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第参話・娼妓。(七)

 金糸雀は大瑠璃と比べて若干背が低く、どんぐりのような大きな目をしている。  彼によく似合う生地の配色だ。白地をベースに、黄色や緑、青といった彩どり鮮やかな格子柄で可愛らしく着飾っていた。  差配人だけではなく、金糸雀も呼ばれたということは仕事についての指図だろう。やはり自分の予想は外れていなかったようだ。  大瑠璃はこの部屋に呼び出された面々の様子を窺いながら、内心頷いた。 「さて、ここに君たちを呼んだ理由はもう既にわかっていることと思う。金糸雀と大瑠璃には今夜のお客は取らないで欲しいんだ。その代わりといってはなんだが、大切なお客人が二人、おいでなさる。その方々の接待を頼みたい」  楼主は大瑠璃の予想を裏付けるように、口を開いた。 「大切なお客って?」  やはりそうきたかと内心独りごちる大瑠璃に対し、細い眉毛をハの字にして金糸雀が問うた。 「詳しい素性は教えられないが、名家の御曹司だ、二人ともよろしく頼むよ」 「お待ちください楼主!」  微笑みながら告げた楼主に、しかし噛み付いたのは差配人の守谷だ。  彼の言わんとしていることはわかる。お客から金子をたっぷり搾り取っている、普段の大瑠璃の所業についてだろう。  大瑠璃に、『大切なお客の接待』を委せるには少々目に余る。つまり差配人はそう言いたいのだ。  大瑠璃の噂はこの郭に留まることなく吉原中に知れ渡っている。だから今さら良い子振る必要は無い。  大瑠璃は口を閉ざし、この場の成り行きを見守ることにした。

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