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6-4 うたコンに向けて

【歌コン】に出ると決めてから、授業中でも、藤澤君を思って詩を考えていた。藤澤君との今までの思い出を振り返ると、たくさんの思いが溢れてくる。 それを全て、詩の中に入れることができたらいいなと思う。 ふと、藤澤君を見つめた。 その横顔が、どこまでもかっこよくて、触れたくなった。 それから、思いついた言葉をノートに書き続けることで、詩のパーツが完成した。自分なりに詩を構成してみると、一つの詩ができた。 題名は「願い」 僕の願いが、届いて欲しい。 この溢れる気持ちを藤澤君に届けたい。 この詩ができて、すぐに響君に見てもらうと、いいねと言ってくれた。 しばらくして、曲ができた。 響君の家で歌の練習をしようと誘ってくれ、初めて家へ行くことになった。 「響君の家、初めてだー」 西洋風の家で、庭があり、咲いている花が綺麗だ。 「いつも愁君の家か凛君の家だったもんねー」 「すごい、綺麗な家だね!!」 「そうかな、、」 響君は、少しだけ笑いながら、玄関を開けてくれた。 「上がって。」 「うん。お邪魔します。」 誰もいないようだった。 家の中は、高そうな芸術品がたくさんある。 「誰もいないの?」 「今日は、二人ともコンサートがあるんだ。」 「響君の両親は、音楽家だもんね。すごいなー」 案内された部屋には、グランドピアノがあった。 「この部屋は防音で、歌の練習もできるから、ここでやろう。」 「いいの?」 「いいよ。」 「ありがとう!」 「それじゃ、まずは、できた曲を弾いてみるね。」 作曲してくれた曲を弾いてくれた。 その曲を聞いていると、温かい気持ちになる。 バラード調で優しくて、どこまでも人を思う気持ち。 その気持ちは、決してぶれることがなく、まっすぐだ。 そんな感じがして、気づくと、涙を流していた。 「すごい、、すごいよ、」 「気にいってくれて、よかった。それじゃ、歌の練習しようか。」 響君が、ニコリと笑った。僕たちは、歌の練習を始める。 「愁君って、前から思っていたけど、歌、上手だよね。」 「えっ、、そんなことないよ、、」 「僕は、好きだよ。愁君の歌。」 「なんだか、照れるな、、」 「もう一回、やろうか」 「うん。」 こうして僕たちは、本番まで練習を続けた。 響君のアドバイスをもらうことで、歌は、格段に上手になった。 この調子で、本番もうまくできればいいな。 そして、今日が最後の練習日。 「リハーサルを残すと、今日が最後だね。」 「うん。ここまで付き合ってくれてありがとう!」 「じゃあ、最後に一回合わせようか」 「うん。」 僕は、歌う。 本番を想定して、思いを込めた。 そして、歌い終わった。 「上手ですね。」 響君の親が入って来た。 「琴父さん?いつからそこにいたんですか?今日は遅くなるって、、、」 「初めからですよ。それに今日は、早く終わったので。」 初めて、響君の親を見た。とても優しそうな人だ。 「お邪魔しています。山口愁です。」 「あなたが、山口君ですね。響ちゃんがいつもお世話になっています。」 「いいえ、僕の方が、いつもお世話されいます、、」 琴父さんは笑っていた。 「それにしても、いい曲ですね。なんだか、胸が締め付けられます。そうですね、、これは、愛の歌。」 「は、、い、、、」 率直に言われると照れてしまう。 「思いが届くといいですね。」 そう言うと、琴父さんは出て行った。 「いいお父さんだね。」 「どうかなぁ、、、ハハハ、、、」 響君は、苦笑いをしていた。 こうして、僕たちの最後の練習は終わった。 本番、思いが届くといいなぁ、、

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