81 / 91

8-5 卒業

今日は、いよいよ卒業式。 高校に行くのも今日で最後だ。そう思うと、何もかもが寂しく思える。 通い慣れたこの道も、見慣れた風景も、全てが思い出とともに僕に染み込んでいる。様々な記憶を思い起こしながら、学校へと向かう。 突然、後ろから話かけられた。 「おはよう!」 「響君!久しぶり!元気だった?」 「うん!愁君も元気そうだね!合格おめでとう!」 「響君もね!とうとう、卒業だねーこの道も今日で、最後だと思うと、なんだか寂しいやー」 「そうだね、いろいろあったもんねー」 しみじみと響君が言った。 「事故の時は、本当にありがとね!」 「本当に、回復してよかったよ!」 「響君のおかげだよ!」 「そんな、僕は、何も、、」 「おはよう!!!」 後ろから凛君が僕らの肩を組んだ。 「おはよう!」 二人で言う。 「おめでとう!」 「愁君も響君もおめでとう!あの成績だと、マジで、ギリだったな!」 「受かれば関係ないよ!!」 「そうだよ!」 「だよな!!」 三人で楽しく笑う。 「なんだか、この感じ懐かしいやー」 僕は、二人に言う。 「そうだな、、部活を引退して、三人でなかなか話す機会なかったもんなー」 凛君がしみじみと言った。 「また、みんなでどっか行こうぜ!」 「そうだね!」 「だね!」 気づくと学校に着き、教室に入る。 そこには、みんながいて、なんだか泣きそうになってしまう。 武藤君に声をかけられた。 「よっ!二人ともおめでとう!」 「勇もな!」 「おめでとう!」 「みんなおめでとう!」 東条君が駆け寄ってきた。 早速、武藤君と凛君と東条君は、ふざけ合っている。 「愁君、久しぶり!」 優君だ。 「優君、おめでとう!」 「愁君も、おめでとう!」 僕には、気になっていることがあった。 「重岡君は、、、?」 「玄さんは、ダメだったみたい、、」 「そうだったんだ、、」 なんとなくそんな気がしていた。 そっか、悲しいな、、、 「申し訳ないですね。みんなに気を遣わしてしまって。」 重岡君がやってきた。 「そんな、、」 「くよくよすんなよな!」 武藤君が励ます。 「だな!元気だせよ!」 凛君も続く。 「そういえば、玄くん、私立受けてたじゃん!そっちに行けば?」 東条君が思い出したように言った。 そうだよね、私立も併願しているよね! 「もう一年勉強して、また同じ大学を受けることを決めましたので。」 そうだったんだ、、 けど、重岡君が併願していた私立も、かなり頭がよかったと思うんだけどな、、 「玄ならできる!!」 武藤君が重岡君の肩をたたく。 「俺も応援するぜ!」 「オイラも!」 「僕も応援するね!」 「ウチも!」 「みなさん、ありがとう。」 重岡君の目にかすかに涙が見えた。 それに気づいた優君は、重岡君の手をギュッと握った。 しばらくして、恭君が入ってきた後、すぐに坂木先生も入ってきた。 「おはようございます。今日は卒業式ですね。みなさん、それぞれいろんな思いを持っていると思います。ここで多くの経験と感動をしたと思います。みなさんは、これから、もっと広い世界に羽ばたいて、自分の信じた道を進んでいくと思います。辛いことも多くあるかもしれませんが、どうか自分が信じた道を諦めずに進み続けてください。先生は、ここからみなさんの幸せを祈っています。」 あぁ、先生とも最後なんだ、、 本当に終わるんだね、、 そして、卒業式が始まる。 自分たちの卒業証書を受け取った。 あっという間に、卒業式は終わり、打ち上げをクラス全員で、近くのカラオケ店ですることになった。 カラオケか、、、 緊張するなぁ、、 けど、恭君が歌う姿を見られるかもと思った。 近くのカラオケ店まで各自で行くことになり、響君に打ち上げのことを言いに行った。 「この後、クラスでカラオケに行くことになったんだ。響君のクラスは、打ち上げある?」 「あるよ。」 「じゃあ、また今度、改めてみんなで打ち上げしようよ!」 「そうだね!三月中はこっちにいるから、いつでも大丈夫だよ!」 「じゃあ、凛君とも相談して日程決めるね!」 「わかった!」 そして、改まって響君に伝えた。 「それから、三年間、本当にありがとう。僕、響君がいなかったら、どうなっていたか、、こうして、楽しい高校生活を送れたのも、響君がいてくれたからだよ。本当にありがとう。」 響君との思い出が、溢れ出し、気づいたら、泣いていた。 「急にどうしたのさ。」 「卒業だから、ちゃんと言いたくて、、本当に、ありがとう、、」 「お礼を言うのは、僕の方だよ。愁君がいてくれて、本当に毎日が楽しかった。ありがとう。」 響君の目に涙が見えた。 そして、響君に別れを告げた。 自分の教室に戻り、今日が高校最後なので、みんなにもお礼が言いたいと思った。 優君の元へ行き、話しかけた。 「卒業式終わったね。それから、三年間本当にありがとう。あの時、優君に思い切って話かけてよかったよ。僕とずっと友達でいてくれてありがとう、、」 優君との出会いを思い出す。 高校一年生の時、たまたま席が隣同士になり、そこで話かけたこと。 それから、ずっと三年間同じクラスになって、いつも優君がいてくれた。 優君には、感謝しかない。 また、涙が溢れ出す。 「やめてよ、、もう、、、」 優君も、泣き始める。 「本当に優君が三年間そばにいてくれて、よかった。あり、、が、、、と」 「ウチの方こそ、いっつも支えられていたから、ほんとに、ありがと、ね」 「おいおい、何泣いてんだよ!」 武藤君が僕の肩を組んだ。 「武藤君も、今までありがとね、、最初は、怖かったけど、本当は、優しくて、、この一年間楽しかった、、」 僕は泣きながら言った。 「おい、、急にやめろよな、、、」 武藤君は、涙をこらえている。 「おーい、あんま愁君にちょっかい出すなよ!」 凛君が来た。 「勇?愁君、大丈夫か?」 凛君は、僕を心配してくれる。 「凛君、三年間ありがとう。凛君が、いてくれて、毎日の部活が楽しかった!本当にありがとう!」 いつしか僕の涙は、止まらなくなっていた。 「愁君、、礼を言うなら俺の方だよ、、野球部からの転部だったのに、すぐに受け入れてくれて、友達になってくれてありがとな!俺も楽しかった、、」 凛君も泣き始める。 「うん、、、うん、、、」 「みなさん、どうしたんですか?優さん?」 重岡君がやってきて、泣いている優君に気づいて、手をそっと握る。 「重岡君、今までありがとう。本当に楽しかった。けど、もう怖い話はなしね、、、」 僕は、笑顔で重岡君に言った。 「わかりました。こちらこそ、ありがとうございます。」 丁寧に返してくれた。 「みんな、集まって何やってんの?」 東条君が来た。みんなが泣いている姿を見て、東条君は驚いている。 僕は、東条君に向き合って言った。 「東条君、この一年間いろいろあったけど、友達でいてくれてありがとう。」 「愁くん、オイラの方こそ、、いろいろ言っちゃったけど、、あり、がとう」 東条君は、笑顔を絶やさず泣いていた。 こうして、僕たちは、お互いに感謝の言葉を述べた。 恭君にも言おうと思ったけれど、サッカー関連でたくさんの人から話しかけられていた。 恭君には、あとでしっかり言おう。 しばらくして、カラオケ店に移動した。 座る位置は、適当ということで、気づいたら、順番がこうなっていた。 優君、重岡君、凛君、武藤君、僕、恭君、東条君 武藤君と恭君の間は、なんだか居心地がよかった。 カラオケは、順番に進む。みんな、それぞれに似合った曲を歌っている。 優君は、キーが高く、柔らかい曲で、重岡君は、演歌だ。凛君と武藤君は、今流行っている元気のよい曲で、僕も、昔から人気があるバンドのバラードを歌った。恭君は、今年流行ったシンガーソングライターの曲だった。隣で聞く歌声に、癒されて、ずっと聞きたいぐらい上手だ。東条君は、テンポの速い曲を上手に歌っていた。みんなとこうして会うのも最後かもしれないから、全力でこのカラオケを楽しんだ。この時間が楽しくて、嬉しくて、たまらなかった。 三年生になって、僕は、大きく変わった。 本当は、単調な日常のはずだったのに、みんなが僕を変えてくれた。 恋も友情も全部を楽しむことができた最高の高校生活だ。 みんな、ありがとう。 みんなを見ながら心の中で言った。 そして、楽しい時間はあっという間に終わりを告げた。 外に出ると、夕方になっていた。 恭君に改めてお礼を言おうと思った時、 「これから空いてるか?」 「うん、大丈夫だけど、、、」 「じゃあ、ちょっと、付き合ってくれ。」 突然、恭君から誘われた。

ともだちにシェアしよう!