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第伍話・初会。(二)

 さすがは藤の間を予約するほどのお客だ。今日のお客は楼主に話を通すこともあってか、かなりの上客だということが窺える。  そういうことで、大瑠璃たちもまた、お客に見合った着物を身に纏う。  大瑠璃は紺碧色の振袖と金糸をあつらえてある新緑に似た萌黄色の帯の結び目を前にして――。  金糸雀は深緋色の深い赤をした振袖にやはり金糸をあつらえている蜜柑色の帯の結び目を前にして――。  二人は揃って縁側に座していた。 「お待たせしてしまい、大変申し訳ございませんでした」  娼妓がお客に粗相がないよう目を光らせるのも差配人の仕事だ。彼は襖越しから、中にいるであろうお客二人に一声かけた。 「待っていたよ、退屈で困っていたんだ」 「失礼します」  お客から入室の許可が出ると、まず差配人が先に入り、彼らを接待する娼妓を紹介するのがこの花街の規則だ。 「ようこそ、この花街においでくださいました。私はここの差配を務めております守谷でございます。そして後ろにいるこれらは金糸雀と大瑠璃です。さ、二人共ご挨拶を――」 「大瑠璃です」 「金糸雀です、どうぞよろしくお願いいたします」  守谷の指示に従って大瑠璃と金糸雀は名乗り、入口付近で正座したまま、つい……と三つ指をついて深くお辞儀した。 「かしこまった挨拶はいいよ。顔を上げて、こちらにおいで」  たとえお客に顔を上げることを許されても、大瑠璃たちは勝手を許されない。

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