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第2話 愛しい人
朝、目を醒ました秋人は、体を起こそうとして …激痛に苛まれた
「ぅ…っう…」
涙目になり蹲る秋人に気付き…
命は起き上がった
「無理したらあかん…痛いか?」
「命…痛くなかったらおかしいやろ?」
秋人は…小言を言う
命は…秋人を抱き寄せ…キスをした
「愛してる…秋人」
「本気…なんか?」
「冗談で男は、抱けへんやろ?」
「でも…お前…恋人いたやん」
「セフレやろ?恋人なんて作ってへんで!」
セフレ……そんなもん作るな!
秋人はそっぽを向いた
「秋人が手に入ったなら…
他は要らん 秋人…愛してる…お前だけを愛してる」
秋人は…折れてやるしかなかった
自分の体躯を与えて…命を繋ぎ止める…
狡い…大人になるしかなかった
「……髪を黒くして…高校はちゃんと卒業しろ !」
「解った…秋人が黒くしてぇな!
後で毛染め、買うてくるわ!」
命は…秋人を抱き寄せ…擦り擦りした
「そのピアス…少し減らせや…」
「解った…秋人の誕生石だけ残して…後は捨て るわ!」
「喫茶店の手伝いは…変わらずやれ」
「当たり前やん…変わらず仕事するからな」
「全部…守るんなら……お前のになったるわ」
「なら、俺のになったも同然や!」
命は…秋人に口付けた
「外泊は…したらあかんで!」
「秋人と寝るんやからな…外泊なんかせぇへん わ 勿体ないやんか」
命は嬉しそうに言った
こうして…命と秋人の関係は始まった
命は…スェットのズボンだけ履いて…
キッチンに朝食を作りに行った
秋人は…起きるのは諦めた
まるで処女を失った…日みたいで…恥ずかしいやら…
痛いやら…
永遠を亡くした翌日やから、珈琲専門店は…休みになってる…
だから起きなくても良い状況で助かった
秋人は妻と違って、命が可愛かった
命は昔から『父さん』とも、『パパ』とも、呼 ばず…
秋人!と呼んで甘えて来た
秋人はそんな命が…可愛くて仕方がなかった
大抵は命の我が儘は、聞いてやる
体を求められて…あんな大きいのを…
挿れられても…許してる
怒って親子の縁を切っても良いのに…
やはり命の言う事を…許してる
命はトレーに二人分の朝食を持って来ると、秋 人のベッドの上に置いた
「起きれるで…命」
「ええやん、初めての朝やからな…痛いやろ? 」
秋人は…カッと顔を赤らめた
「そんな可愛い顔したら…押し倒してしまうで …」
「命…」
命は、フォークでサラダを刺すと…秋人の口に 運んだ
「あ~ん、してみ…」
「命…自分で食べれる…って」
「ええやん!あ~んは?」
秋人は…あ~んと、口を開けた
命は…ドロドロに秋人を甘やかした
「良く噛むんやで」
愛しげに…目を細めて…秋人を見詰める命の顔 が…
嬉しそうで、秋人は言う事を聞いた
「俺…秋人を守れる…男になるからな!」
「楽しみにしてるで…」
秋人は笑った
「秋人…その顔…狡い…股間に直撃や…」
「えっ…知らんて…そんなん解らんもん…」
「秋人は可愛い男なんやで…」
「知らん…オッサンやで…もぉ」
「オッサン言うな!
秋人でもそれは謂うのはあかん!」
「お前が嬉しそうなら‥‥まぁええか」
「俺が秋人の老後を見てやる からな!」
「そうか?なら、老後は安泰やな」
命は刹那い瞳で…秋人を見た
そんなに……ずっと過ごさせてくれる筈は…な い…
高校を出たら…解放せな…あかんのやろうな…
後2年…
2年我慢して…
そしたら…離れてやるから…
2年だけ…我が儘を通させて…
命は…泣きそうな顔をした
秋人はそんな命の頬を撫でた
「そんな顔したらあかん… 後悔されたら…あんな痛いの我慢した… 僕が可哀想やろ…」
秋人の指が…総てを許して…命の頭を撫でた
「みこと…」
秋人の…指は優しい…
「秋人…こんな息子やけど…許してな…」
命は…トレーを椅子に置くと…秋人に抱き着い た
「命は昔から…僕が好きやて…口説いてたけど …あれ本気やったんか?」
「ずっと…好きやった…秋人がずっと欲しかっ た…
手に入らんからな…似たようなの…抱いて…
暴 走せんように…してたんやけど…
永遠と言う箍を亡くしたからな…暴走した…」
「何で…こんなオッサンを?」
「オッサン言うな!秋人でも許さんで!」
「好きなんか?僕が?」
「好きや…秋人しか要らん…」
「………そうか…。」
命は秋人にキツく抱き締める
「愛してるで…秋人」
「命…」
愛してると…返したら…
きっと地獄に堕ちるわ
秋人が寝てる間に…命は毛染めを買いに行った
チャリを出して…近くの薬局まで買いに行く
途中で…悪友に逢い…どこへ行くんや?と尋ね られた
悪友 島崎耕作…
そう…親は…島耕作を、狙っ たらしい…
「薬局まで毛染めを買いに行くんや!」
「それ、染めるんか?」
「秋人が染めなあかん言うからな!」
「んとに、お前はファザコンやな!」
「ファザコンちゃうで!愛してんのや」
「葬儀の後やからな…無理せんでええで…」
「葬儀の後やからな、いい加減な髪してると…
秋人が責められる…からな」
………あぁ…やっと納得が行った
命は悪友の島崎と別れ…薬局まで行き毛染めを 買って帰った
毛染めを買って帰ると…秋人は寝ていた
命は秋人の寝顔を見詰めた
秋人を困らせるのは…2年って決めてるから…
2年だけ…我が儘を通させてな
高校を出たら…家を出る
命が高校を出る頃…まだ秋人は35…
結婚して…幸せな家庭だって…築ける…
チリチリと胸の奥が焼け着く
独占欲が…離したくないと…訴える
永遠に一緒にいてくれないか…
離れたくないねん
離したくないねん
でもな…束縛して…許されるのは…
子供の時までや…
何時か…秋人も…こんな関係は…おかしいと言 い出す
そしたら…俺は…離せるんかな…
秋人の頬に手を掛ける…
その手の冷たさに…秋人は目を醒ました
「冷たいわ…命…」
「毛染めを買って来たんや…染めて秋人」
「仕方ないなぁ。染めたるわ」
秋人は……そっと体を起こした
「起きれそうか?」
「ん。何とかな…」
「痛むんなら舐めたるわ…」
「舐めたら…挿れるやろ…」
秋人は…涙目になっていた
「慣れて…秋人‥‥俺のもんやから…離さへんで 」
「………毛染めするで」
はぐらかす…
「愛してるで…秋人」
秋人はそれには答えへん…
僕もやで…命…って言う日なんて…
やっぱ来ない事を知る…
風呂場で…髪を黒くしてもらった…
秋人に頭を洗ってもらって…乾かしてもらう
ドライヤーで乾かした髪は黒かった
「どうや?秋人?」
「そうして見ると…やっぱ双子やな… 永遠にそっくりや…」
命は、そっぽを向いた
そしてスタスタ…寝室へ戻った
秋人は…呆然と…命を追った
「命、何が気に食わんのや…言わな僕には解ら んで」
「秋人も…永遠が好きなんか…?」
「命…似てる…言っただけやで?」
「似てる…言われたないねん… 誰もが…俺と永遠を比べる…
似てんのやから…全部似てんのやろ?って
比べ るんや… だから……別人になろう思たのに…」
命は澱を吐き出した
「秋人…引っ越そ…喫茶店の近くに…引っ越そ …この家は…嫌や…」
「解った…引っ越そな」
「秋人…愛してる…子供の間だけや…我が儘… 言わせて…」
「命…ずっと我が儘…言ってな」
「秋人、愛してるで。お前は?」
「………僕の子供やもん…愛してるに決まって るやん…」
愛の種類が…違うんや…
命は秋人を…ベッドに押し倒した
体だけで…ええわ
総ては欲しがらん…
秋人は命を抱き締めた
秋人は…戸惑っていた
熱烈に…子供の頃から…口説かれていた
本気やと思わんかった
しかも…抱かれて…命のデカイ…アレを挿れら れて…
もう……グチャグチャやった…
愛してるで秋人…
って言われてもな…返されへん…
大人の自分が…止めなあかんのに…
流されて…ドロドロに甘やかされて…
愛してる…なんて言ったら…
命を離してやれんくなる…
何時か…年を食ったら…
見向きもされんくなるのに…
溺れるな…!
自分を…押し止める
秋人は翌日、喫茶店の横に、ずっと空き家で寝かせておいた家に引っ越した
開業した時に喫茶店と込みで買った家があっ た
家族四人で住むには狭い、ペンションのよう な家
一階が30畳位のリビングで、その奥にキ ッチンがあり風呂があり
二階に部屋が二つあった
部屋面積は広いが…部屋として使える部屋は 、二部屋しかなかった
四人家族では不便だと、妻が言い今の家に引っ 越した
でも二人きりならあの家で良い…
命の要望でマンションの方の家は、売却する事となった…
命は……仏壇を処分した
母親の位牌は寺に預けた
永遠の写真と位牌は…リビングのピアノの上に 飾った
そして…二人きりで…生活を始めた
二人しかいない生活
甘い…蜜月…を送ることにした
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