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7-3 怪我
それからは、穏やかな日常が過ぎ去り、十一月の下旬となった。
最近は、寒暖差が激しく、クラスでは体調を崩している人も多い。
そんな中、昼休みに廊下を歩いていると、嫌な話を耳にした。
「藤澤、怪我したんだってな。」
「あいつ、プロ行き決まってたよな。取り消されたりして。」
「怪我の度合いによるよな。」
その言葉を聞いて不安が襲う。
朝は普通だったよね、、、
どうしよう、、怪我なんて、、、取り消されないよね、、、、
僕の心配が大きくなる。教室へ戻ると、藤澤君はいつも通りで、東条君と仲良く話していて、何も変わっていない。
いつも通りだよね、、、
藤澤君が僕の方に来た。
「どうした?何かあったか?」
僕の心配した顔に気づいて、来てくれたみたいだ。
「いや、、別に何もないよ、、、」
「そっか、何かあるなら言えよ。」
「うん。」
そう言うと藤澤君は、席へ戻って行った。
僕は、何て声をかけたらいいんだろう。思い悩んでいたら、いつの間にか放課後になった。窓から、校庭を見つめると、そこには、藤澤君は、いない。
昨日は、いたのに、、、
いないって、やっぱり、、、、
しばらく校庭を見つめ続ける。
いつまで待っても藤澤君の姿は、見えないままだ。
突然、後ろから東条君に声をかけられた。
「愁くん?どうしたの?」
「いや、、ちょっと、、、」
「恭くん、見てたの?残念だけど、いないよ。」
「えっ、やっぱり、、、、怪我のせい?」
恐る恐る聞いた。
「知ってたんだ。恭くんから聞いたの?」
「いや、、廊下でたまたま誰かが話してるのを聞いて、、」
「そっかぁ、恭くん、練習中に肉離れ起こして、今は絶対安静なんだよ。」
「そうなんだぁ、、僕に何かできることないかなぁ、、」
「そうだねぇ、、何もないんじゃないかなぁ、愁くん、サッカーのことわかんないでしょー」
少し東条君の言葉に棘があった。なんでだろう、、
「東条君の方がサッカー詳しいから、僕よりも力になれるよね、、、」
あぁ、こんな言葉を言いたくない。
「そうだね。あっ、恭くんと待ち合わせしてるから行かないと、バイバーイ!」
「うん、またね、」
走って行く東条君を見ながら、カバンに付けてあるポニーを握った。
僕には、本当に何もできないのかなぁ、、
サッカーがわからなくても僕だって力になりたい。
下駄箱に行くと、響君が待っていた。
「あっ、ごめん!!待たせちゃった!」
「大丈夫だよ。帰ろっか!」
僕らは、いつものように帰る。
「何か悩んでるの?」
「うん、、、実はね、、、藤澤君が、怪我したみたいで、、」
「そっか、、辛いね、、、」
「けど、怪我したこと、直接、藤澤君から言われたわけじゃないんだ、、、」
「誰かから聞いたってこと?」
「初めは廊下で耳にして、今さっき東条君から聞いたんだぁ、、」
「心配なら直接本人に聞いてみたらどう?」
「そうだよね、、うん、そうしてみるよ、、、」
「あんまり、気負いすぎないようにね。」
「うん。」
その日の夜に、リンクで藤澤君に連絡をしてみた。
あのさぁ、、怪我したって聞いたんだけど、大丈夫?(涙スタンプ)
大丈夫(チーターが爆走しているスタンプ)
よかった(嬉しいスタンプ)
誰から聞いた(チーター疑問スタンプ)
初めは、廊下で誰かが話しているのを耳にして、放課後、東条君から聞いたよ(涙スタンプ)
そっか。心配しなくてOK(チーター笑顔)
スタンプ可愛い(ハート)
だろ?(チーターが照れている)
なんだ、元気そうでよかった。
僕の心配しすぎなのかな、、、
藤澤君なら絶対に大丈夫だよね、、
そう思いながら、ポニーを見つめた。
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