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第10話 月に変わってお仕置きよ!【中編】

ニコニコ顔で真島は言う 世良は「………はいぃぃ?」と聞こえなかった風に耳に手を当てて聞き直した 真島は世良の頭をポコンッと叩いた 「お前は何処かの政治家か!」 真島が怒る 「だぁって……そんな恥ずかしいの……出来ない」 「ならさどんな風に触ってるの?」 お前は中年親父かよ! 世良は想った 真島は世良の手を掴むと自分のペニスを触らせた 世良は仕方なく……自分のペニスを触った 先っぽだけ触って……気持ち良くなっている 「そんなんじゃイケない体躯にしてやる 俺の挿れねぇとイケなくしてやる!」 真島はそう言うと世良のペニスを………口に咥えた そしてペロペロと舐めて……吸った 陰嚢を揉んで刺激すると…… 呆気なく世良は達した 「………え?もぉ?……」 想わず真島は呟いた 真島は少しずつ精液の滑りを利用して皮を捲り始めた 剥かれた亀頭はピンク色で敏感にプルプル震えていた 今まで外気に触れなかった先っぽが、初めて外気に触れて敏感に震えている様は…… 結構クるものがあった 股間を押さえようとして震えている世良は全身がピンク色だった 「……ダメ……出てすぐに触らないで……」 「イッた後が気持ちいいんだぜ?」 「………ゃだ……」 「なら止めるか?」 止める気なんてないけど問い掛ける 世良は押さえていた手を外した 「………ゃめ……ないで……」 真島は世良のアナルに指を挿し込んだ うねうねとうねる腸壁を指で掻き回した 「……へっ……兵長!……そんなにしたら壊れます!」 真島はブチッと理性がブチ切れる音を聞いた 「誰が兵長だ!」 「……ヒロトの本棚にある本で一番格好良かったから……」 「そんな事よりこっちに意識を集中しろ!」 コリッと世良の前立腺を引っ掻いた すると世良のペニスから………精液が噴き出した 「………早い!お前は早漏のガキか!」 「……だって……オイラ……」 色気は皆無だわ エッチの最中に兵長!と叫ぶわ…… よくもまぁ……こんなのとエッチしようと想うな俺…… ナイトテーブルからローションを取り出すと世良のアナルに垂らした ローションの滑りを得て更に指はうねうねと動いた 指を三本に増やした頃には世良は力なく横たわっていた 真島は脚を抱えてアナルを丸見えにすると…… ズボッとペニスを挿し込んだ 世良のアナルが真島のペニスを呑み込んでゆく 根元まで挿れると「キツいか?」と問い掛けた 「入ってる?ヒロトの全部……入ってるの?」 真島は世良の手を掴むと結合部分を触れさせた 「ほら、触ってみろ 俺の……解るか? これが……お前の中に挿入してる」 世良は結合部分を触った すると……触った時にキュッキュッとアナルを締めるから……真島は堪らなくなった 「セラ……俺の熱を感じろ そしてシンクロしろ……」 世良は真島を見た そしてその瞳を閉じて……全身で真島を感じようとした 真島は世良の下腹部に触れた 「………届いてる?ここに?」 ドックンと脈打つペニスの存在を感じて…… 世良は頷いた 「………ぁ……熱い……」 体内の真島の熱に狂わされる 世良は全身で真島を感じていた 抽挿を始めた真島の熱に…… 世良は喘いだ そしてその熱に狂わされたみたいに乱れ…… 真島の背中を掻き抱き……イッた 真島も世良の中で射精した ドックンドックン……と脈打つたびに熱い飛沫が飛び散るのを体内で感じた 世良は下腹部に両手を当てて笑って 「ヒロトの子が欲しい……」そう言った 例えこの先……離れて生きていく事になったとしても…… 世良は真島の子がいれば生きていけると想った 「………オイラ……ヒロトの子が欲しい…… そしたらヒロトがいなくなっても……オイラ……生きていけるから……」 ポロッと世良の瞳から涙が零れた 真島はその涙に口吻けを落とした 「こう見えても俺に力がある 心配しなくても、そこいら辺の奴等と違って長生きするし、お前を守ってやれるんだぜ! どうだ?お前の選んだ男はかなりお買い得だろ?」 「うん!何で詐欺られたか解らないよ!」 カチーン 「そうだよな! こんなお得な男だけど詐欺られたんだよな! そんなこと言ったら……泣いても許さねぇぞ!」 「ごめん!」 フン! 真島は世良の中を激しく貫いた 「ゃあん……らめ……らめぇ……ぁんあん……」 もう世良は何が何だか解らなかった 気絶するまで真島に犯され 意識を手放しても 真島に犯された 【立ち上がる】 真島は真島本家に世良を連れて尋ねた 本家は焼け落ちてなくなったが、本家が所有する離れ離宮があり 本家を建てるまでは、そこに真島津島の霊体は棲む事にした 真島の人間は津島が死しても尚、真島の家の為に消えない姿に…… 恐れをなした 真島津島は離宮の継承の間に居住まいを出して真島を待っていた 真島は津島の前に行くと正座をして深々と頭を下げた 「今日、お祖母様に逢いに参りましたのは…… 真島の家督を継ぐと宣言する為に御座います」 「央人、隣の者を紹介してはくれぬのか?」 真島は一族総勢揃う中、不敵な笑顔を向けると 「妻に御座います! 俺は今後、妻は娶る気は御座いません ですので世良一人!」 真島は妖炎を立ち込めていた その力を見せ付けるかの様に、真島は無敵だった 「………お主も男なれば……その子も……男であろうて」 「世良は牙狼が一族の王の子 牙狼の王は妖力で子を成せるそうだ 世良も妖力で……世継ぎ位産める様にセックスしまくるつもりだ!」 かぁーっと世良は真っ赤な顔をして俯いた 継承の間は水を打った様に静まり返った その静けさを破って、一族の者の中から声を上げた者がいた 「牙王は今行方不明だとお聞きします 牙王の行方が解らぬ今、担がれる神輿に乗せ様とする輩が……出て参りませんか?」 「世良は牙王の器じゃねぇ! 器じゃねぇ奴が頭になっても揉め事の火種は消えねぇ! だから牙狼になどくれてやる気は皆無だと言う事だ!」 真島は言い捨てた そして世良を引き寄せて 「世良は真島の戸籍に入れる! 俺の戸籍に入れて実質上の妻にする」 島津は黙って聞いていた そして顔を上げると真島を見た 「真島一族の家長となるか?」 島津の問いに真島は「はい!」と答えた 「背負うべきモノの重みも覚悟も決まりました ……なので受けて立つ所存です!」 津島を射抜く瞳には迷いはなかった 「ならば逝け!」 島津は立ち上がると真島に総ての力の継承をした すると島津の体躯が薄く……なっていった 「ばぁちゃん!」 真島は叫んだ 「魔使魔家 家長を今ここに譲り渡した 我の力は総て央人に継承された 真島家家長は真島央人 唯一人!」 一族の者は島津の言葉にひれ伏した 真島家家長が決定した瞬間だった 「近いうちに俺は会社を辞める そして此処に移り住む… だから俺や世良の傍にいさせる奴は吟味する 俺は魔(闇)を使い 魔(闇)を操る 俺は今祖母の力を継承した だからな、気を付けろ! 不穏な動きをする奴などその場で消してやるからな! 俺はお祖母様みたいに甘くはない! それを覚えて過ごせ!」 一族の者に緊張が走った 真島は魔使魔家神器、祓魔之鏡を手にした 魔使魔家の神器は御劔 祓魔之鏡 千里眼と謂われる水晶玉だった 「神器はとうに俺に渡されている 今更誰が異議を唱えようとも、真島の継承者は俺しかいない! 心して仕えてくれ!」 一族の者はみな真島にひれ伏した 誰もが真島家の家長と認めた瞬間だった 家長を引き継いで三ヶ月は飛鳥井建設に勤めていた 引継ぎや今取りかかっている仕事をやり終えるまでは……と三ヶ月 飛鳥井建設に勤務した そして飛鳥井建設を辞める日 真島は副社長室へと呼ばれた 真島は飛鳥井康太と榊原伊織に深々と頭を下げた 「今までお世話になりました」 真島が言うと康太は 「跡を継ぐか?」と問い掛けた 「はい!真島家家長になります!」 「世良はどうしてるよ?」 「離宮総てに結界を張ってあるので誰も入り込めなくして、離宮にいさせてます」 「………まさか……牙王の子がお前と繋がるとはな……」 康太は呟いた 全く予期していなかった事だから…… 「俺もあの月夜の晩に拾おうとなぜ想ったのかは…… 解りませんが……今となっては運命だと受け止めました そして全力で世良を護ると決めたのです!」 「……………そうか…。 央人、お前の逝く道は険しいかも知れねぇ でもお前は選んだ そして総てが……定められし位置に納まった もうお前は魔使魔家家長として換えはいねぇ…… 今後の貴方の逝く末が……安らかであられる様に…… 飛鳥井家真贋として協力は惜しみません!」 康太はそう言い真島に手を差し出した 真島はその手を強く握り締めた 手を離して、康太は更に続けた 「………甲斐世良の戸籍を用意したり、変なのに引っ掛からない様に世話を焼いて来たのはオレだ真島 世良は狼男協会があると本当に信じてるが……… そんなのはねぇよ!」 康太は笑いを堪えて本当のことを言った 「………でしょうね そんな協会あったら俺の処へ情報が回ってこない訳がないですからね」 真島も笑ってそう答えた 「世良は牙王が人間の男との間に妖術で作った子供だ……知っているな?」 「はい。あの牙を見て……そうじゃないかと予想しました」 「何で世良は牙王の傍で生きられなかったか知ってるか?」 「………不完全な体躯だったから……でしょ? 人でもなく狼男にもなれなかった 完全体になった世良は……やはり不完全でした 狼男ではなく犬男位にしかなれてません…… あれでは群れの中に入れても食い殺されるは必死…… 親は……涙を飲んで……子を隠した と言うのが俺の見解です」 「流石……真島を継ぐだけの事はあるな 補足だ……世良の母親……は世良をこの世に生み出して 結構な体力の消耗もあって寝たきりになった…… そんな状態で我が子を傍に置いておけなかった……てのが離れて暮らす事となった一番の原因だ」 「……世良の母親は人間の男 人と妖と交わるは禁断の罪を作るも同然 牙王だとてリスクを背負わなかった訳ではないのでしょう 今 牙王が姿を消しているから好機だと動き出す馬鹿が後を断たない 絶滅危惧種なんで殺さない様にするのが結構大変だったりします」 真島はそう言い皮肉に嗤った 康太はその顔を見て…… 護るべき者が出来て自覚も覚悟もしているのだと解った 「央人……子を作るか?」 「俺は牙王の様な力はありませんが、妖力なら負けてないので、作れなくはないと想っています そして世良は狼なので世良の母親よりは体力もある筈です 真島の後継者と牙王の後継者を産むのは世良です そして牙狼は先へと繋いで逝ける 共存です真贋 闇に生きる者と人の世に生きる者との共存 古来より共存されていたバランスを取り戻すだけです」 「………闇を使うか?央人」 「闇が少しずつ弱まっています 魔が少しずつ影を潜めました 真贋、貴方の手助けを出来るのであれば 何時でも俺を呼び出して下さい 貴方の覇道と結んでおきます それで何時でも貴方が呼ぶ時に駆け付けます 闇を使い魔を操り…… 俺は貴方が何処にいようとも…… 駆けつけて貴方の為に動きます その契約は魔界に行ったとしても続きます」 真島は康太に深々と頭を下げた 「央人、心強い援護射撃をしてくれると言うのかよ?」 「はい!ばぁちゃんに変わり俺を護ってくれていたのは貴方です 世良を守ってやれるくれていたのも貴方です 真島央人は生ある限り、貴方の為に働きます」 「央人……もし……オレが逝ったら…… オレの子供達を……支えてくれねぇか?」 「………そんな事を言ってると伴侶殿が悲しみますよ! 貴方は一日でも長生きして下さい でないと子供達もそうですが……社長が……闇に囚われそうで怖いです なので、そうならない為にも長生きして下さいね! 勿論、貴方の亡き後も、俺は飛鳥井を護ります それを貴方に誓います」 「………央人……護るべき者を得て強くなったな……」 「結婚詐欺には合うし……生きてるのが嫌になりましたけどね…… しかも拾った奴は色気は皆無で……聞いて下さい!真贋」 「聞いてやるから話せ」 「アイツ……指挿れたら……… 『……へっ……兵長!……そんなにしたら壊れます!』とかぬかすんですよ……」 真島がやれやれ……と話すと康太は爆笑した 榊原もめずらしく笑っていた 「………苦しい……それでお前どうしたのよ?」 「犯りましたよ……ギャーとかゲーとかオェェェェとか叫ぶアイツを……気絶するまで犯りました まだ体躯が妊娠出来そうになる程出来てないので…… もう少し育てる必要があるのです」 もう康太は……笑い転げて聞いちゃいなかった 榊原も腹を抱えて笑っていた 失礼な話である 康太は涙を拭いて 「世良は相当強い妖力を秘めている お前が作る子供は双児 その子がお前の予想通り、牙王の跡を継ぎ 真島の跡を継ぐ!」 康太の言葉に真島は深々と頭を下げた 話が終わると真島は副社長室を後にした この日 真島央人は飛鳥井建設を退職した 【親の愛】 飛鳥井建設を辞めた真島は、家のために家業に専念した 屋敷の人間は総て引き払った 会社を辞めるまでの三ヶ月を使って離宮の真島の部屋をリフォームさせた カウンターキッチンを備え付けて、大きな冷蔵庫を備えた 食器棚を置いて一般家庭用の住居を作った そこで今まで通り真島が食事を作る 掃除や洗濯は世良の担当で、自分達の洗濯はしていた そして掃除をする だから使用人は要らなかった まぁ、他の部屋は使用人が定期的に来てやる事になるのだが……… 津島同様 自分の生活空間に他人は一切入れるのを頑なに拒んだ 部屋の前には…… 真島の使い魔が蠢いていて…… 不用意には近付けないのだが…… 念には念を押した それでも……牙狼の一族の者が世良を奪回すべく 現れて、真島はその対処に……困っていた 消すわけにはいなかい でもウザい 世良を狙おうなんて100年早い! 100年経ったら良いのかと言われても 100年経っても来るな! と言いそうだが…… 牙狼の一族は世良奪回に燃えていた 牙王がいない今 傀儡を据えて一族を手に入れる そんな願望に燃えた奴等が…… 真島の離宮を狙う 魔に返り討ちにされて、闇が抜けるまで監禁するつもりだったが…… どの部屋も満杯で……そろそろ辟易していた所だった 真島家当主に依頼して来る官僚の依頼も多い 魔(闇)を使って原因を探り 祓い魔の家業の者に依頼して祓わせる 真島は既に当主として祓い魔の者とも顔合わせした 西の観世 東の豊臣 と謳われる程の力持ちの祓い魔と契約を交わし 順風満帆 真島央人は魔使魔家当主としての手腕を奮っていた 何処へ行くにも真島は世良を連れて歩いた そして聞かれる総てに『妻』と紹介した そんな矢先……真島の目の前に…… 牙王が姿を現した キラキラとまるでホストみたいな男が真島の離宮の庭に姿を現した 「牙王……やっとお出ましか!」 牙王を目にして真島はそう呟いた 牙王は真島を見た 相当強い妖力を垂れ流ししていた その後ろには………真島と契りし怪異が蠢いて…… 牙王に狙いを付けていた 「上がられよ牙王……そして……連れの方よ」 牙王の横には美しい男がスーツを着て立っていた その男の気配を探り……納得した 「セラは母親似か……」 そう言い笑う真島を唖然として……男は見ていた 招かれて真島の離宮の廊下を歩いた 「セラに逢わす前に貴方達に見せたいモノがあります!来られると想って……粛清しときました」 そう言い連れて来られたのは……大広間だった 大広間には掃除している牙狼のモノ達の姿があった 「セラを狙ったんで……少しお仕置きしました」 真島は笑って……そう言った 「………お仕置き?」 「たいした事はしていやいません! ちょっと地獄に行った方が楽かも……なんて懲らしめただけです でも良い子達になりましたからね牙王、貴方に返しておきます」 まるで人が変わったみたいに規則正しい牙狼に姿を変えている…… 牙狼は気性が荒く……従順ではない 「………これは本当に牙狼か?」 「そうですよ? もう彼たちは貴方を裏切ったりはしないでしょう もし裏切ったら……闇に取り込まれる契約を結びました…… 俺の闇は……無間地獄の闇と直結しているので…… 本当に地獄の方が楽かも知れませんね」 ゾーッと背筋に冷たい汗が流れた 何という男……… 息子は……こんなのが良いと言うのか? 真島は部屋の前の闇を押し退け、部屋へと入って行った 牙王とその妻というべき男も部屋に招かれ入って行った 部屋には世良が真島を待っていた 「ヒロト!何処へ行ってたんだよぉ~」 世良が真島に飛び付いた その姿は………かなり妖艶になっていた やはり……何処か牙王の隣にいる男に似ていた 真島は二人をソファーに座らせると 「セラ、お前のお父さんとお母さんだ!」と紹介した 「………え?……そんなのいたの?」 世良は思わず呟いた 世良は捨てられたのだと……想っていた 自分が狼になれないから…… 両親は捨てたんだ………と想っていた 世良は泣きそうな顔をして真島を見た 「そんな顔をしなくて良いぞ! お前は俺の子を産む謂わば妻だからな! 渡す訳ないだろ?」 「………オイラを捨てたら……お前の顔に剣山ぶつけてやる!」 「……こらこら……物騒なのぶつけたらダメだぞ?」 「なら……お前のベッドの上で、う○こしてやる!」 「…………それは片付けるの大変だな」 真島は爆笑した そして世良の頭を撫でて 「お茶煎れて来るからな、ちゃんとご挨拶するんだぞ!」 「………解ったよ!……」 真島はお茶を煎れにキッチンに向かった 世良は「真島世良だ……ヨロシク」と自己紹介した 牙王は「………真島?」と不思議そうな顔をした 世良はニコッと笑って 「オイラ正妻だから! 戸籍に入れて貰ったんだ!」 と無邪気に自慢した 牙王は耐えきれなくなって笑った 連れの男も……笑っていた 牙王は世良に連れの男を紹介した 「世良、お前の母親の芹沢満月(みつき) ……人間の男だ………」 「みつきって、どんな字書くの?」 「満月(まんげつ)と書いて「みつき」と読む……」 「凄い!血が滾る名前だね!」 世良は楽しそうにそう答えた 満月は世良に 「………一緒にいてやれなくて……ごめんね……」と謝った 「………オイラは狼になれない…… かと言って人間にもなれない…… オイラは常に……虐められていた 狼男の連中には人間臭いと言われ 人間にはお前変だと言われ……… オイラは何処の世界にも属してない半端物としてしか扱われなかった オイラはこの世界の何処かに生きてる親を恨んだ オイラを不完全に生み出して捨てた親を…… 噛み殺してやろうと想った 返り討ちに遭って殺されてもいい…… それこそが…本望だったんだ だけど今は………死にたくない オイラ……死にたくない ヒロトと一緒いたいんだ もし……ヒロトが死んでしまっても……… ヒロトの子がいたらオイラは生きていけるから…… 子供が欲しいって頼んだんだ もう………オイラ……一人になりたくない…… もう……置いて行かれたくないんだ……」 世良は泣きながら……そう訴えた 真島は世良を抱き上げて膝の上に乗せた 世良は真島の首に腕を伸ばして抱き着いた その肩が……震えて……鼻を啜っていた 「ほら泣くな!」 「………泣いてない!」 「ならその目の滴は何よ?」 「……しっ………塩水だ!」 「そうか!塩分だったんだな! 塩分はあんまし採ったら体躯に悪いんだぞ?」 「………止まらないだもん……」 うっうっ………と世良が泣く 真島は世良の頭を撫でてやった 「………貴方達にはきっと世良の孤独は…… 解らないんでしょうね……… 心も体も傍にいてくれる人を求めた だけど見せ掛けの愛しかくれないと判ると世良の心は壊れた セックスしようとすると牙狼になるのは…… 心と体躯のバランスが取れてなかったからだ ……暴走するセラを……持て余して…… 孤独にした…それが現実です」 真島は敢えてキツい言葉を放った 牙王は真島に深々と頭を下げた 「………どんな言い訳も……言うつもりはない…… 我達は……世良を捨てたのは現実なのだから…… だけど……忘れた訳じゃない 愛する満月との子を……愛さない訳ないじゃないか 牙狼は気性が荒い 世良は不完全で生まれた…… 里に置く方が……可哀想だと飛鳥井家真贋に託した 何時も……見ていた 満月は何時も……世良の傍にいた…… 世良が気付かないだけで…… ずっとずっと……見守っていたんだ 我が子を……愛さない訳ないじゃないか! 誰が好き好んで我が子を手放す!」 牙王はそこまで言い……… 顔を覆った 満月はそんな牙王に抱き着いた 「………僕が人間だったから……世良を不完全にしか生んであげられなかった……ごめんね……」 満月は……泣いて訴えた 真島は世良を膝から下ろすと立たせた 「ほれ、起立!」 世良は号令で起立した 「ほれ、回れ右してみろ!」 真島に言われて周り右をした すると満月の前に……立った 「……ヒロト…」 「ほら、お母さんだ!」 「………オイラ……要らない……」 「生きてる親は大切にしろ! 死んじまったら……親孝行ってのは出来ないんだぞ!」 真島の母親は真島を産むと同時に亡くした…… 母親に甘えたい盛りに……真島は母のぬくもりを知らずに育った  そんな真島の言葉は……誰よりも重かった 「親孝行っての……しなきゃダメ?」 「お前が子供達に大切にして貰いたかったら、自分の親は大切にしろ! 因果応報……この世はした事は自分へ返る お前が……母さんを泣かせば……お前は子供に泣かされるな 大切にすれば、大切にされる 世の中は回ってるって教えなかったか?」 「………ヒロト………なら……オイラ……大切にする」 「良い子だ!その調子で母さんに抱き着いてやれ!」 真島に言われて世良は満月に抱き着いた 「………母さん…」 その体躯から……懐かしい匂いがした 泣くと……何時も飴玉をくれたお兄さんの匂いがした 「………お兄さん?」 満月は世良を抱き締めて泣いていた 親だと名乗れなくとも…… 我が子が泣いていたら……何とかしたくて近くにいた 泣く世良に飴玉をあげて何時も抱き締めてやっていた 「………そっか……お兄さん……母さんだったんだ」 世良は納得した 真島は牙王に向き直った 「勝機を真贋が呼ばれました 牙王は一族を率いて……闇(魔)と闘って下さい 総ての………駒が出揃いました!」 真島は……部屋の奥の蠢く闇を見て……そう言った 「牙王、貴方に仇為すモノは排除して差し上げます 元より我が一族と牙狼は繋がりし生き物として共存していた筈だ 我等妖狐と狼は敵対すべき存在ではない 手を結び共存の道を逝きましょう!」 牙王は真島の妖力の強さを感じていた 真島は牙王の妖力の強さを感じていた 敵対すべき力ではない 牙王は笑顔で真島を見た 「婿殿、世良を宜しく頼みます」 「任せておいてください! セラが産む子供は双児……牙狼も真島も…… 先に繋げたと言う事です 我等は此処では終わらない! 真贋と共に闘い平穏を手に入れましょう!」 「……婿殿……世良は不完全…… 故に……子を為しても……」 牙王は言い淀んだ 「大丈夫です牙王 あと少しでセラの体躯が受精出来るようになります そしたら立派な妖力を持った完全体の双児が産まれます セラは不完全なんじゃない まぁ外見は犬男なのは変わり……痛いっ!」 世良が真島の脛を蹴り上げた 真島は思わず……叫んで……脛を擦った 「………セラ……痛いって……」 「犬男言うな!」 「………狼男になりたいのか?」 「ガォーってやりたい」 「………かぶり物かぶるか? 今のご時世、かぶり物かぶって歌を歌ってるロックバンドもいる!」 「それ、オイラ知ってる」 「お!勉強したんだな!」 「ヒロトが好きなバンド MAN WITH A MISSIONだろ?」 世良は胸を張って「えへん!」と偉そうに言った 「よしよし!日々勉強してるんだな!」 「オイラ勉強してる……だけど…… オイラ…人間は食べれない 立派な……グールにはなれない……」 …………それは勉強しなくて良いのに…… 真島はたらーんとなった 「……人はまずいから食わなくて良いぞ」 「そうなのか?喰種って何属性なんだろうって何時も想っていたんだよ!」 「……それ……俺には解らなーず!」 牙王と満月の視線が痛い…… 「ヒロト、オイラ立体機動欲しい…」 「………セラ、ママとお話ししてろ!」 真島は世良の顔を満月に向けた 「………母さん……」 世良は小さな声で満月の名を呼んだ 満月は世良を抱き締めた 牙王は真島に「………世良は本を読めるのか?」と問い掛けた 喰種……と言うのが漫画の世界だと牙王は知っている 伊達に長い間、人間界にいた訳じゃない 「……セラは俺の部屋の本を読みまくってる ………巨人や喰種の本が多くて……全部読んだみたい」 真島は苦笑した 「……そっか……字を読める様になったんだ」 牙王はしみじみと言った 「出逢った頃は字も読めなかった 少しずつ教えてテキストを与えた セラは覚えるのが早くて、三ヶ月もする頃には読み書き出来るようになった 俺の部屋の本や音楽を片っ端から網羅して…… あんな変なことを言う子になっちまった」 真島は笑って言った 牙王は世良を抱き締めた 「………世良……央人君の子供が欲しいか?」 「うん!欲しい」 牙王は世良に向かって呪文を唱えた 世良の体躯が、その呪文を受けて……光った ピカーッと光って……光が消えた 牙王は世良に「我の妖力を与えた……これでお前は妊娠出来るだろう……」と言った 「………オイラ……妊娠したかったけど…… それで父さんの力がなくなるのは嫌だ!」 そう言い世良は泣いた 子供みたいに、えんえんと泣いた 牙王は困って…… 「……少し与えただけだ大丈夫だ それで俺の力がなくな訳じゃない!」 と世良をあやした その姿はどこから見ても親子だった 「本当に?」 涙で濡れた瞳で見られて牙王は、ふつふつと愛しい想いが湧いてくる 名残惜しい思いを残して…… 牙王は「世良を頼む」と言った 「真島の家は何時でも貴方達を歓迎します 何時でも我が子に逢いに来て下さい」 そう言い牙王と満月の肩の荷を下ろしてやる 牙王は真島に「また参る!」と約束して…… 牙王として生きるステージへと還って行った 真島の家にいた牙狼の者も引き連れて、やっと元の場所へ還って行った 【邀撃】 真島央人は世良を連れて飛鳥井建設に来ていた この日は飛鳥井建設は全休だった 会社に残るは守衛の警備会社の人間だけだった 守衛の人間には守衛室から出ない様に、会社の中に誰も入れない様に……と伝えた 副社長室には飛鳥井康太と伴侶の榊原伊織が真島を待ち構えていた 「呼び出して悪かったな」 康太は真島に声を掛けた 真島は漆黒のスーツを着ていた 世良もスーツを着ていた 「構いません!結界の様子も見たかったので丁度良かったです」 「その子が牙王の子か?」 「はい!世良に御座います」 「完全体、見せてくれねぇか?」 康太が言うと真島は世良に 「真贋のお側に行ってこい」と世良を立たせた 世良は差し出される康太の手を取った 「オレの瞳を覗き込め!」 言われて世良は康太の瞳を覗き込んだ 赤い……綺麗な瞳だった その瞳を見ていると………魅了され……魔法に掛かったみたいに……… 世良は姿を変えた 立派な牙を光らせ……耳と尻尾を生やした 全身は犬みたいな毛に覆われ…… 「…………真島……これ……完全体か?」 康太は狼男を頭に描いていた 世良の狼男…… 何か似合わないが…… どれだけの力を持っているか把握しておく必要はあった なんたって牙王の息子なのだ 次代の牙王を産むべき存在なのだ ……………が、世良の姿は…… 康太は世良のフカフカの毛を撫でた 何処か飛鳥井の犬達を彷彿させる姿に…… 笑いを堪えた 「世良……」 見上げる顔はもろに犬顔だった 「何?」 ニコニコした顔が可愛い まるで子犬のようだった 「飛鳥井の菩提寺に通え そこで妖力のコントロールを修行しろよ! 真島も、もう少しコントロールが必要だな そんなに妖力垂れ流しだと疲れるだろ?」 そうなのだ…… 力は真島家歴代一位だとて、修行はしてこなかったから…… 力が暴走しない様に気を付けてるのだ 「宜しいのですか?」 「構わねぇ! 紫雲龍騎の方には言っておく お前達が修行に来る間、弥勒も頼んでおく 妖術、呪詛関係は弥勒の方が専門だかんな!」 「ありがとうございます」 真島は康太に深々と頭を下げた 「世良は多分……どんだけ妖力を身に付けようとも…… 姿までは変わらねぇな…… 持って生まれた姿があるかんな でも牙王は世良に力を与えたんだ…… アイツも親だったと言う訳か その妖力を使えば、真島の妖力とで【子】を成せるな しかも……初めての双児を産めるな」 康太は果てを見て…… そう言った 真島はこの人の瞳には、未来の自分達の姿が映っているのだと感じた 飛鳥井康太の背負うモノは大きい 真島はその手助けをしたいと思っていた 世良は尻尾を振りまくって康太に撫で撫でされていた 「………しかし肌触り良いな……」 トリミングされて手入れされている毛並みはフカフカだった 「ヒロトが洗ってくれるんだ!」 「そっか……よくもまぁ……こんなに素直に育ったもんだな……」 世良は康太の匂いを嗅いで……懐かしい記憶を呼び覚ました 「康太さん……オイラを引き取ってくれた人?」 康太は驚いた瞳をして世良を見た 「………お前……記憶あるのか?」 生まれて直ぐの記憶なんて……普通はない 「………あるよ……この世に生まれた瞬間からの記憶がある……」 「………そっか……」 「目は……まだ見えてなかったから……親は知らなかったけど……声は覚える オイラを連れて行って世話を焼いてくれた人も覚えてる その人がいなきゃ……オイラは生きていなかったから…康太さんだったんだ……」 「………幸せにな世良…」 「うん!オイラ誰よりも幸せになる」 だけど人と妖の寿命は違う…… 置いて逝かれるのは目に見えている それでも世良は一日一日真島の記憶を刻み付けて過ごそうと決めていた 世良は愛しそうに真島を見た 真島は世良を撫でた ずっと…… ずっと……一緒にいて…… そんな言葉を呑み込み…… 世良は笑っていた 幸せそうに笑っていた 真島は康太に向き直ると 「牙王は準備万端だと伝えてくれと言付かっております 牙狼の一族の邀撃準備万端 我等妖狐の邀撃準備も万端に御座います どう言う訳か……伏見の白狐が我等一族と協定を結ぶために現れました……真贋が?」 「オレは何もしてねぇ… 伏見の白狐がお前を尋ねたと言う事は…お前の力は敵に回したくないと言う事だ 表の妖狐は伏見の白狐 裏の妖狐は魔使魔の黒狐 元は一つの存在だ 協力し合って逝くが良い」 「解りました! では、そう伝えておきます」 真島は使い魔を放った 真島は飛鳥井建設を取り巻く魔祓いの結界を視た 肉眼では視えないが、闇の蔦が無数に伸びて…… 会社全体を搦めていた 「俺は何処にいようとも、総ての魔(闇)を把握しているので何かあれば駆け付けます」 「頼もしいな」 「貴方は敵に回す存在ではない 元より……居場所のなかった俺を引き取って下さった貴方がいなければ……俺は生きてはいなかった」 「定めだ……総てが定められし運命だ……」 真島は頷いた そして立ち上がるとスーツの上着を脱いで世良に被せた 愛する男の匂いで包まれて世良は、真島を見上げた 「そんな耳出てたら還れないだろ?」 「………ヒロト……オイラ引っ込められねぇもん」 「だから被ってろ!」 「うん!」 真島は世良をヒョイッと抱き上げて 「動かれる時、常にお側にいます」と言い頭を下げた そして「これで失礼します」と言い副社長室を出て行った 副社長室を出て行く時、世良はずっと手をふっていた 真島と世良が出て行くと、康太は榊原の膝の上に乗った 榊原は笑っていた 「……康太……コオやイオリを想い出して堪えるのが大変でした……」 「だろ?あれは犬……だよな?」 「………元より……狼も狐も犬みたいなモノです」 「………伊織……それは言っちゃダメだぞ? 伏見の白狐が聞いたら……怒り出すだろうな……」 「プライドばかり高いだけでしょ? 世良は……無垢すぎて……真島を亡くした時…… 考えただけで恐いです……」 人とあやかしの寿命は違う 「………世良は覚悟してる……」 「………覚悟してるだけに……可哀相ですね…」 「………青龍が……そのうち世良に魂の結びつけ方を教えたりするかもな?」 康太は笑って言った 「そうですね……誰よりも愛する者を見送った……青龍ならお節介焼いたりしそうですね」 「………命は……永遠じゃねぇ……」 「……そうです……神だって、その命は永遠じゃありません…… 人よりも長く生きていたとしても……永遠じゃありませんからね 人が知らないうちに代替えしているだけです」 「そうだ……だからな真島が死ぬ頃……牙狼の寿命が尽きても……おかしくないって事だ」 「………君の方がお節介焼きだと僕は想います」 「お節介焼きは……親父殿の専売特許だからな…」 「………皇帝閻魔に怒られますよ?」 榊原は笑って康太を強く抱き締めた 康太は榊原の胸に顔を埋めた 願わくば…… 愛する恋人同士が…… 泣いたりしませんように…… 願うだけだった

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