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月に変わってお仕置きよ 【前編】

結婚を目前していた真島央人は 結婚相手に騙されて……結婚資金を持ち逃げされた 騙されて……総てなくし飲んだくれて歩いていた晩 央人は一匹の変な生き物を拾った 暮らせば暮らす程に央人の大切な存在になってゆく だから央人は言った 勝手にいなくなったら 月に変わってお仕置きしてやるからな! 男はそう言い 満月の日 拾った男の子と生活を始めた 狼男?と傷心なサラリーマンとのラブストーリー 【出逢い】 ………ヤバい…… 今夜は満月だった…… 丸い月は見ない 丸い月は見ない…… 見ない…… 見ない…… 甲斐 世良(セラ)は早足で歩いていた ヤバい ヤバい…… 俯いて早足で歩いていると…… ドスンッ 誰かとぶつかった 「痛ぇな……」 その時……セラは見上げてしまった ヤバい…… この日、真島央人(ヒロト)は結婚相手に裏切られて やけ酒を飲んで歩いていた 同じ会社の女性社員と結婚を考えていた と言うか結婚目前だった 職場結婚で同僚も祝福してくれ話はかなり進んでいた なのに………結婚するはずの人は 知らないうちに結婚していた………らしい…… 裏切られてるのに気付かず結婚式場のお金を渡していた 同僚に『お前が結婚するはずの女……駿河商事の専務と結婚式挙げて今新婚旅行中だぞ?』と言われて初めて気付いた 他の奴と結婚式挙げる為のお金を…… せっせと渡していた訳になる 見かねた同僚が……副社長に直訴して…… 女の所業は明らかにされたが…… 何せ今、新婚旅行中なので、仕事に戻ったら話し合いをする事となった 茫然自失……言葉もないとは……この事か…… 何が何だか解らなかった 回りは同情の視線を真島に向けた…… 26年間生きてきて……結婚詐欺まがいの事を……されたと言う訳だ 失意のどん底の真島の前に…… 目の前で……犬に変身する男を見た…… 「……犬?……」 「誰が犬やねん!!オイラは狼男だ!」 真島はまじまじと狼男と言う男を見た どう見ても犬男にしか見えなかった 「……ポチ……」 「違う!失礼な!」 ぷんぷん怒るが迫力はない 真島は着ていたコートを狼男の上から被せた 「顔、隠してろ!」 言われて狼男は顔を隠した 「………何処に行くんだよ?」 「新居……」 誰もいない新居に連れて行く事に決めた 結婚式を挙げたら……そこで新生活をスタートさせるつもりだった 祖母から生前贈与を貰ってマンションを買った 結婚式のお金、500万円は……持ち逃げされた ……と言う訳だった マンションも登記簿見せて……と煩かったのは…… あわよくばマンションも名義を変えて手に入れるつもりだったのだろう…… 『このマンションは親のモノだよ』 と、嘘の登記簿を見せた 女は悔しそうに登記簿をソファーに放った チッ……と舌打ちしたのは聞き漏らさなかった 金金金……金しか興味がなかったのだろう 真島は……狼男を抱き抱えて新居へと向かった 新居につくと電気を付けてカーテンを閉めた 「まだ牙が出てるな」 真島は狼男を膝の上に乗せて牙を見た 真島は牙を触りながら 「ポチ」と呼んだ 「違う、それは犬の名前!オイラは狼男」 「それは名称だろ?」 「うん……」 「名前はポチで良い?」 「……嫌!」 即答されて……真島は質問を変えた 「お前、家は?」 「……あるよ……ボロアパートだけど…」 「仕事は何してるの?」 「朝早くからコンビニのバイトしてる」 「こんな牙…耳もあるって事は……人間じゃない?」 「……だから狼男って言ってるじゃんか!」 「戸籍は?あるの?」 「………戸籍は……その時代に……同じ狼男の世話役の人に用意して貰ってる」 「学校は?行ってるの?」 「………一応……行ってた」 「俺が養ってやろうか?」 「……え?……」 セラは意味が分からないって顔で首を傾げた 「……あんた……ホモ?」 「バイ……でも社会的な立場で結婚しようとしたら……詐欺られた……」 「………こんな良いマンションに住んでるんだもん この家見たら結婚したがる女は多いだろ?」 「だろうけど、俺はもう要らねぇ…… お前、ここに住めよ」 「………エッチする?」 「直ぐにはしないから安心しろよ!」 「こんな満月の夜は一緒にいてくれる?」 真島はセラの頭を撫でてやった 「あぁ、ヤバい時は俺を呼べ!」 「………あんた……変わってるね」 「ん?そうか?耳と牙生えるお前に言われるの…複雑なんだけど?」 真島はそう言い笑った セラは頬を膨らませて拗ねた 「そうなんだけど……」 「お前、立派な狼男になったらゴツイ狼男になるのか?」 今は狼男と言うよりも犬みたいだった 「どうなんだろ? オイラ……狼男と人間の子供だから…… 人間が強く出てるって……虐められてる 狼男じゃないって何時も言われてる」 確かに狼男と言うよりも犬男みたいだった 「親はいるのか?」 「解らない……狼男は群れない種族だから…… 成人したら……独り立ちしなきゃならないんだ」 「何時成人したの?」 「…………日本が戦争してる頃……」 「……お前……幾つ?」 「正式には解らない… オイラ……狼男だった父さんが人間と作った子供らしいから……捨てられて……狼男の世話を焼いてくれる協会の人が育ててくれたから……」 「なら俺よりも長生きするのか…… ならこのマンションはお前にやるよ」 「……変な人だね」 「なぁ、噛み付かれたら狼男になるのか?」 「………それ吸血鬼……」 「そっか……なら狼男は噛み付いても狼男にならねぇのか?」 「噛み付いても狼男にならない…ゾンビみてぇに増えないってば!」 「………なら俺の方が早く死んじまうな…… そしたらお前が一人になるからな……可哀想だなって想ったんだ」 セラは目を見開いて真島を見た その瞳がみるみるうちに涙で揺れて……流れた 「………変な奴……」 「耳と牙が生えてる奴に言われても……って言ってるやん」 真島はホカホカの毛を撫でてやった 柔らかな毛が小犬みたいで、柔らかくて…… 真島はずっと撫でていた それが真島央人と甲斐世良との出逢いだった 【結婚相手】 真島は親子の縁は薄かった 生まれて直ぐに母親を亡くし 父親からは見向きもされずに祖母に育てられた その所為か普通の家庭に至極憧れていた 結婚相手は清楚で大人しい人が良い そんな想いで同僚の女性に結婚を申し込んだ 真島は会社でも浮いた存在だった 親しい人はいない 仲良くなりたい人なんていない 孤立した真島の世話を何かと焼いてくれたのが、結婚を考えた女性だった 真島は恋愛と言うのがイマイチ理解出来ていなかった 親の愛情を知らずに育った所為か…… そんなぬくもりを知らずに来た だが結婚すれば、そう言う想いも知る事が出来る そんな気がしていた 寝る相手には困らなかった 男も女も、夜 街に繰り出せば面白い程に引っ掛かり 節操のないセックスなら困る事なくしていた だが……26になって、虚しさを感じ始めていた そんな時に逆プロポーズされて、真島は結婚を意識した 地味だが入社当時から世話を焼いてくれた女性だった 家庭でも真島の世話を焼いてくれると、期待して決めた結婚だった 結婚が決まって、会社人間に声を掛けられるようになった 知らない人から「おめでとう」と言われて 真島は幸せだった だから何の疑いも抱かずに 「式場の予約や諸々の事は私がやるわ」と言う彼女にすべて任せた そしてお金は払った その挙式が……自分以外に使われるとは想いもせずに…… 500万円支払った それなのに……お金持ち逃げされて…… 結婚も頓挫した 会社内では真島に同情の視線が集まった 真島は……やるせなかった やけ酒でも飲まなきゃ…… やってられなかった だが、その日に狼男を拾うとは想いもしなかったが…… 今になって、あんな女じゃなく狼男で気が楽で良かったなと想っている自分に苦笑した 結婚相手が新婚旅行から帰って来ると、問題は一気に膨れあがり結構大きなモノになっていた 会社の同僚だった女は会社に辞表を出した そして退職金を要求した 詐欺みたいに真島を騙しただろうと言うと、しらばっくれ 証拠を出すと居直って 「お金なら全部新婚旅行に使っちゃった だからないわ!」 と悪びる風もなく言ってのけた 「なら退職金を真島君にあげれば良いんでしょ?」 とまで言う始末で…… 真島は開いた口が塞がらなかった この事件の解決に乗り出したのは飛鳥井康太 とんずら……しようとしてた女を空港から旦那もろとも引っ張って来させた 問題を口にすると「じゃ、退職するわ!退職金用意して頂戴!」と謂いだし 康太は呆れ返った 榊原は女の婿の前に一人の男を紹介した 「彼は相模商事の専務さんです」 相模商事の専務は瑛太位の年でかなりのイケメンだった 「相模静馬です」 相模静馬と名乗っていた男は……顔色を変えた 女は「………どう言う事なのよ!」と男を責めた! 「私は相模商事の専務夫人になれるっていったわよね! 結婚して既成事実作らなきゃ認めて貰えないし…… 自由になるお金もない…… でも認めて貰えれば自由になるお金はあるって…… 嘘ついたの?あんた!」 女は男を責めた 康太は女に「お前も真島を騙して金を奪ったじゃねぇかよ?」と怒鳴った 男と女は警察に引き渡された 男は相模商事の専務の名を語り、幾度も詐欺を働いていたらしく、会社に泣きながら来る女が耐えなかった 相模商事としても被害届を出して訴えるしかなかった その一連の騒動も、やっと警察を関与させられて一段落して胸を撫で下ろした 警察では男の詐欺の方も 女の方も被害者がゴロゴロと出て来た 専務婦人になりたいが為に、何人かの男を騙していたのが解った 女は長年地道に仕事して来て、結婚詐欺に遭った 絶対に結婚したい願望がそうさせたのか…… その男の言い分を聞く為に、金の或る男を捕まえて、その男から金を搾り取った そのターゲットが真島だった 真島は二人が連行されていって…… 馬鹿みたいな現実に……笑えてきた 馬鹿みたいだ…… 一番馬鹿なのは……自分だ…… 部屋には飛鳥井康太と榊原伊織だけが遺った 「真島、退職金は足らねぇからな足してお前にお金を返してやるよ!」 「………ありがとうございます…… 俺……寝取られ男……で、詐欺られた奴なんですね」 どよーんとした真島を康太は視た 「………お前……最近……耳生えてるの……拾った?」 康太は真島を視て問い掛けた 「……え?……あぁ、自称……狼男ですか?」 「それ自称じゃなく狼男だろ?」 「………俺には犬にしか見えませんでした……」 「………闇が深くなって来たからな……余計に犬みたいにしか見えねぇんだろうな……」 「………闇が……そうでもなくなったら……ムキムキの狼男になるのか?」 「………それは無理やろ? ……牙狼と人の間の子だからな……」 「……泣きそうな顔………してたんです 月を見て変身した時に……泣きそうな顔していた その時の顔が……俺の顔とダブった…… だからマンションに棲まわせた 俺が先に死んだらマンションをやると約束した」 「………お前………そいつ……ただの狼男じゃなかったらどうする?」 「どうもしない…… アイツはアイツだと想う どんな姿になっても……アイツの中身までは変わらないって想う」 「………アイツの親父と言うのが………まぁ良いか…… 何かあったら必ずオレの所へ来い!」 「解りました!」 真島は深々と頭を下げると部屋を出て行った 「………牙狼の……を引いて……ですよね?」 「………謂うな伊織……何処に耳があるか解らねぇかんな」 「解ってますけど……闇が深くなると……魔が強くなります…」 「………魔使魔……」 「何ですか?」 「調伏出来る人間……一人だけ思い付くけどな……」 「………誰ですか?」 「………奥が深い因縁があるからな……その時になったら解る……」 そう言われると榊原は何も聞かなかった 確実に闇が濃くなって来ていた 真島は仕事を終えて家に帰るのが楽しくなった セラはお昼、働きに出ていた 働かなくてもいいと言うのに、セラは働いて食費を入れようとした なら食事を作って……と言いセラは家事をやる事になった セラの住んでたアパートは解約させた マンションに入ると早足で家へと向かう 「セラ、ケーキ買ってきた」 「お帰りヒロト! ケーキ!ケーキ!」 セラは真島に飛び付いた 真島はセラにキスを落とした 「お帰りなさいのキスは?」 催促するとセラは真島の両頬を挟んで 「お帰りなさい」とキスした 真島はセラを抱き上げたままリビングに向かった 「もうじき満月だから……家から出たらダメだよ 本当はバイトも辞めて欲しい…… 気になって仕方がないから……」 「……解った……ならバイトは辞める」 「お買い物は俺が帰ってくるまで待ってろ!」 「そうする!」 「後で洗ってやるからな!」 真島はセラが来た日から綺麗に洗ってやっていた 「………最近……体が辛くないか?」 「………え?なんで?」 「お前達……魔のモノは影に敏感だから……な」 「大丈夫だってヒロト この部屋は物凄く心地良いぞ!」 「そっか!ほら、飯食うぞ!」 「オイラ、支度する!」 セラは立ち上がると走って食器を並べに行った 「………ばぁちゃん……影が濃くなってる……」 真島は呟いた このまま影が濃くなれば……闇は深くなる 魔は暴動を始めたら…… 「厄介だよな……」 真島は独りごちた 「ヒロト、準備出来た!」 セラはそう言い真島を呼んだ 真島は笑って「夜もそんな風に積極的だと嬉しいな」とセラにキスした 「………ヒロトのやるのは恥ずかしい事ばっかだから……」 セラは真っ赤な顔をした まだ最期までは犯ってはいなかった 「セラ」 「何?」 「俺に黙って消えたら……月に変わってお仕置きしてやるからな!」 真島はそう言い笑った 女に騙されて……金を奪われ捨てられた なのに……セラがいるとこんなに楽しい あの夜拾って良かった セラがいるから……真島は笑えるんだと想った 「月に変わってお仕置き……って何するんだよ」 セラは慌てた 「そりゃぁ……ゴニョゴニョと……」 「それじゃ解らないってば!」 「お前の下着を下ろして 嫌って言ってもケツの穴を舐め回して 穴が開く程に舐めたケツの穴に、俺のを挿れる」 セラは真っ赤な顔して機能停止した   真島は笑ってセラを抱き締めた 「お前、年寄りの癖にウブな反応するな!」 「年寄りじゃない!」 セラは怒った 「今まで女と犯った?」 セラは首をふった 「なら男と……犯った?」 セラは泣きながら首をふった 「……誰ともやってない…… 誰も……オイラには触りたくないと想う」 「何でだ?」 「………エッチの最中……オイラは意識をなくすんだ…… 気付いたから……皆……血を流して脅えた顔で逃げていくんだ そして二度と近寄らない……」 泣きながらセラが言うと真島は頭を撫でてやった 「泣くな、多分………俺は大丈夫だから……」 「本当に?」 「あぁ、本当だ」 「…………なら……犯る?」 「今は良い こうしてお前と過ごす時間を沢山増やして…… お前と自然に求めあえれれば良いと想う」 セラはうんうん…と何度も頷いた 「でも俺の言い付け護れなかったら…… 月に変わってお仕置きしてやるからな!」 「………それ、いや……」 「なら勝手に出歩くな!良いな!」 セラは何度も頷いた 食事を取って、お風呂でピカピカに洗い上げてやる 湯船に浸かり、浴室から出て 一緒のベッドで眠った それが……毎日の日課になりつつあった セラは長く生きているが、生きるのがド下手クソだ もっと要領良く生きてけば良いのに……と想う まぁ女に騙された真島も生きるのがド下手クソなんだけど…… セラは真島に 「ヒロトは家族いないのか?」と尋ねた 「いない……俺は生まれちゃダメな存在らしいからな……」 「何で?何で生まれちゃダメな存在なんだよ!」 「俺の母親は……俺を産んで直ぐ死んだ…… 親父の後妻に入った女との間に子供も跡継ぎも出来た そうなると先妻の子供ってのは立場も居場所もなくなるんだ…… 疎まれて……見かねた祖母が俺を引き取ってくれた 以来……俺は……関わりなきモノにされた」 「………おばぁちゃま…って…生きてるのか?」 「生きてるよ 祖母が俺の財産の取り分を奪ってくれたから…… こうして働けるし、マンションも買えた」 「ヒロト……オイラはヒロトの家族になる! ずっとずっと!………一緒にいる!」 「本当に?」 セラは頷いた 「ならお前だけ愛す…… お前だけ愛して生きてく 俺が死んだら……お前……後を追ってこい! 上手く後を追えたら未来永劫一緒にいてやる」 「追う!ちゃんとヒロトを追う! だから一人にしないで…… もう……一人は嫌なんだ…… 本当は一人は嫌なんだ…… 一人になりたくねぇんだ……」 セラは泣きながら真島に訴えた 「ならずっといような! 約束だぞ?」 「約束する!」 「破ったら……お仕置きだからな!」 「……うん……約束する」 真島はセラを抱き締めた 出会えた奇跡に感謝したい程に…… セラの存在は大きかった 【始まり】 真島家の後継者を決める席に、真島津島は家長として中央に座っていた 真島津島は親族に初っ端から爆弾発言をした 「真島は魔を使って魔を祓う家業を生業にしておる 一族の者よ!それを努々(ゆめゆめ)忘れてはおらぬよな?」 真島家の後継者と謂われる真島津島の一人息子の君津は「解ってますよ母さん」と母のご機嫌を取った 「真島家後継者の神器、一族の後継者に渡す! それを手にしたいのであれば、力を示されよ!」 津島はそう言い捨てた 「無論です母さん 我が息子、二人はどちらも後継者に相応しい」 「はぁ?お主は寝言を言っておるのか?」 「………母さん……今どき魔を祓う家業など流行りません……真島家の資産を運用して莫大な資産を生む努力が必要なのです!」 息子は……人の心を手放して守銭奴に成り下がった 「真島家の資産は後継者にしか継承されぬ 資産を手に入れたいのであれば、後継者の試練を受けるが謂い!」 何人も後継者の試練を受けて命を落とした 命を落とさないまでも気が触れて…… 人生を終える者ばかり出た 「お前の息子には魔を祓える力はない その女は正当な血筋ではないからな!」 津島は言い捨てた 君津の妻の淳子は「私が正当な血筋ではないとしたら誰が正当な血筋だと仰るのですか?」と食って掛かった 「真島央人が母 秋津」 「はぁ?死んだ女に継がせるおつもりですか?」 「継がせる訳にはいかない だからお主の息子達に試練の儀式を受けて貰う 嫌ならこの家から去るが良い! 財産が欲しいなら……一族を納得させるが良い 我を殺しても……この相続は飛鳥井康太に一任してある! 彼の弁護士が財産の総ての書類は持っておる 勝手に触れぬように飛鳥井康太が許諾した者にだけ相続は出来るようになっておる!」 津島は一歩も下がらなかった 一族の見届け役の者も総て承知しているのか、物見遊山をしているだけだった 金をばらまいて……懐柔した者まで……知らん顔を決め込んだ 君津は「………母さんは……孫が死んでも良いとお思いか!」と息子達の試練の儀式に異議を唱えた 「真島家を継ぐ者にだけ許された儀式じゃ! 真島家を継ぐ資格のない者には真島は渡すつもりはない! 私が死ぬのを待っておっても無駄じゃ! 私は次代の後継者を据えるまで……死ぬ事すら出来ぬのじゃ!」 耐えに耐えて来た君津は耐えきれず喚き散らした 「早く死ねよ!ババア……何の為にこんなに我慢して来たか解らないじゃないか!」と叫んだ 「君津、愚かよな……どれだけ頑張ってもお前に渡る財産はびた一文もない!」 「………正当な遺産分与は請求する!」 「お前の会社の負債に財産分与以上の資金を注ぎ込んでいる……真島の土地を勝手に売ったから、警察に突き出してやることにした 真島の財産はお前のためにあるのではない!」 「母さんは何時もそうだ! 央人、央人と秋津の子供ばかり可愛がって…… 今ここにいる息子達は目もくれない!」 「お前の血が流れるなら……情の少しでもわくけど…… お前の息子だと謂う子供には真島の血は一滴も流れてはおらぬ! 余所の男の種の子供など……真島には不要!」 津島は言い捨てた 女は取り繕うと「貴方……こんな人の謂う事を信じるの?」と取り縋った 君津は「………母さん……確証は?」と呆然として…… 呟いた 「真島の血が流れていれば解る この者達には真島の血は一滴も流れてはおらぬ 故に……今後一切真島の敷居を跨がせるつもりもない!」と言い捨てた 津島の言葉に……君津は……唖然とするばかりだった 「………央人……アイツが総てをぶち毀した…… 生かしておくか!」 君津が叫ぶと津島を殴り飛ばした 「出て逝かれよ! 二度と真島に近付くのは許さない!解ったな!」 津島は言い捨てた 一族の者が君津とその家族を排除した 一族の者は津島の恐ろしさに……口を噤んだ 【愚かなる者】 その夜、真島君津は母親の部屋へと押し入った 遺言書を書き直して逝って貰う為だ 部屋に入るなり津島は「愚かよのぉ君津」と総て見えているみたいに声を掛けた 津島の部屋は真っ暗だった 明かりさえ一筋も漏れぬ部屋にいた なのに……見えてるみたいに声を掛けられて驚いた 実際、君津には全く何も見えなかったからだ…… 「………母さん……死ぬ前に遺言書を書き換えろよ! でなくば……即座に死んで貰う事になる」 「私を殺しても財産はお前のモノにはならぬ!」 「そんなの遺言書を書き換えれば何とでもなる!」 「それは無理じゃ君津 お前真島の血が流れておるのなら……解るであろう?」 津島は枕元のライトのスイッチを入れた ボーッと部屋が明るくなる すると津島の隣に……… この夜に存在せぬ怪異を見て……君津は後ろに飛びすさった 「……寄るな化け物!」 「お前も真島の血が流れておるなら……怖がらずとも良い 古来より真島は魔を祓い魔を使い魔を操った 故に【魔使魔】まじま……と呼ばれた一族じゃ 闇を調伏して使い熟せるのは一族の後継者しかおらぬ お前は……魔を祓う事も出来ぬ出来損ないであったが……一つだけ役に立ったな」 「………それは何だと謂うんだ!」 「秋津との間に子を成した それだけはお前は褒められる だから真島の家に置いてやった 資産を勝手に売り払っても黙っていてやった だが………この家を勝手にしようとするなら黙ってはおらぬ……」 津島の後ろの怪異がゆらゆら揺らめいて蠢いていた 津島はジリジリと君津に近寄った 後退る君津にジリジリと詰め寄る 闇の怪異が君津に搦まり……取り込もうとした 足掻き苦しむ君津は………やがて闇の中に盛り込まれて…… 吐き出された 翌朝、部屋に戻された君津は……… 気が触れていた 君津は病院送りとなった 多分、生涯……出ては来られぬであろう 君津の妻の淳子は帰らぬ夫に焦れて真島の家を尋ねた すると淳子は門前払いされた 顧問弁護士が来て、君津の借金は総て精算された そして子ども達のDNA鑑定を見せて 「淳子さんのお子さんに真島の血は一滴も入ってはおりません! 故に大奥様から真島の姓の使用禁止を言いつかって参りました 君津様は気が触れて……生涯病院からは出られないでしょう 離婚されるが懸命 されないのであれば君津様の治療費を貴方に請求いたしますが、どうなさいます?」 調査票には子ども達の父親の顔写真まで載っていた 子ども達はそれを見て、やっぱりと確信した 父親には似てないし、父親とは想えなかったから…… 二人とも成人を過ぎていたと言う事もあり 「戸籍を抜いて下さい!」と申し出た 弁護士は子供達に「君達はお母様とご一緒に暮らされるのですか?」と問い掛けた 「いいえ!僕らは両親とは関わりなく生きていきたいのです」 と答えた 弁護士は二人に「でしたら関わりなき様に致しましょう」と嗤った 二十歳を超えていると言う事もあり、弁護士が用意してくれた姓を名乗り、生きていくことにした 「君達は大変優秀な生徒さんらしいですね 我が主の為に生きると約束されるのであれば…… 貴方達の将来は………主が先へと結んでくれます どうなさいます?」 弁護士の天宮東青はそう言った 兄 元気 弟 吐息 は天宮東青と共に……去って行った 淳子は狐につままれた感じで、何が起こったのか解らなかった 真島を名乗れぬ淳子は……旧姓に戻り 地道で堅実な余生を送る事をした 愚かなる者は君津ばかりではない 一族の財産を狙う者は少なくない 幾度も幾度も津島は命を狙われた 何故、この年になるまで生きて来られたかと言うと 真島津島が闇や闇に生きる者を調伏出来るからだ 魔に囚われず (闇に囚われず) 魔を使い (闇を使い) 闇を祓う (魔を祓う) その者の事を人々は【魔使魔】ましま と呼んでいた 一族の者でそれを継承して名乗れるのは唯一人 真島津島 唯一人だった 真島津島は飛鳥井建設の副社長室を訪ねていた きちんと着物を着て座る姿は年の割に美しい 今幾つなのか……定かではないが 真島家当主は真島津島だった 康太は津島を視た 「……ロクデナシの倅は気が触れたか?」 「あれは既に人ではなかった 魔に魅入られ守銭奴と言う金の亡者に成り果てておった」 「………で、津島がオレを尋ねた理由は?」 「知っておるであろう……」 「一応聞いとかねぇとな お前に話す事もあるしな」 「真島家の正当な後継者は央人しかおらぬ」 「だろうな……央人と名付けた時点で、後継者にするつもりだったろ?」 「一族一力の強い秋津の子だ 一番相応しい後継者は央人しかおらぬ」 「その央人、耳の生えたの拾ったの知ってる?」 「………耳が生えた……ってそれは怪異の者か?」 「人と牙狼との間の子だ」 「………人と牙狼とが契ったのか?」 「まぁ真島も妖狐だから似たようなもんだろ?」 「………そんなことを言うのはお主だけだ……」 「そうか?」 「……狼は…狐を馬鹿にするではないか……」 「牙狼は絶滅の危機だぜ?」 「……なれば……牙王のお子か?」 人と交わって子を残せるのは牙王しかいなかった 狼が人と交わっても子は成せない それが現実だった 「で、その耳の生えたの雄だ」 「………では……後継者は望めぬな…… 飛鳥井家真贋よ……真島は終わるか? 真島が終わるなれば……我の代で終わらせる」 「牙王の子供だからな産めねぇか?」 「………無茶ぶりを申すでない……」 「無茶ぶりじゃなく」 康太は笑った 「……なれば、お主は雄同士で子を成せるのか?」 「オレは無理だな子は産めねぇ……」 「………無理なのか? 作らぬのか……どっちじゃ?」 「どっちも不可能……なんだよ津島 神だとて雄同士で子は成せねぇだろうが!」 「………真島の家は滅んでもよい…… 央人が幸せならば……それでよい」 「………その央人、結婚しようとした女に詐欺られて……捨てられた」 「……何と言えば良いか言葉もないわ……」 「その央人が今……毎日愛を育んでいるのが耳の生えた存在だ 愛を知らなかった央人が愛を知った この出会いは必然だ……どっちに転ぶかは解らねぇけどな…… どの道、央人は狙われるぜ!」 「………何故に………」 「牙狼の王が姿を消した 担ぎ上げる存在は牙王の子しかねぇからな……」 「………そうか……なれば央人はどの道を逝くか…… まだ解らぬと言う事か……」 「央人は愛する存在を手に入れた 愛を知った央人は一筋縄ではいかねぇぜ?」 「それは楽しみだな 牙王を唆したのは……お主であろうて…… この時期に王が消える事自体、きな臭い」 「牙王と近いうちに逢う 津島、お前はどうするよ?」 「央人が総てを手に入れた時にお逢いしとう御座います」 「伝えとく! くれぐれも気をつけろ!津島」 「………気をつけぬとも……私は死にません 次代の当主に譲り渡すまで……私は消えれぬ運命なのです 本当に………長かった……」 「……央人が拾った耳の生えた奴 あれさお前と変わらねぇ位の年かもな」 「………何とも……リベラルな奴よのぉ…」 そう言い津島は笑った そして飛鳥井康太に深々と頭を下げた 「飛鳥井家真贋 貴方に真島の全権を委ねます 私とて不死身ではあらぬ……何があるか解らぬから…… その時はお願い致し申す!」 真島津島は康太に頼み込んだ 康太は「真島津島より全権を委任した!」と宣言した 康太は何か……察していたのかも知れない 愚かな者達の所業を…… 予感していたのかも……知れない 真島津島は……愚かな者の愚行に合い…… 体躯を失った 寝ている間に屋敷ごと焼き討ちした 真島の長き歴史が崩壊した 津島が守り抜いた真島の本家が焼け落ちた 真島津島はそれでも尚 真島の家を守り通す 体躯はなくとも……怪異を操り 魔使魔……と言われる所縁を見せ付けた 【牙王】 康太は歌舞伎町にいた 横浜に出していたホストクラブを歌舞伎町に移転させていた 池上隆二、北村省吾と中村俊作が共同経営者するホストクラブは連日連夜盛況で、女性が群がっていた 同じ場所で数年、出店しない だからコロコロと店舗を変えていた 今はホストクラブだったり、キャバレーだったり 固定客が定まらないように業種も変えていた 色んな情報を手に入れる その為の手段なだけだから、業種もコロコロと変えた方が情報は集まりやすかった 康太は慎一と一生を従えて『emperor』を訪れた 今度の店は横浜よりも大きくホストも100人近く抱えていた 康太が店を訪れると場違いな客に何も知らないポストは……無礼な態度をとった そのホストを押し退けて、康太は店の奥へとスタスタ歩いて行った 「隆二!」 康太が呼ぶと池上隆二は飛び出して来た 「康太!いらっしゃい!」 「………隆二、毎回店の前で呼び止められて強行に突破して来るの疲れるんだよ……」 「……すみません……出入りが激しい業種なので…… 表に立つのは新入りの仕事なので…… 今度から連絡もらったら3人のうちのどれかが立ってます」 「そうしてくれ……でねぇとオレの番犬が殴っちまうからな」 口の端を押さえたホストを見て……隆二はため息を着いた 「………オーナーを止める馬鹿……減りませんね…」 オーナーと聞いてホストが騒いだ 「それよりもお呼びしてるので……」 「悪かったな」 康太は隆二と共に店長室へと向かった 慎一と一生もその後を着いて行った 新入りのホストが「………オーナー?ガキじゃん」と吐き捨てた 前の店から来てる古いホストが 「消されたくなくば……迂闊な事は言うな!」と怒った 「………お前達はあの方の恐ろしさを知らないから言えるんだ……」 ホストは口を噤んだ…… 店長室へと向かうと部屋の中に北村省吾と中村俊作がソファーに座って待っていた ソファーの中央に偉く男前が座っていた その横に男前の連れが座っていた 康太はソファーに座ると偉い男前に声をかけた 「久しぶりやん牙王」 炎帝とは顔見知りのようだった 「お久しぶりに御座います炎帝 今日は伴侶殿は?」 「会社で仕事している」 「意外でした……貴方達も離れたりするのですね」 「それより本題に入ろう牙王!」 男前の男は居住まいを直した 「はい!貴方の用件を承ります」 「牙王、おめぇは子供いたよな?」 「世良に御座いますか?」 「覚えていたか……産んですぐに捨てたからな忘れたと思った」 康太は揶揄した 牙王は康太を睨み付けた 「………捨ててなどいません!」 「捨てたも同然だろ?」 「…………あのまま我の子として里にいたら…… あの子は虐められるだろうから……」 「里から出しても虐められてたな」 「………どうも出来なかったのだ!」 牙王は叫んだ 「……牙王、俺が言いてぇのは……皆の反対を押し切って……人の子と共に子を作ったのに……その子を顧みなかった…事にだ!」 「………炎帝……お主は……いつの世も厳しい……」 「だけど、いつの世も……お前の子供を助けてやってないか?」 「……そうです……あの子は君の助けなくば……生きられなかった……」 「狼男協会とか言うのが本当にあると……想ってるお子様だから……」 康太はそう言い笑った 「………世良に……何かありましたか?」 「牙王、おめぇ………真島一族って知っているか?」 「魔使魔……と謂われる一族ですか?」 「そう、その一族」 「その一族がどうしたんですか?」 「その一族の後継者に世良は拾われて一緒に暮らしてる」 「………え……真島……の者と?」 牙王は信じられないと…連れを見た 連れは何も言わなかった 「牙王、牙狼の種族も減ったな……」 「はい……我の強い種族故に……潰し合い……数を減らしました……」 「牙王よ、人の世に住むのはキツいか?」 「……闇が濃くなって来ています…… この闇に狂わされて暴動が起きてる……」 「お前は…世良の他に子を成さなかったからな…… 世良を担ぎ上げて、お前の地位を奪おうとする輩も出ている……」 「………知っております…… ですが……もはや……コントロールも効きません」 「だろうな……闇に操られてるからな……」 「…………人の世で……暮らすのは……限界が来ているのかも知れない……」 牙王はそう呟いた 「答えはまだ出さなくていい それよりお前、子を作れ! 世良よりも強いのを産めねぇか?」 「…………もう無理に御座います…… そんな事をしたら……こいつが死んでしまいます」 「なら世良に産ませるか? 真島の跡継ぎと……牙狼の跡継ぎを。」 「………世良は………無理であろう…… あいつは………」 「相手は真島だからな……出来ねぇ事はねぇかもな」 「でしたら……我ら牙狼は……存続の道を逝かねばなりません!」 「お前の跡継ぎになる牙王をこの世に生み出すは世良! 真島の跡継ぎを生み出すも世良 この継承は……世良の背に掛かっている」 静に聞いていたが牙王の連れが口を開いた 「………一度もこの手に……出来なかった子ですが…… それでも……何時も……見守ってきた子です 誰よりも愛して……あの子の幸せを願っているのです……」 連れは泣きながら康太に訴えた 「………定めだ…… この乱世に出会ってしまった……運命だ 孤独な魂が孤独な魂を求めて寄り添った……  もう代わりはいねぇ…… この闇が増大した今……切り札は世良だ!」 牙王は苦しそうに瞳を閉じた 我が子の逝く道が……… 安らかでありますように…… 願わなかった日はない……… お願いします……あの子が泣いていませんように…… 願って 願って 願い続けた なのに………運命は残酷だった…… 連れは嗚咽を漏らして……泣いていた 牙王は連れを抱き締めた 「…………逝かねばならぬ道なのだな……」 「そうだ!」 「………ならば……我等も……腹をくくりましょう!」 愛する我が子のために……… 牙王は康太を射抜いた 「………我等……狼男一族も……集結致します そして終の棲家となるべき場所へ移動します!」 都会の喧噪に紛れて 人に紛れて 生きてきた狼男一族だった その中でも誇り高き牙狼の一族だった 「狼男に境界線を設けるのがおかしいのです 我等は……一つになってこの局面を乗り切ります」 牙王は一族を束ねる王の顔をしていた 愛した相手と契り…… 愛し抜いた その人しか愛さないと誓いを立てた 王として我を通して来た だが……一族の為に好きでもない奴と契りたくはなかったのだ…… 周囲の反対を押し切り、無理矢理認めさせた だから……負い目が常に……あったのは否めなかった 「牙王、近いうちに闇を弱める」 「闇を……弱める事など出来るのですか?」 「天界の介入で闇を弱める光を差し込ませる」 「闇が弱まれば我等狼男も本領発揮出来ますな」 強すぎる闇に……本来の力は封印されたようなもんだった 「あぁ、この闇を暴いてダンピールを一気に潰す!」 「………ヴァンパイアと間違われて狼男も狩られてます 何人の狼男を殲滅した事か………」 牙王は怒りに打ち震えた 「なれば牙王、お前は王として立ち上がれ! その時が来た………」 牙王は康太の前に傅いた 「承知致しました!」 「牙王、お前が立ち上がるのなら……朱雀がサポートに当たる 生き残ったヴァンパイアと協定を結んで、秘密裏に動け!」 「解りました!」 「協定を結ぶ時、お前の護衛を呼んでやる」 「誰に御座いますか?」 「素戔嗚尊 健御雷神 転輪聖王 天魔戦争の英雄を付けてやんよ!」 牙王は引きつる顔笑顔を貼り付けて…… 「………恐れ多い……」 と恐縮した 「気にするな腕はまだ確かな三人だ! お前の逝く道は塞がせねぇ!」 「………炎帝……我が息子を……」 牙王は深々と頭を下げた 「総て片付いたら逢ってやれ!」 「はい!」 牙王は連れの者と共に帰って行った 仲間の前から消えた牙王はホストをしていた 闇に紛れて夜の世界で生きていた 隆二と省吾と俊作は康太の目を見た そして頷いた 康太は何も言わず立ち上がって帰って行った 【愛】 一緒に暮らし始めて一ヶ月が過ぎる頃 セラは寝込みがちになっていた 二人はまだ一つには繋がってはいなかった 真島は仕事を終えると家へと急いだ スーパーに寄って食材を調達して家へと帰る 「ただいまセラ」 真島が言うとセラが飛んでくるのは変わってはいなかった 「お帰りヒロト」 真島は世良を抱き寄せてキスを落とした 「体調はどうだ?」 「ん……今日は起きて家のことやってた」 「無理するなよ」 「ん!無理はしてねぇ」 世良はニコッと笑った 「お帰りなさいのキスは?世良」 踵を上げて真島の頬を挟んでやっとこさ送られるキスが好きだった 「お帰りなさい」 チュッとキスされて真島は笑った 食材を床に落として、真島は世良を抱き上げてリビングへと向かう ソファーに世良を座らせると、食材をキッチンへと運び込んだ 世良はお肉の食べれない狼男だった ベジタリアンな狼男なんて聞いた事がない 煮物が大好きで筍の煮物をよく作ると喜ばれた 闇が……油断すると部屋の中まで入ってこようとしていた そんな頃、真島は祖母から送られて来たモノを受け取った それで……祖母の肉体は……滅んだのだろうと……知った 『私に何かあったらお前のところへ……送る』 祖母が生前そう言っていたから…… 真島は携帯電話を取り出すと電話を入れた 「真島央人です 荷物を送って下さったのは……貴方ですか?」 『はい。主の言いつけに御座います 真島津島様が我が主、飛鳥井康太へ託したモノです 貴方の処へ返るは正当なモノなのです!』 弁護士は意図も簡単に………そう言った 「天宮さん………祖母は……逝きましたか?」 『姿は……逝かれました ですが、貴方が真島を継がねば…… あの方は永遠に真島に囚われる事となります 解っておいでですよね?』 「解ってるよ天宮さん どうやら……俺はどう在っても………継承せねばならぬ状況になって来ました…… 俺に何かありましたら……真島の土地は……閉鎖して下さい……」 『…………央人さん……貴方をサポートする為に…… 万全を期すと仰有ってます…… なので、何かあればお聞き致しましょう それまでは……真島家御当主として……闘って下さい!』 「解ってます! 確かに、受け取ったと真贋にお伝えください!」 真島はそう言い電話を切った キッチンの入り口で聞いていた世良は…… 心配そうに真島を見ていた 「おいで!」 世良は真島の旨に飛び込んだ 「……ヒロト……お願いがあるんだ……」 「何か欲しいのでもあるのか? 良いぞ、何でも聞いてやるぞ」 「………オイラを……ヒロトのモノにして欲しいんだ」 「……セラ……俺のモノにするって事は離してやれない……って事だぞ?」 「それで良い……オイラはヒロトのモノになりたい でも聞いて欲しいんだ……」 「あぁ、聞いてやるから話せ 俺に隠し事したいなら……絶対に言うな! お前が俺と暮らしていてくれれば……それで良いんだ……だから無理しなくても大丈夫だ 俺は何処へも逝かない」 「ヒロトの傍にいたいんだ オイラを全部………ヒロトのモノにして欲しい…… でもオイラ……今までキスは覚えいるけど…… それ以上犯ると……意識が朦朧となって……訳が解らなくなっちまうんだ その後……悲鳴で意識が戻ると……血を流してるんだ そして逃げていくんだ……」 「お前……その牙……牙狼の一族だろ?」 「……え?狼男じゃないのか?オイラ……」 「狼男の世界も種類が二通りあるんだよ 普通に変身する狼男の種族と、変身した後に鋭い牙(きば)が生える牙狼(がろう)の種族とあるんだよ 海外だともう少し種族は増えるそうだけど、今の日本ではこの二種族のみの報告になってる」 「そうなのか? すげぇなヒロトは……」 世良は感心しまくりだった 「よく聞けセラ」 真島は世良の両頬を挟んで、顔を上げさせた 「お前は牙狼の種族だが……不完全だ 多分……何かが引き金になって完全体になれないんだと想う それを意識の中で求めるから……セックス出来ないんだと俺は想うんだ」 「……オイラ……ヒロトを疵付けたくないんだ…… でも……オイラ……ヒロトのモノになりたい ヒロトとエッチして……ヒロトを満足させてやれるか解らないけど……… オイラで我慢して欲しいんだ 他の誰かを抱かないで欲しいんだ……」 「セラと暮らしてから誰とも寝てないよ? 俺の体躯から他の誰かの匂いした?」 「………してない…… してないけど……ヒロトに我慢させてるなって想う」 朝……真島がトイレで抜いてるのを知っている 世良を怖がらせない為に……性欲は自分で処理していた 「我慢させてるなって想うなら、元気になれ」 「元気だよオイラ」 「闇が……深くなったから辛いだろ?」 世良はがっくし……項垂れた 「……体躯の辛さより……心が痛い…… ヒロトを求めれば求める程に……なくしたくない想いばかり募る…… こんな想い……生まれてからした事ないから…… 上手くいかない……」 「セラは俺に恋してるのか?」 真島は信じられないと……呟いた 「これが……恋……って奴なの? 感じたことないから解らない でも本当にヒロトのモノになりたいんだ」 「ご飯食べたら俺のモノにする」 真島は嬉しそうに言い、世良に口吻けた 「それで良いんだろ?」 「うん!ヒロトのモノになる!」 理解してるかは……解らない だけど自分のモノにする 後で誤解だって言っても…… 此処は6階だって言ってやる! 真島は取り敢えず世良を離すと夕飯の準備をした 夕飯が出来上がると世良と二人、仲良く食べた 何時もの夕餉の風景だった そして二人して何時ものようにお風呂に入った 世良はお風呂が結構好きで、洗って貰うのが大好きだった 真島の手が磨き上げてくれるのが嬉しくて、何度も真島に抱き着いて怒られた 真島は浴室から出ると、そのまま体を拭いて…… 世良をベッドの上に放り投げた 「……え?……ええ?」 何時もと違うから……声を上げた 何時もは熱風で髪を乾かしてくれるのに…… 「俺のモノになるんだろ?」 真島は全裸だった 風呂上がりだから当たり前だが…… 何だかドキドキしてきて…… 何時も見てる裸が違うモノに感じた 「…何か………気絶しそう……」 「気絶してても良いぞ! 好き勝手に犯るだけだからな!」 真島は笑って世良に口吻けた 口腔の中に舌が入り込み……世良の舌に搦まり……吸われた 意識が朦朧とする…… 気持ちいい…… ヒロト……… 世良は意識を手放した すると……触るな!と低い声が響いた 目の前には……お人好しの世良ではなく 狂暴で牙を剥き出しだ世良がいた 「牙王が人の男と交わって創ったと言う牙王の子供か……」 真島はそう言い捨てた 世良を拾った頃から……闇が伝えに来た情報だった 魔(闇)を使い 魔(闇)を操る一族の後継者は間違う事なく 真島央人だった 祖母 真島津島が後継者として付けた名前 魔使魔 央人 魔を使い魔を操る中央にいるべき人 そんな意味が込められていた 真島津島が央人が生まれた瞬間から後継者だと位置付けた名前だった 真島は祖母から送られて来た荷物の中から小さな剱の形をした神器を手にした 真島は剱を口吻け 「驱除黑暗用咒语束缚住黑暗」 と言葉を唱えた すると小さな玩具みたいな剱が………真島の背丈の剱に姿を変えた 祓魔の御劔………持ち主によって姿は違うと謂われる御劔だった 真島が出したのは母 秋津よりも大きく強靱な祓魔の御劔だった 闇を斬り 魔を斬り 「 咒语! 」 部屋を呪縛した その結界の中には何人足りとて…… 進入は不可だった 「さぁ、愛し合おうぜ世良!」 全裸の強靱な肉体を持つ男が……ニャッと嗤った 世良は爪と牙をむいて真島に襲いかかった その姿は間違う事なく牙狼だった 世良の体内で心と体躯がバラバラで存在していたのだろう 世良で変身した時は不完全な犬男にしかならないのは…… 世良の心の何処かで自分を否定して生きて来た事となる 「………呪縛を解け!」 世良は吠えた さっきの呪縛で世良まで呪縛されていた 動けないから牙と爪とで威嚇しているが…… 真島には通用しなかった 「牙王は妖術に長けているらしいからな子も作れるって言うからな 世良、俺の子を産めよ!」 「ふざけた事を抜かすな!」 「至極本気! 俺はお前しか抱かない だから世継ぎなんて出来ないけど…… 仕方がねぇ…… でもお前、作れるなら俺の精液を胎内に取り込んで…… 受精するまでセックスするか!」 何処までが本気で…… 何処までが嘘なのか……解らない男…… 世良は呪縛された体躯で……真島を睨み付けていた 「セラ……」 優しい囁きは何時もの真島の声だった 呼ばれるたびに泣きたくなった 「愛してる お前しか愛さないって約束しただろ?」 抱き締められる腕は……優しくあやしてくれて…… その優しさに胸が苦しくなった 「………ヒロトぉ……」 「セラ、身も心も俺が欲しいと願え お前が欲しいと言い出したんだぞ? そしたら………お前を呪縛しているモノが解ける」 「ヒロトぉ……欲しいよぉ…… ヒロトだけがオイラに優しかった…… ヒロトだけがオイラの居場所を作ってくれた オイラ……ヒロトと一つになりたい…… ヒロトの子が産めるなら…… 産みたい……他の奴になんか渡さない! オイラがヒロトの子を産めるなら…… オイラがヒロトに家族をあげる… だからオイラを抱いて……」 目の前の世良は何時ものヘタレの世良になっていた 真島は世良の呪縛を解いた 世良はベッドの上でくたーっとなって寝ていた 抵抗もせず暴れる事もなかった 「俺が解るかセラ?」 「ヒロト……」 「よし!戻ったな」 真島は世良の頭を撫でてやってた 「………あれ……誰?」 「誰って……お前だろ?」 「……アイツ……ヒロトを切り裂こうとしてた……」 世良の瞳から涙が溢れて流れた 「もう一人のセラが、お前の体躯を護っていたんだ…… 本当に愛する人に出逢う日まで…… セラの体躯に指一本触れさせない為に……護っていたんだ 俺は嬉しいぞセラ お前が俺を愛してくれてるって解って…… 凄く嬉しい……」 「ヒロトぉ……大好き……」 「俺になら抱かれてもいい?」 世良は頷いた 「お前のココに……」 真島は世良の下腹部に手を当てて 「俺の子を宿せる様に精液を流し込み続ける だからお前は……ココに意識を集中して……感じてろ 気絶する程感じさせてやるからな!」 「………オイラ頑張る!」 世良はガッツポーズをした 色気は皆無なんだけど……真島の股間はギンギンだった 意地悪して真島は世良の手を取り…… 自分のペニスを握らせた 「触って世良……握ってみて……」 世良が触らされたのはどう見ても……真島のペニスだった こんな硬いの見たことも触ったこともない 「………ヒロトの硬い……」 「男のペニス……触るの初めて?」 世良は頷いた 真島は天にも昇れる気分だった 「ずっと……握ってて……」 真島はそう言い世良に口吻けた 口吻けは深くなり口腔を犯し貪った 「……ぁん……んんっ……」 可愛い喘ぎが聞こえていた 真島は嚥下出来ずに流れ出た唾液を舐めながら…… 顎を舐め……首筋を吸った チューッと吸うと、色白な世良の肌に紅い跡が散らばった それが艶めきすぎてて…… 真島の股間は更に嵩を増した 「……ヒロトぉ……また大きくなった……」 泣きそうな声に、真島は笑った よくもまぁ……こんなに色気なくて興奮できるよな俺! 「お前に感じてるから……硬くなるんだよ そう言うお前も……勃ってる…」 真島はそう言い世良の小ぶりで可愛いペニスに触れた 世良の手を外させると、自分のペニスで世良のペニスを擦り上げた 「…ゃ……やらないでぇ……ゃん……あぁん…」 喘ぐ世良は可愛かった 艶を増すと……その可愛さに興奮はMAX 「…出ちゃう……ヒロト……止めてぇ……」 「出して良いぞ それもローション代わりに使うからな」 そう言い真島は世良のペニスを自分のペニスで擦りあげた 二本のペニスが合わさり……真島のペニスのエラが…… 世良のペニスを擦っていく 世良は………仮性包茎で皮が捲れてなかった 「お前……皮被りか……どれどれ俺が剥いてやるな」 そう言い真島は世良のペニスの皮を捲りながら擦った 多分長く生きてても……あまり触ってないのだろう 「セラ……オナニーした事ないのか?」 「あるよ……オイラだって……出してる」 その割にピンクの亀頭してる…… 真島は自分のペニスに目をやった 赤黒くて血管が浮き出て……かなり卑猥な色をしていた 長く生きてる × 射精してる =ずる剥け色悪い の方程式しかしらない真島は未使用感に嬉しくなった 「ならさセラ、お前ってどんな風にオナニーしてるのか見せて!」

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