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第2話・君の名前は……。(5)

 けれど思い通りにはいかない。今まで乳首を弄っていた彼の手が篤の陰茎を包み、陰茎を包んでいた手が、篤の後ろに回った。  彼が目指すのは、篤の後孔だ。 「やっ、嘘っ!!」 「今でなくともいい。ここで俺を受け止めてほしい」 「んっ!」  セックスが未経験な篤だってゲイの端くれだ。同性とセックスをする時にどこを使うのかぐらいは知っている。  同性との性行為には、後ろを使うしかない。  自分がゲイだと知った当時、興味があって調べたりもした。  だが、残念なことに、篤は見目麗しいわけでもない。身の程を知っている分、同性にセックスを求められるわけがないと思っていた。  自分の夢の中とはいえ、考えられなかった出来事でもある。  心の準備さえもしていないそこに、骨張ったアドレーの指が入っていく。 「あっ、っひ、ああっ!!」  いくら篤が流した先走りの滑りがあるからといって、初めての行為だ。骨張った指が後孔に簡単に入るわけもなく、痛みが伴う。 「ひっ、痛い、いたっ!!」  慣れない後孔に指を挿し込まれ、奥へと進むごとに、メリメリと肉が引き裂かれるような残酷な音が聞こえてくる。  首を振り、止めてくれるように懇願する。しかし、美青年は篤の願いを聞き入れることはない。それよりも先にと、指を挿し入れ、内壁を弄る。  逃げたくとも、片方の手には陰茎が包まれている。逃げたくとも逃げられない。  後ろは痛みを発しているのに、前はちゃっかり快楽を感じている。  これでは、どうしていいのかわからない。

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