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開幕・二

 さて、話は少し変わりまして、遊郭の中でも花街(はなまち)という男娼ばかりが働いている場所に、ひとりの娼妓がおりました。  彼の名は大瑠璃(おおるり)。水揚げも済ませた立派な娼妓の年は十九。大瑠璃は、年季(ねんき)という奉公期間を明けてもいいその年頃ではございますが、しかし遊郭側は彼を手放そうとはいたしませんでした。  それもそのはずでございます。  彼は、肩まである波打ったはしばみ色の髪に、流れるような二重の瞳を縁取る長いまつ毛。赤くふっくらとした唇が印象的な滑らかな絹の肌をした色白の青年でございました。  それはそれは大人びた青年で、数ある遊郭の中でも最も美しいと有名でございました。  ですがこの娼妓。性格は――といえば高飛車(たかびしゃ)で、お客様のことを『金子を用立ててくださるヒモ』としか考えない娼妓でもありました。  そんな彼でもこうなってしまった経緯はございます。彼には秘められた悲しい過去があり、胸には深い傷が刻まれ、癒せぬまま現在に至るのでございます。  これは、心に深い傷を負った娼妓が織り成す恋物語でございます。  《開幕・完》

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