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8-5 卒業
今日は、いよいよ卒業式。
高校に行くのも今日で最後だ。そう思うと、何もかもが寂しく思える。
通い慣れたこの道も、見慣れた風景も、全てが思い出とともに僕に染み込んでいる。様々な記憶を思い起こしながら、学校へと向かう。
突然、後ろから話かけられた。
「おはよう!」
「響君!久しぶり!元気だった?」
「うん!愁君も元気そうだね!合格おめでとう!」
「響君もね!とうとう、卒業だねーこの道も今日で、最後だと思うと、なんだか寂しいやー」
「そうだね、いろいろあったもんねー」
しみじみと響君が言った。
「事故の時は、本当にありがとね!」
「本当に、回復してよかったよ!」
「響君のおかげだよ!」
「そんな、僕は、何も、、」
「おはよう!!!」
後ろから凛君が僕らの肩を組んだ。
「おはよう!」
二人で言う。
「おめでとう!」
「愁君も響君もおめでとう!あの成績だと、マジで、ギリだったな!」
「受かれば関係ないよ!!」
「そうだよ!」
「だよな!!」
三人で楽しく笑う。
「なんだか、この感じ懐かしいやー」
僕は、二人に言う。
「そうだな、、部活を引退して、三人でなかなか話す機会なかったもんなー」
凛君がしみじみと言った。
「また、みんなでどっか行こうぜ!」
「そうだね!」
「だね!」
気づくと学校に着き、教室に入る。
そこには、みんながいて、なんだか泣きそうになってしまう。
武藤君に声をかけられた。
「よっ!二人ともおめでとう!」
「勇もな!」
「おめでとう!」
「みんなおめでとう!」
東条君が駆け寄ってきた。
早速、武藤君と凛君と東条君は、ふざけ合っている。
「愁君、久しぶり!」
優君だ。
「優君、おめでとう!」
「愁君も、おめでとう!」
僕には、気になっていることがあった。
「重岡君は、、、?」
「玄さんは、ダメだったみたい、、」
「そうだったんだ、、」
なんとなくそんな気がしていた。
そっか、悲しいな、、、
「申し訳ないですね。みんなに気を遣わしてしまって。」
重岡君がやってきた。
「そんな、、」
「くよくよすんなよな!」
武藤君が励ます。
「だな!元気だせよ!」
凛君も続く。
「そういえば、玄くん、私立受けてたじゃん!そっちに行けば?」
東条君が思い出したように言った。
そうだよね、私立も併願しているよね!
「もう一年勉強して、また同じ大学を受けることを決めましたので。」
そうだったんだ、、
けど、重岡君が併願していた私立も、かなり頭がよかったと思うんだけどな、、
「玄ならできる!!」
武藤君が重岡君の肩をたたく。
「俺も応援するぜ!」
「オイラも!」
「僕も応援するね!」
「ウチも!」
「みなさん、ありがとう。」
重岡君の目にかすかに涙が見えた。
それに気づいた優君は、重岡君の手をギュッと握った。
しばらくして、恭君が入ってきた後、すぐに坂木先生も入ってきた。
「おはようございます。今日は卒業式ですね。みなさん、それぞれいろんな思いを持っていると思います。ここで多くの経験と感動をしたと思います。みなさんは、これから、もっと広い世界に羽ばたいて、自分の信じた道を進んでいくと思います。辛いことも多くあるかもしれませんが、どうか自分が信じた道を諦めずに進み続けてください。先生は、ここからみなさんの幸せを祈っています。」
あぁ、先生とも最後なんだ、、
本当に終わるんだね、、
そして、卒業式が始まる。
自分たちの卒業証書を受け取った。
あっという間に、卒業式は終わり、打ち上げをクラス全員で、近くのカラオケ店ですることになった。
カラオケか、、、
緊張するなぁ、、
けど、恭君が歌う姿を見られるかもと思った。
近くのカラオケ店まで各自で行くことになり、響君に打ち上げのことを言いに行った。
「この後、クラスでカラオケに行くことになったんだ。響君のクラスは、打ち上げある?」
「あるよ。」
「じゃあ、また今度、改めてみんなで打ち上げしようよ!」
「そうだね!三月中はこっちにいるから、いつでも大丈夫だよ!」
「じゃあ、凛君とも相談して日程決めるね!」
「わかった!」
そして、改まって響君に伝えた。
「それから、三年間、本当にありがとう。僕、響君がいなかったら、どうなっていたか、、こうして、楽しい高校生活を送れたのも、響君がいてくれたからだよ。本当にありがとう。」
響君との思い出が、溢れ出し、気づいたら、泣いていた。
「急にどうしたのさ。」
「卒業だから、ちゃんと言いたくて、、本当に、ありがとう、、」
「お礼を言うのは、僕の方だよ。愁君がいてくれて、本当に毎日が楽しかった。ありがとう。」
響君の目に涙が見えた。
そして、響君に別れを告げた。
自分の教室に戻り、今日が高校最後なので、みんなにもお礼が言いたいと思った。
優君の元へ行き、話しかけた。
「卒業式終わったね。それから、三年間本当にありがとう。あの時、優君に思い切って話かけてよかったよ。僕とずっと友達でいてくれてありがとう、、」
優君との出会いを思い出す。
高校一年生の時、たまたま席が隣同士になり、そこで話かけたこと。
それから、ずっと三年間同じクラスになって、いつも優君がいてくれた。
優君には、感謝しかない。
また、涙が溢れ出す。
「やめてよ、、もう、、、」
優君も、泣き始める。
「本当に優君が三年間そばにいてくれて、よかった。あり、、が、、、と」
「ウチの方こそ、いっつも支えられていたから、ほんとに、ありがと、ね」
「おいおい、何泣いてんだよ!」
武藤君が僕の肩を組んだ。
「武藤君も、今までありがとね、、最初は、怖かったけど、本当は、優しくて、、この一年間楽しかった、、」
僕は泣きながら言った。
「おい、、急にやめろよな、、、」
武藤君は、涙をこらえている。
「おーい、あんま愁君にちょっかい出すなよ!」
凛君が来た。
「勇?愁君、大丈夫か?」
凛君は、僕を心配してくれる。
「凛君、三年間ありがとう。凛君が、いてくれて、毎日の部活が楽しかった!本当にありがとう!」
いつしか僕の涙は、止まらなくなっていた。
「愁君、、礼を言うなら俺の方だよ、、野球部からの転部だったのに、すぐに受け入れてくれて、友達になってくれてありがとな!俺も楽しかった、、」
凛君も泣き始める。
「うん、、、うん、、、」
「みなさん、どうしたんですか?優さん?」
重岡君がやってきて、泣いている優君に気づいて、手をそっと握る。
「重岡君、今までありがとう。本当に楽しかった。けど、もう怖い話はなしね、、、」
僕は、笑顔で重岡君に言った。
「わかりました。こちらこそ、ありがとうございます。」
丁寧に返してくれた。
「みんな、集まって何やってんの?」
東条君が来た。みんなが泣いている姿を見て、東条君は驚いている。
僕は、東条君に向き合って言った。
「東条君、この一年間いろいろあったけど、友達でいてくれてありがとう。」
「愁くん、オイラの方こそ、、いろいろ言っちゃったけど、、あり、がとう」
東条君は、笑顔を絶やさず泣いていた。
こうして、僕たちは、お互いに感謝の言葉を述べた。
恭君にも言おうと思ったけれど、サッカー関連でたくさんの人から話しかけられていた。
恭君には、あとでしっかり言おう。
しばらくして、カラオケ店に移動した。
座る位置は、適当ということで、気づいたら、順番がこうなっていた。
優君、重岡君、凛君、武藤君、僕、恭君、東条君
武藤君と恭君の間は、なんだか居心地がよかった。
カラオケは、順番に進む。みんな、それぞれに似合った曲を歌っている。
優君は、キーが高く、柔らかい曲で、重岡君は、演歌だ。凛君と武藤君は、今流行っている元気のよい曲で、僕も、昔から人気があるバンドのバラードを歌った。恭君は、今年流行ったシンガーソングライターの曲だった。隣で聞く歌声に、癒されて、ずっと聞きたいぐらい上手だ。東条君は、テンポの速い曲を上手に歌っていた。みんなとこうして会うのも最後かもしれないから、全力でこのカラオケを楽しんだ。この時間が楽しくて、嬉しくて、たまらなかった。
三年生になって、僕は、大きく変わった。
本当は、単調な日常のはずだったのに、みんなが僕を変えてくれた。
恋も友情も全部を楽しむことができた最高の高校生活だ。
みんな、ありがとう。
みんなを見ながら心の中で言った。
そして、楽しい時間はあっという間に終わりを告げた。
外に出ると、夕方になっていた。
恭君に改めてお礼を言おうと思った時、
「これから空いてるか?」
「うん、大丈夫だけど、、、」
「じゃあ、ちょっと、付き合ってくれ。」
突然、恭君から誘われた。
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