太の片想いの………男だったら……と願った 側には行けない 何時か………役に立ちたい想いならあるのに…… 【距離】 参考人招致……康太は一人で現れた 康太の伴侶の名前は 榊原 伊織 と聞いた 正義は………片想いが実ったんだな…… と泣けて来た 想って…… 想って…… やっと………結ばれた…… 心底……良かったと胸を撫で下ろした やはり想うのは……何時か…… 飛鳥井康太の傍に……行きたい 役に立ちたい…… そんな、想いだけだった 参考人招致で康太の弱点を突く議員を…… 殺したい……と思った 康太は平然と立っていた 何を言われても……凜として前を見据えていた 背負う重さは誰よりも実感していた だけど……彼はまだ……法的に守られる年にある 悔しくて 哀しくて… でも目を反らさずに康太を見ていた 康太は正義と目が合うと優しく微笑んだ そして次の瞬間……身が凍る程の瞳を向けて 戦っていた 口惜しかった その足で国会を、後にした そして大阪に帰宅した 大阪の自宅には幸哉が待ってるから…… 幸哉を、手放さなくても良かったのは…… 康太がいればこそだ でなければ……拉致られた時に亡くしていたかも知れない 正義は幸哉を確かめたかった 自宅に帰ると幸哉は、泣いていた 「正義さん……」 幸哉は、正義の姿を見ると抱き着いた 「………康太君はまだ18だよ? 大の大人が寄って集って……酷すぎるよ…」 「………幸哉…」 「正義さんだけでも守ってくれたらって… ずっと想ってた… 今の正義さんも僕も……康太君がいたから在るのに……」 「幸哉……康太には三木繁雄と言う議員がもういる…」 正義も悔しかった 「……正義さん……康太君にメール送ったら 風邪引くなよ!だって……僕の心配するんだ 僕は康太君を励ましたいのに……」 正義は幸哉を抱き締めた 「幸哉、康太の伴侶の名前聞いたか?」 「………知らない……康太君は教えてくれないから…」 「榊原伊織……だって」 幸哉は瞳を輝かせ正義を見た 「………正義さん!康太君の……」 幸哉は正義に抱き着き泣いた 「あぁ……長い片想いが実ったんだな……」 「何時か……逢わせてくれるかな?」 「何時か逢わせて貰おうな……」 「………正義さん……ごめんね」 「何が?」 「傍で見ていた正義さんの方が悔しかったね 解っていたのに……責めるような事言った…」 「気にしなくて良い お前が康太を大好きなのは知ってる」 「……正義さんが一番だよ」 「当たり前だろ? 康太が一番だったら……太刀打ち出来ない… 辞めてくれ……俺は負けるしかない…」 正義は笑いながら幸哉を持ち上げて寝室へと向かった ベッドに押し倒し服を脱がした 幸哉はなすがまま正義の服を脱がした 裸になり求め合う 「……ゃ……正義さん……大きい…」 下着を脱がせた正義は硬く勃ちあがっていた 最近……抜いてもいなかった だから余計興奮していた 「忙しくてな……抜いてかいからな……」 「僕……壊れちゃう…」 「大丈夫、大きくて気持ちいいって言うから…」 正義は幸哉の身躯に愛撫を施し赤い後を残す そして秘孔に指を挿し込んで中を解した 雪哉の蕾が解れるまで、正義は念入りに舐めた 「正義さん……欲しい……あぁっ……早くぅ…」 雪哉が根を上げるまで……正義は舐めた 忍耐の国会議員……は、自分の欲望は二の次で 愛する雪哉に奉仕していた 「壊れちゃうんだろ?」 「壊れないからぁ……ねぇ欲しい……」 堂嶋は雪哉の脚を抱えると、挿入した ゆっくりと雪哉の中へ入って行く 雪哉は体躯の力を抜いて……堂嶋を受け入れた 「……雪哉……全部入った……」 「一つに繋がってるんだね……」 「辛い?」 雪哉は首をふった 「……凄く気持ちいい…… そして幸せ……正義さんと一つになれて幸せ…」 堂嶋は健気な雪哉に耐えきれなくなり……抱き締めた 「愛してる…雪哉」 「僕も愛してる……正義さん」 欲望の限り堂嶋は雪哉を抱いた 孤高の戦士は、たった一人の少年に癒やされ 羽根を休める 雪哉の存在は大きい 気の休まらない聖戦に身を置き闘う そんな堂嶋に取って唯一無二の存在は雪哉だった 何者にも染まらぬ雪哉 あるがままの堂嶋を優しく抱き締めて 受け止めてくれる そして傷を癒す様に抱き締めてくれる…… 雪哉…… 雪哉……… お前を失わずに良かった…… 汗で濡れた堂嶋の背中を雪哉は撫でた 「正義さん……僕は正義さんから離れる事ばかり考えていたよ……」 堂嶋は驚いて雪哉を見た 「でもね、あの時……正義さんと離れなくて良かったと想うんだ あの時……殺されなくて良かった……って……」 「…………雪哉……」 「飛鳥井康太……彼には返しきれない恩がある なのに彼は………そんなもん犬にでも食わせとけ… と嗤うんだ……」 堂嶋は雪哉を抱き締めた 「………俺も……国会で傍に行こうとしたが……… 三木を使って……『来るな!』と言われた… アイツの傍に……行きてぇのにな…… アイツはそれさえさせてくれねぇ…… 顔色が悪かった……倒れそうな顔してたんだ なのにな……アイツは踏ん張って……成し遂げるんだ アイツの力になりたいと想ってるのにな……」 堂嶋は本音を吐露した 何時か‥‥お前の傍へ行きたい お前の役に立ち お前に返せる日々を‥‥ それだけが幸哉と正義の願いだった 【未来へ】 安曇勝也 現 倭の国の国家現首席 総理の懐刀と言う立場で堂嶋正義は国会議員として存在していた 相変わらず康太は距離を取ろうとする だが堂嶋は安曇勝也が飛鳥井康太の“父”と言う立場を最大限に生かして、傍にいようとするのに協力しつつ 康太の傍にいるポジションを掴み取っていた 幸哉を拉致られ‥‥‥犯され殺されそうになった時 犯人を射殺した康太が怖いと想ったし、この平和な国で犯人を射殺すると謂う事がどれだけ異常なのか‥‥‥恐怖を覚えた だが刑事と共に犯人の部屋を訪れた時‥‥‥ 堂嶋は恐怖と共に幸哉を護る為に、犯人を排除せねばと想った また繰り返されるならば‥‥ 殺した方が楽だと想った 康太は再び奴が幸哉の前に現れる可能性を踏んで、射殺させたのだと痛感した だが康太には、そんな堂嶋の心の揺れが理解出来たのだろう 再び距離を取られ逢えなくなって‥‥ 今、議員として生きる自分を想った 今、自分が在るのは康太のお陰なのだ 幸哉がこうして生きていられるのも、康太のお陰なのだ なのに何故‥‥‥あの時、躊躇してしまったのだろう‥‥‥ 悔いばかり残った 再び揺らされて康太の傍に逝けた堂嶋は心に誓った お前の望む先に必ず逝くと誓おう 前を向いて 確実に一歩ずつ進む その歩みは遅くても確実にお前の望む先に逝けるのならば‥‥ 俺は進もう お前へと続く道を逝くと決めたのだから 我逝く先には、お前がいてくれれば、それで良い 孤高の戦士と謂われても 己は寂しい戦士ではない 共に生きてくれるお前がいるのだから‥‥ 堂嶋は強い足取りで国会へと足を踏み入れた 戦場の場は国会議事堂 人々の想いや願いを背負って今日もまた 堂嶋正義は孤独な戦場へと進み逝くのだった 坊主、お前との出逢いが俺の人生を変えた その責任は取りやがれ! 堂嶋の唇の端は吊り上がり嗤っていた お前が望む先へ逝く 我逝く先に‥‥ END

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