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第3話・おかしな出来事のはじまり。(1)

 まぶしい陽光に意識が呼び戻され、同時に心地よい小鳥の鳴き声が聞こえはじめた。  望まぬ今日という朝が、またやって来たのだ。  仕事ができない無能な自分にコンプレックスを持つ(あつし)は、億劫な気分で目覚める。  目を開ければ、少し肌寒い。  何事かと、自分の身体を見下ろすと、眠る時には確かに着ていたトレーナーとズボンがない。  篤は貧相な裸体を披露したまま、ベッドの上で大きな皇帝ペンギンの縫いぐるみを抱きしめていた。 (あれ? どうして?)  そこで篤は今朝方、見た夢を思い出した。  あれは本当に夢だったのだろうか。思い返した今も、美青年の息遣いが感じられそうなほど鮮明に残っている。  射貫くような力強さに満ち溢れた輝く青い目。高い鼻梁に、薄い唇。あの美青年の美しさは、この世のものとは思えないほどだった。  そして、さして美しくもない容姿をしている篤を賞賛する言葉の数々。 『アドレー』  夢の中の美青年に名前まであるなんて。なんと精巧な夢だろうか。  まるで、本当に愛撫されているかの錯覚を受ける、彼が与えてくれる甘美なひととき。  その美青年に身体を暴かれ、後孔でも達した。悦楽に浸った夢。  まさかとは思うが、美青年に恥ずかしいあれこれをしてもらう夢を見ている間、現実では服を脱ぎ、自慰をしていたということなのか。  自らが放った白濁が太腿を伝い、流れている。夢精してしまったのだろう痕跡が有り有りと残っている。 「――っつ!!」  恥ずかしい。  夢を見ている当初は無我夢中だったが、こうして現実に引き戻され、冷静になった今、あらためて思い返せばとてつもない羞恥が押し寄せてくる。

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