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第7話 陰謀

正月、三が日は…激甘に過ごした そして、正月休みが終わると… 秋人は、喫茶店を再開することに決めた 高校の新学期始まり、命は通学を始めた 忙しい朝が戻って来た 何時もの…日常が戻ってきた そんな頃…夏彦が…秋人を訪ねてやって来た 開店前の…喫茶店のドアを開けて…夏彦がやっ て来た 「あの邪魔な息子はいないな… 秋人、話をしましょう!」 「兄さん…話なんてありません!」 「話は聞いておいた方が良いと思いますが?」 「必要ないです!」 「秋人…お前、息子と出来てるだろう? 良いのか?こんな事が…表沙汰になったらショッキングなス キャンダルになるだろう アイツは高校にも通えなくなる…良いのか?」 「え…何で?」 「探偵に徹底的に調べてもらったんです 見てれば…二人の雰囲気は…解るけどな…」 秋人は…悔しそうに…俯いた 「秋人、藤崎の家も…この不景気で厳しい状態 が続いている… 絶対の…取引相手が…私は欲しい そんな時に…お前を所望している相手から、縁談が入ってきた… 私は…この縁談を何としてでも纏める! お前は…聞くしかない…息子を守りたいなら… 聞くしかない…違うか?」 最低の男は…最低の要求を…突き付けて来た 「で兄さんの話って…何なんですか?」 「結婚しろ!籍を入れて…再婚しろ! お前の息子は…置いて行け! 大丈夫だ、充分な生活は払ってやる」 「嫌です…」 「安心しろ、結婚は…形式だけだ! お前は…息子に種付けされて、女は抱けないん でしょ?」 「兄さん…」 秋人は…驚愕の瞳を…兄に向けた 「結婚したら…お前は…嫁の父親に抱かれてれ ば良い… 向こうの…父親が…お前をご所望だ… 結婚など形式でしかない…安心しろ!」 「嫌です…」 「お前は…聞くしかない! 明日、迎えに来る!良いな!」 秋人は…そっぽを向いた 「明日、相手に引き合わせる! 相手は…立場が在る方だ… 男など囲えは出来ぬ …だから婚姻を結ぶ… そうすれば…怪しまれはしない…。 お前は行くしか…道はない! 明日の午後一で迎えに来ます! せいぜい息子と別れを惜しんでおきなさい」 夏彦は勝手な事をいって…帰って行った 秋人は…ガクッと……膝をついて崩れた 幸せは…指の間から…すり抜けてく… 秋人は…泣いた そろそろ……出て来る頃合いかと踏んで… 夏彦の動向を…観察してた命は、この会話を…自宅で聞いていた 無論、耕作も秀一も当麻も…会話を聞いていた 耕作が「エグいな…この兄ちゃん…」と溢すと 当麻も…「遣り方が…脅しが…エグいな…」とため息を着いた 秀一は「親父ならやりそうだ…代議士の先生に 秋人さんを差し出して、絶対の結び付きを得て利益を得る気だ!」と怒りを露にしていた そして、三人は…命に問い掛ける… 「どうする気だ?」と耕作が 「渡す気か?」と秀一が 「打つ手は考えてあるのかよ?」と当麻が 命は… 「明日、男に引き渡した秋人を奪回してやる! 道路を封鎖して…目立つ様にして、騒いでやる 向こうも代議士を出すんならな、こっちは… 堂嶋正義を出す! そして、二度と…秋人には手を出させない! アレは、俺のもんや」 当麻が「ならば作戦を立てないとあかんな 母さんや父さんも引き摺り出して、作戦ねらな あかんな!」と燃えていた 耕作は「道路封鎖か!なんか血が騒いで来たな! 徹底的にやるならな、晴香さんとこ行って 作戦練りに行こか!」と冷静に答えた 秀一は「あの男…一度挫折を知らな…人の心も 解らん…最低人間やねん! オレは…初めて命を見た時…悪いけとクソ親父 に似てて…命は好きになれんと想ってた… でも、命と親父は別もんや! 命には人の心がある……オレは…守るぜ お前を守ってやる! そして、藤崎なんて潰して やる! 子供の犠牲の上に成り立つ家なんて… 潰れればええんや!」興奮して言い切った 命は…秀一の肩を叩いた 「オレはこれより…堂嶋正義の所へ行って、協 力を願い出て来るわ!」 耕作と当麻と秀一は 「ならば、オレ等…晴香さんの所へ行って…話 をして来るわ!」と応えた 「耕作、当麻、秀一、俺は負けへんで! 親父を何処にも行かさせん! あれは俺のもんや! やっと手に入れた…俺の愛や! 永遠と引き換えに手に入れた…俺の愛や! 何処へも手放さへんのや!」 と、命は宣言した 「秋人の老後は俺が見るねん! そのうち、お前等の子供を養子に貰って、幸せ に生きてくって決めてるねん!」 耕作は「勝手に生活設計してやがるよぉ~」と 嘆き 当麻は「僕の子供で良ければ…やるよ」と冷め て言い 秀一は「オレはガキは作らない…あんなクソ親 父に似たのが出て来たら…殺してまうわ!」と 吐き捨てた 「秀一、俺ってさ…お前の親父に似てねぇ?」 命は…秀一に尋ねた 「…………その姿はな…似てるわ…」 「俺な、アイツの子供やねん…」 「え!」 秀一は命を驚愕の瞳で見た 「ババア…あの男と付き合うてんや! んで、妊娠が解ると…慰謝料を寄越して…捨て られたんやと… 腹いせに…何も知らん秋人をたぶらかし…駆け 落ちさせた… ババアの遺書に書いてあったわ…燃やしたから、もうこの世にもうないけどな…」 命の…話に…なんと答えて良いか… 解らなかった… 「でもな、俺は…俺にしかなれん… アイツの血が入っていても…俺は…秋人しか愛 せん… 秋人さえおれば…俺は…生きて行けんねん」 秀一は「お前は百目鬼 命や!俺の心よりの友や! 誰も代わりにはならん! お前やから友達なんや !」 と言い…強く抱き締めた 当麻も 「うちの母さん最初…命を嫌らっとったやんか… でもな、命は優しい奴やって解って るで… 父親を愛して…兄弟を愛してる… 優しい 男やって…ちゃんと解ってるよ あの男と命は…全く違うわ…あの男は悲しい生 き方しか出来へん! 家の為や…言うて…暴君になってるのも知らん …愚かな男や… 命は…人の痛みを知ってる… 亡くす悲しみも知 ってる…一緒にはならへんわ」 と言葉を送った 耕作は「どうあっても…藤崎の終焉は…食い止 めれねぇのにな…総てなくしたら… あの男は…どうすんのかな?」と思案した 打たれ弱い人間は…難局に出会すと弱い… 死へと向かう人間は少なくはない‥‥ 傲慢で高圧的な藤崎夏彦 彼は破滅に向かっていると知っているのか? 彼は人を顧みない 独りで独走し続け‥‥何処へ辿り着く気なのか‥‥ 夏彦が憎かった‥‥ 修一は「滅べばいいさ…藤崎の家なんて…」と叫んだ 家を誰よりも憎んでいるのは… 藤崎修一だった 命は堂嶋正義が大阪に還って来てるのを確かめると、事務所に出向いた 堂嶋正義は地元では有名な代議士だった 今期の国会の外務大臣を任命され 若手ながら総理の懐刀となる実力者だった 命は、堂嶋正義の選挙の時の助っ人として堂嶋の事務所を管理して人員を動かしていた 選挙の参謀と言っても過言ではない存在だった 堂嶋は事務所に現れた命に笑顔を向け 「坊主、どうしたんだよ?」 と、問い掛けた 命は表情を引き締め…真摯な瞳を堂嶋へ向けた その瞳を見れば… 堂嶋はただ事ではないな…と察知した 「正義さん!俺に力を貸して下さい!」 命はそう言い深々と頭を下げた 「代価は?」 「俺の人生!」 堂嶋は、ほほほう…それはまた大盤振る舞いだな と、嗤った 「よし!お前の就職先は此処だ! 今日からお前は俺の手足となれ!」 「俺に力を貸してくれますか?」 「貸してやろう! 用件は?」 命は堂嶋の耳に顔を寄せると… ゴニョゴニョ…ヒソヒソ…かくかく…しかじか と、話をした それを聞いた堂嶋は爆笑した 「よし!乗った! 願ったり叶ったりって、こう言う事を言うんだな!」 邪魔物は消せれる そして優秀な人材は手に入る 堂嶋は命の言い分を総て飲み込んだ 命が家に帰ると… 喫茶店は閉まっていた 眉を顰め…ため息を着く 秋人は…どんな想いでいるんやろ? 命は堪らなくなって家へと駆け込んだ 慌ただしく玄関を開けて リビングに飛び込む すると秋人はソファーに座ってボーッとしていた 「秋人…どないしたいんや? 店が閉まってるから心配するやろ? 体調悪いんか?何処が痛いんや言ってみ!」 命が秋人に迫る 秋人は優しく笑って…命を抱き締めた 「大丈夫や…命…心配せんでもええ」 「本当か?何かあったら言うんやで!」 秋人は頷いた 「絶対やで!」 「うん。命…約束や」 秋人はそう言い…命を抱き締めた 強く… 強く 抱き締めた 命は秋人の背を抱き締めた 「秋人、俺がおる…!」 「うん。命…」 命…命…と秋人は命を欲しかった 命は秋人を抱いた 何も考えられない程に…抱き潰した 夜が明けるまで… 部屋には秋人の喘ぎ声が鳴り響いていた

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