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4話 事象(前編)
結構、その夜は眠れずに朝になった。
いつもより早めに家を出て、学校へと向かう。
すると、美海が一緒に帰る時に別れる交差点の前で立っていた。
朝は一緒に行くことを別にしているが、今日の美海が俺を待っていることは察した。
「快晴、おはよう。」
「ん。おはよう。」
二人で歩きながら学校へと向かう。
美海はいつもより元気がなかった。その理由も察しがつく。
「美海、いつからあそこで待ってたわけ?」
「そんなに待ってないし。快晴はいつもギリギリに登校するけど、どうしても昨日のこと話したくて待ってただけ。別れたいってどういうこと?泉原春樹の家から出てきたことと関係あんの?」
美羽は泣きそうな声で聞いてきた。
『俺と別れてくれないか。』
昨日、俺はそう言って美海に別れを告げた。
「春樹の家に居たこととは関係ない。元々、俺は色んな女の子と付き合っては別れるを繰り返してる軽い男なんだよ?」
「確かに、告白した時にもそう言われて、私がそれでもいいから付き合いたいって言った。けど突然すぎない?美海、快晴に何かした?」
「別に何もしてないよ。俺が悪いだけだから。本当にごめん。」
「うっ…私は絶対に嫌だからね!」
そう泣き叫んで、美海は走っていってしまった。
けれど俺は、微塵も罪悪感を抱かなかった。
別れる時はよく言われるセリフだ。
そんな自分に嫌気がさす。
学校に着き、騒がしい自分のクラスへ入った。
すでに春樹は席に座って本を読んでいる。
どうしていいのか分からず、とりあえず自分の席へ座る。
「快晴おはよー!」
「うわ、裕貴か、ビビった。後ろから突然来るなよ。」
「そんなにビビった?ごめんごめん!それよりさ、美海ちゃんとなんかあったわけ?昨日、俺んとこに電話きてさ。泣いてたから何言ってるのかよく分かんなくて、そのまま切られたんだよね。」
「…美海と別れることにした。」
「はあ!?どうして!?なんで突然!?」
「…俺が悪いんだよ。とりあえず、別れることにしたんだよ。」
「いやちょ、美海ちゃんは今までの女の子と違って快晴のことマジで好きじゃん!それわかんないの!?」
「分かってるよ。…んー、とりあえず!この事は昼休みに話すから!」
「え!?ちょ、快晴ー!?」
しつこい裕貴から離れ、席に座っている春樹の前に立った。
春樹は俺を一瞥した後、目を逸らした。
「春樹、まず昨日のことなんだけど」
「話しかけないでください。迷惑です。昨日は何も無かったことにします。なので、もう俺に関わらないでください。」
「いや、そういう訳にはいかないよ。本当に昨日はごめん。」
そう言って俺は頭を下げた。
春樹の表情は見えないが、ため息は聞こえた。
「あなた、本当にしつこいですね。」
すると、「春樹ー!先輩に呼ばれてるぞー!」と、同じクラスの男子に呼ばれていた。
どうやら、先輩に春樹を呼ぶように頼まれたらしい。明らかに体格が違う、ガタイのいい男が廊下に立っている。
「分かった。今行く。」
そう言って春樹は立ち上がり、廊下へ小走りに向かった。
廊下にいた先輩から、何かメモのようなものを渡されていた。
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