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5-7 騎馬戦

とうとう騎馬戦の時だ。 「愁君、気をつけてね。応援しているから!」 優君が励ましてくれる。 「これ以上怪我しなようにね。頑張って。」 響君が僕の肩を優しく叩いた。 「ありがとう。」 優君と響君は、僕を送り出してくれた。 入場口へ着くと、すでに藤澤君と武藤君がいた。 二人の顔は、真剣そのもので、二人から感じる気迫により、僕の心はさらに研ぎ澄まされていく。 あぁ、とうとう始まるんだ。 放送室から大音量で声が聞こえてきた。 「ご観覧の皆さま!こちら放送席!ここまで、赤組、白組、両者一歩も引かず、同点となっています!いよいよ今日の最後の競技にして優勝を決する騎馬戦です!」 騎馬戦のルールを説明している。 「熱い闘志がぶつかり、迫力満点です!さぁ、どちらが勝つか?赤組か?白組か?絶対に目が離せない!!まずは、勇敢なナイトたちの入場です!!」 和太鼓が鳴り響き、会場のボルテージが一気に上がる。 白組、そして赤組のナイトが入場する。 武藤君と藤澤君も堂々と入場し、二人の勇敢な後ろ姿を冷静に見ていた。 「さぁ、次は、可憐なプリンスの入場です!まずは、赤組です!」 和太鼓のリズムが変わり、会場もそれに合わせ手拍子をしている。 「最後は、白組のプリンスの入場です!」 僕たちの出番となり、王冠を被った。プリンス騎馬の仲間たちと入場し、ただまっすぐ前だけを見つめ白組の陣地へ向かう。 一歩ずつ、一歩ずつ、地面を踏みしめながら、進む。 藤澤君と武藤君の顔が目に入ったけれど、顔色一つ変えずにただ前だけを向いて歩いた。 そして、白組陣地へ着く。 「刮目せよ!これが、騎馬戦です!」 会場のボルテージは、最高潮に達し、多くの歓声が聞こえる。 僕らは、応援を背に、騎馬を組んだ。 味方ナイトは、五隊。一隊は、藤澤君が騎手を務める。赤組も同様五隊。一隊は、武藤君が騎手を務める。 僕は、ゆっくりと騎馬に乗った。王冠が太陽の光に綺麗に反射する。 両者の準備が整った。 ピストルが大きな音と共に鳴り響く。 思いを乗せた騎馬戦が開戦した。 一気に互いに走り出し、激突し即座に交戦状態に入る。僕を敵陣五隊のナイト騎馬が狙いにくる。それを味方のナイト騎馬五隊で守る。僕を取り囲むように五隊のナイト騎馬が配置され、互いに攻撃と守備を繰り返す。敵の攻撃が熾烈を極める。 みんなの顔が恐ろしく怖い。 けれど、最後まで僕は全力でやると決めた。 自分ができることを精一杯やる。 味方の一隊が、武藤君により倒される。それと同時に敵の一隊が藤澤君により倒される。そして、互いに四隊同士となる。お互いに四隊のナイトがプリンスを囲み守る。両者拮抗し睨み合う。敵四隊が攻撃を同時に仕掛けた。それを味方四隊で迎え撃つ。猛撃の結果、味方三隊が撃滅され、武藤君を入れた敵二隊と藤澤君の一隊となった。 制限時間も迫るなか、武藤君が藤澤君に仕掛けた。 敵一隊が、その隙を狙い、僕に体当たりしてくる。 僕も敵ナイトと交戦状態に入った。 敵プリンスが目に入る。敵プリンスは、勝利を確信した顔で、遠くから高みの見物をしていた。 藤澤君が僕を見た。その隙を武藤君は決して見逃さない。 藤澤君を全力で叩き潰そうとする。 「危ない!」 思わず叫んでしまった。 藤澤君が間一髪踏み留まり、拮抗する。 僕は、何とか敵ナイトの攻撃に耐えていた。すごい剣幕と圧力で、一瞬でも気を抜くと、すぐにやられる。戦闘は、逼迫し、僕は死に物狂いで抗った。 「、絶対に、、、、勝つんだ!!!!!!!!!!!!」 言葉が無意識に出ていた。 僕の気迫に敵ナイトがひるんだおかげで、撃滅に成功した。 残りは、武藤君、そして、藤澤君だけとなり、両者が組み合い、一歩も引かない状況だ。 その時、ピストルが鳴った。 「制限時間一杯です!両者のプリンスは守られました!ここからは、ナイト同士の一騎打ちとなります!!みんな、勇敢なナイトの姿を見逃すな!!!!!」 よくやったな、見直したとみんなに褒められた。 けれど、勝負は終わっていない。 この戦いを見届けないといけないんだ。

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