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第参話・娼妓。(八)
「金糸雀はいいとして、大瑠璃は……。この花街のイメージを崩すことになりかねません!!」
差配人は首を振り、楼主に考え直してもらえるよう、説得を試みる。
差配人の意見を静かに聞いていた大瑠璃だが、内心は本人も同意見だった。
そもそも自分はお客からたっぷり金子を搾り取るためにこの花街にいるのだ。
『冷たい世間へのせめてもの仕返しを――』
自分がここにいるのはすべてそのためだ。だからけっしてお堅い接待をするためではない。
「だけどね、和正。ここには金糸雀と並ぶ器量良しは大瑠璃しかいない」
しかし楼主はよくよく考えてのことなのか、差配人の言葉に頷かなかった。
「それは……そうではございますが……」
楼主の言葉に、仕舞いには差配人が折れるという結末だ。
冗談ではない。これではお堅い業務を全うしなければならなくなる。
楼主に反論できる唯一の差配人でさえも言葉を濁した。彼の決定に意見できる人物はいない。
大瑠璃はがくりと肩を落とした。
「大瑠璃、今回のお客様にはくれぐれも粗相のないよう頼むよ、いいね?」
「……承知いたしました」
楼主の決定事項には逆らえない。よくよく釘を刺された大瑠璃は渋々承諾するしかなかった。
《第参話。娼妓・完》
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