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第四話・出会い。(二)
――ここ、吉原の昼間には、遊女らに売る簪や化粧を扱う行商人や茶店に行き交う人々しかいない。
日中お客が少ない分、夜よりも活気に乏しいのが現状だった。
ふと空を見上げれば、光輝く太陽が目に入る。冬ということもあってか、空は高い。幸福と同じで、どんなに手を伸ばしても届かない――。
こうして見上げているだけでも、なんだかもの悲しい気分になる。
胸が締め付けられるように痛んだ。
大瑠璃は痛む胸から意識を逸らし、辺りをぶらりと歩く。
行き先も考えず、ただなんとなく茶屋の前を通り過ぎる。すると何やらか細い動物の鳴き声が耳に入った。
鳴き声は茶屋の勝手口から聞こえて来る。何事かと足を運べば、大きな楠の下で誰かが屈み込んでいる姿が見えた。
襟足までの波打つ髪は太陽のようだ。染めているのか金色に輝いている。後ろからでは詳しい容姿はよくわからないが、広い肩幅をしているから性別は男であると判別できた。
にゃあ。
もう一度、男の方から動物の小さな鳴き声が聞こえた。
近づいてみれば、小さな白い子猫がいた。男の腕に包まれている。
――可哀相に。おそらくこの白猫は飼い主に捨てられたのだろう。目を細め、男に撫でられる甘い感触を味わっている。
傍から見れば、子猫とじゃれ合っている光景はとても和やかで微笑ましい。
だが、この後、男は子猫の元から去るであろうことを大瑠璃は知っていた。
そして子猫は自分も連れて行ってくれと悲しげに鳴くのだ。だから大瑠璃は初対面にもかかわらず、男に噛み付いた。
「ねぇ、その猫、あんたの?」
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