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第五章:体育祭 5-1 そろそろ体育祭

十月に入り、秋の季節を感じるようになった。 学校への道もすっかり秋の風景へと変わってしまった。 色づく木々たち、そして、少しだけ肌寒い日々。 教室から見える景色もまた、いつもより少しだけ僕の心を切なくする。 秋はどうして、こんなに切なくなるのだろうか。 「来週、体育祭があります。例年通り、学年全体で赤組と白組に分かれます。いつものようにくじを用意しましたので、引いた色がみなさんの組になります。」 坂木先生がホームルームで言った。なぜか、体育祭だけは、クラスを横断して学年全体で色分けをすることになっている。確か理由は、今まで関わったことのない人とも交流を深めて欲しいと言っていた気がする。 それにしても体育祭かぁ、、、 今年は、何組になるのかなぁ、、、 くじを引いた結果、白組となった。 「では、みなさん、次回は出場する競技を決めます。そこで、競技表を配ります。最低二つの競技には出場してもらいますので、次回までに各自出場したい競技を考えておいてください。それでは、今日も一日、頑張りましょう。」 先生は出て行った。 体育祭の競技は、様々あって、クラスごとに志願制で決めることになっている。それで志願者が多い場合、また、少ない場合は、くじで決めることになっていた。最低二つの競技には出ないといけないというルールがある。 とりあえず、僕は、簡単そうな二つの競技だけを全力でやろうと思った。配られた競技表を見てみると、パン食い競争、リレー、綱引き、ムカデ競争、玉入れ、二人三脚、大玉ころがし、、、等いろいろ書いてあり、最後に、騎馬戦とあった。騎馬戦とか、絶対に無理だと思った。 「愁くん、何組だった?」 東条君がいつものように笑顔で聞いてくる。 あの登山の時、東条君のもう一つの一面を見た気がした。その時の東条君は、とても怖かったけれど、それだけ、東条君にとって、藤澤君は、大切な人なんだと感じた。 (大切な人) 東条君にとっても、、 そう考えると、僕の胸に何かチクリと突き刺さる。 「白組だったよ。東条君は?」 「オイラも白だよ。」 「ウチも白だよ。」 話を聞いていた優君が、笑顔で言った。 「みんな同じだね。頑張ろうね。」 希望する競技のことも聞いたけれど、東条君も優君もまだ悩み中と言っていた。後で、藤澤君も白組だと知った。武藤君と重岡君と凛君は、赤組だった。僕は、運動が苦手なので、また登山のようにみんなに迷惑をかけなければいいなぁと強く思う。 帰り道、いつものように響君と帰る。 「体育祭の組、どうだった?」 「白組だったよ。響君は?」 「赤組だったよ。」 「今年は、違う組だね。登山の次は、体育祭かぁ、、なんだか運動行事が続くね、、、」 「そうだね、、今年の学年全体競技って何やるんだろうー」 体育祭には、学年全体で行う競技もある。 毎年、学年全体競技は変わり、直前まで発表されないので、何をやるのか全く見当がつかなかった。 「去年は、全員参加のリレーだったよね、、辛かったのを覚えてるよ、、」 「そうだったね。愁君、大変だったもんね、、」 響君にバトンを渡し終えた瞬間、転んでしまったのだ。 あの時は、大変だったなぁ、、 「もう、やりたくないよ、、今年は、簡単なのがいいなぁ、、」 「ところで、出場する種目は決めた?」 「それが、一日中、プリントを見てたんだけど、どれも大変そうだなぁって。響君は決めたの?」 「うーん。僕もまだだね、」 「そっかぁ、優君も東条君もまだ悩み中だって。」 「なかなか決まらないよね、」 「騎馬戦だけは絶対に無理だけどね!!」 僕は、自信満々に言った。 「愁君が騎馬戦って想像つかないね、けど、プリンスならいけるかもよ!」 響君がいじわるを言いながら笑った。 「えー、無理だよーー」 僕もつられて笑った。

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