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第2話・君の名前は……。(2)

 年は自分と同じか、少し上くらいだろう。目の前の青年には見覚えがない。しかもアメリカかイギリスに住んでいそうな外人だった。  彼の容姿は、二重の透き通った青い目に、肩まである波打つ金髪。高い鼻梁。頑固そうな尖った顎。  無駄な肉付きがない、洗練された身体。  彼は、一糸も(まと)わぬ、生まれたままの姿で隣にいた。  そして自分もまた、貧相な身体を披露している。 「篤」  てっきり外国人だと思っていたのに、薄い唇から放たれる言葉は流暢(りゅうちょう)な日本語だ。  心地よい低音が、篤の耳をくすぐる。  目の前にある美しい顔に見惚れていると、唇が塞がれた。  見たこともない美青年とキスをしている。  そう実感すれば、自分は、けっして誰ともこういう対象にならないと思っていた諦めの感情が崩れ去る。  これは夢だ。  それならば自分の好きにすればいい。  だから別にこうなってもいいのだと、背徳感を感じている自分に言い聞かせ、自ら身体を開いた。  篤は、象牙色の肌をした鋼のようなたくましい腰に両足を巻き付け、口づけを強請る。  美青年は、やはり篤の願望から生まれたものだからだろう。篤の思い通りに動き、ふたたび甘い口づけを落とした。  息苦しくなって口を開けると、そこからねっとりとした滑らかな舌が忍び込む。篤の口内を我が物顔で蹂躙し、上顎から歯列をなぞると、下顎を通り、篤の舌を絡め取った。 「ん、んぅ……」  漏れるのは、甘い嬌声。そして、淫猥な水音だ。

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