10 / 91

1-9 少しの会話

新しいクラスにもだいぶ慣れてきた。武藤君がからかってくることも毎日になると、対応できるようになった。少しだけど、友達っぽくなったような気がする。 「最近の部活どうよ。」 武藤君が、いつものように振り返り話しかけてくる。 「頑張ってるよ。」 「へぇ、頑張ってんだ。」 ニヤニヤと笑っている。 「武藤君こそ、どうなんだよ。」 「頑張ってるよ。」 オウム返しをしておちょくってくる。この感じがほんとにむかつくけど、武藤君なりのコミュニケーションの取り方なのかなと最近は思うようになった。 「勇は、逆に頑張りすぎでしょ!」 凜ちゃんが横から会話に参加し、二人が応酬している。この二人は、仲が良いのか悪いのか、よく言い合いをしている。その光景を僕は、眺めていた。最近になって、藤澤君とほんの少しだけ会話ができるようになった。僕は、思い切って話かけてみた。 「藤澤君は、最近部活どうなの?」 「いつも通りだなー」 いつものようにけだるそうに答える。 「今度部活で応援する機会があったら行くね。」 「あぁ。」 こんな感じ。会話は長く続かない。 けれど、僕にはこの少しの時間が嬉しかった。 「まーた、変な音出すんだろ!」 武藤君が、案の定からかってきた。 「もうしないよー」 僕は、苦笑いをする。凜ちゃんは、武藤君を叱っていた。 藤澤君は、聞いているのかどうかわからず、けだるそうなままだった。 毎日のこんなやり取りに少しだけ幸せを感じていた。

ともだちにシェアしよう!